OpenAI支援の米Ghost、自動運転事業「黒字化断念」で会社清算

後付け可能なシステムを開発



出典:Flickr / ishmael daro (CC BY 2.0 DEED)

OpenAIが支援する米スタートアップのGhost Autonomy(ゴースト・オートノミー)が、会社の清算をしたことがこのほど判明した。2024年4月3日をもって全世界での事業を停止し、会社を解散させた。

同社は高速道路に特化した自動運転技術の開発を手掛ける企業で、自動車メーカー向けの自動運転ソフトウェアの構築を行ってきた。しかし事業の黒字化が難しいことから、会社清算に至ったという。


加速する自動運転技術開発だが、商用化して利益を出すまでには時間がかかり、大手企業でさえも赤字を計上している段階にあることが多い。自動運転関連企業は世界で毎年何社も立ち上がってはいるが、その反面、ひっそりと閉鎖している企業もある。

■2017年設立、後付け可能なシステムを開発

出典:Ghost Autonomy公式サイト

Ghost Autonomy(旧Ghost Locomotion)は、ハードウェア・ソフトウェア開発のPure Storageを設立したJohn Hayes氏により、2017年に設立された。

ソフトウェア開発のみに集中し、既存車両にそのソフトウェアを後付けするという手法をとっていた。Ghost Autonomyの自動運転システムは、2012年以降に発売されたほぼ全ての車種に適用可能であるというのがウリであった。

過去に6回の資金調達ラウンドを行い、企業からの投資も順調に受けているように見えた同社だが、技術開発から収益を上げるまでがうまくいかなかったようだ。同社は、生成AI「ChatGPT」を開発するOpenAIの投資ファンド「Startup Fund」などから支援を受けていた。


■Ghost Autonomyの公式声明の内容

Ghost Autonomyの公式サイト(https://www.ghostautonomy.com/)には、下記の文章が掲載されている。

Ghost Autonomyは、2024年4月3日をもって全世界での事業を停止し、会社を清算しました。私たちは、ソフトウェアで制御された消費者向けの自動運転を実現するという使命において、Ghostチームが成し遂げた実質的な技術革新と進歩を誇りに思っています。現在の資金調達状況や自動運転開発、商業化に必要な長期投資を考えると、長期的な黒字化への道筋は不透明でした。私たちはチームのイノベーションのための長期的な行き先の可能性を模索しています。Ghostのビジョンを実現するために協力してくださった従業員や投資家、パートナーに感謝します。この野心的な旅への皆様のご支援に深く感謝します。

現在閲覧できるのは、このページのみとなっている。なお問い合わせ先として、メールアドレスの記載がある。


■開発が進む業界、しかし事業閉鎖する企業も

自動運転企業の事業閉鎖でインパクトが大きかったのは、2022年10月の米国の有力ベンチャーArgo AIの解体だ。その後2023年9月に、Argo AIの創業者らが自動運転トラックを開発する「Stack AV」を立ち上げている。

また2023年3月には自動運転トラック開発を手掛ける米Embark Trucksがレイオフ(一時解雇)を行い、会社清算も検討していることが報じられた。その後同社は、自動運転ソフトウェアの開発を行うApplied Intuitionに買収されたようだ。

今回のGhost Autonomyの清算についても、公式で「long-term destinations(長期的な行き先)の可能性を模索している」と書かれている通り、これまでに築いた技術や知見などの引受先を検討中だと予想される。

どのような形でGhost Autonomyが引き継がれていくのか、行方を見守りたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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