神奈川県が「自動運転式ロープウェイ」を導入する可能性が出てきた。開発企業のZip Infrastructureと連携協定を締結したことが、2024年5月7日までに明らかになった。
Zip Infrastructureは福島県南相馬市に本社を置く2018年7月のベンチャー企業。同社は元々、神奈川県で開発を進めてきた経緯があり、2023年4月には県内で12人乗りテストモデル車両の走行に成功している。
Zip Infrastructureは報道発表で「現在は開発拠点を福島県南相馬市に置いていますが、今後も神奈川県内での導入を目指し、同県とともに開発を進めます」としている。
■勉強会立ち上げ、ニーズ調査やルート検討へ
報道発表によれば、神奈川県とZip Infrastructureは導入可能な地形や道路条件などの整理や、技術的研究などのために共同の「勉強会」を立ち上げる。同時に、市町村単位で導入ニーズがあるかや、導入意向のある地域において具体的なルート検討を行うという。
神奈川県の黒岩裕治知事はZip Infrastructureについて「Zipparは神奈川県発のベンチャーとして日本国内の交通課題のみならず、世界中の交通課題を解決できると確信しています」と語る。
さらに、「試乗した際、非常に静かで快適な乗り物でした。空から景色を楽しめるため、移動だけではなく観光要素もあると感じています」とコメントしており、移動手段としてではなく、観光振興の面からも注目をしているようだ。
ちなみにZip Infrastructureは現在、神奈川県横浜市西区に「支社」を置いている。
■「低コスト」「自動運転」「自由設計」
Zip Infrastructureが開発する自走型ロープウェイ「Zippar」は、3つの特徴を有している。「低コスト」「自動運転」「自由設計」だ。渋滞問題の解決を主な開発目的の一つとして掲げており、新たな交通システムとして都市部などで導入することを目指している。
同社は「従来モノレールの半分の輸送量が確保できるシステムを、1/5のコストと期間で建設可能」としている。
代表取締役の須知高匡氏は、慶應義塾大学で宇宙エレベーターの研究に取り組んだ経歴がある人物。経済誌Forbesの「Forbes 30 Under 30 Asia 2022」においては、いま最も注目すべきアジア人の1人に選ばれている。
須知氏はエレベータ並みにZipparを普及させることで、世界中の渋滞問題の解消を目指している。同社の資本金は1億8,548万円(資本準備金含む)。
■沖縄県豊見城市とも連携協定
Zip Infrastructureは2023年6月には試作機の無人走行試験に成功。その後、2023年12月に沖縄県豊見城市と連携協定を締結したことでも話題を集め、豊見城市から国土交通省へ、Zipparの導入に向けて要望書も提出されている。
さまざまな企業との資本提携や業務提携、スポンサー契約も結び、資金面でも技術力の面でもパワーアップを図っている同社に、引き続き注目だ。
【参考】関連記事としては「自動運転ロープウェイ、沖縄県豊見城市が導入計画 国交省に要望書」も参照。