自動運転企業Motional、韓国Hyundaiの700億円投入へ 存続に危機感も?

早期のマネタイズに高いハードル



出典:Motionalプレスキット

自動運転開発企業の米Motional(モーショナル)に対し、韓国の自動車メーカーである現代自動車(Hyundai)が約4億4,800万ドル(約700億円)の追加投資を行うことが、2024年5月7日までに明らかになった。

Motionalは、Hyundaiと米自動車部品大手のアプティブ(旧デルファイ・オートモーティブ)のJV(ジョイントベンチャー)で、米メディアの報道によれば、Hyundaiがアプティブが保有するMotionalの株式を11%購入する形で、約4億4,800万ドルを投じることになる。


Motionalに関しては、今後の業績見通しに関して懸念する声も少なくなく、実際、リスク管理や財務の最適化に動いているとされている。自動運転開発には金がかかる。Hyundaiの支援を受け、Motionalの事業がしっかりと存続していくのか、注目を集めることになりそうだ。

■Hyundaiとアプティブの合弁会社

Motionalは元々、nuTonomy(ニュートノミー)という自動運転ベンチャーとして設立された。2013年のことだ。その後、デルファイ・オートモーティブに買収され、最終的に現在のHyundaiとアプティブの合弁会社となっている。

同社は、ラスベガスでオンデマンド型の自動運転タクシーのサービスに着手したり、ボストンやロサンゼルス、米国外ではシンガポールで安全要員付きの自動運転実証に取り組んだりしていることで知られている。


新たにHyundaiの全電動式の「IONIQ 5(アイオニック ファイブ)」を使ったロボットタクシーサービスをローンチさせる動きもあるようだ。

■早期のマネタイズには高いハードル

自動運転技術の開発は各社によって着実に前進しているが、早期のマネタイズはかなりハードルが高いのが現状だ。

アメリカではGoogle系Waymoがすでに有料の自動運転タクシーを展開しているが、同じく商用展開を進めたGM Cruiseの場合は事故やトラブルが頻発し、全米でサービスの提供を中止せざるを得なかった。

アメリカでは2022年後半に米Argo AIの事業閉鎖が明らかになったほか、2024年4月にはOpenAIが支援する米スタートアップのGhost Autonomy(ゴースト・オートノミー)が、会社の清算をしたことも明らかになっている。


「自動運転の目」として機能するLiDARを開発する上場企業の株価も低迷しており、コスト削減に向けたレイオフ(一時解雇)も続々発表されている。

■財務面でうまく立ち回れるか

マネタイズが可能な時期がやってくるまで辛抱が必要な時間が続くが、Motionalは財務面でうまく立ち回ることができるのか、関心が集まる。

【参考】関連記事としては「トヨタ、Uberに浮気された?自動運転の相棒はMotionalなのか」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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