高速道路に特化した自動運転技術開発で知られる米スタートアップGhost Locomotion(ゴースト・ロコモーション)は2021年7月4日までに、1億ドル(約111億円)の資金調達を完了したことを発表した。
これはGhost Locomotionの投資ラウンドシリーズDにあたり、今回の投資にはアメリカのSutter Hill VenturesやFounders Fund、Coatueなどが参加した。ちなみに2019年のシリーズCでは3,200万ドル(約36億円)を調達している。
Ghost Locomotionは高速道路での自動運転実用化に向け、特に衝突防止機能の開発に力を入れてきた。今回調達された資金も、こうした技術のさらなる改良に充てられる予定だ。
■高速道路走行と衝突防止機能に焦点
2017年に設立されたGhost Locomotionは、設立当初から「運転は危険なものであってはならない」という信条を掲げ、安全第一の自動運転技術の実用化を目指し、開発を進めてきた。
CEO(最高経営責任者)のジョン・ヘイズ氏は2019年11月、「問題を単純化することで、限りなく完璧に近い安全性を実現できる」とし、まずは「高速道路という限られた走行範囲に焦点を絞ることで、短期間で実用化を可能にする」と、その戦略を自らブログで明かしていた。
また、ジョン氏はかねてから、増加傾向にある自動車の衝突事故を嘆いており、衝突防止機能の開発に力を注いできた。
Ghost Locomotionの衝突防止機能は、人間の視覚野に近い処理機能を持つAI(人工知能)を使い、周囲のあらゆる物体の動きを追跡することで、起こりうる危険をあらかじめ避けるというものだ。従来、多くの衝突防止機能は「障害物を認識して避ける」というシステムを採用しており、Ghost Locomotionのアプローチはこれとは異なる。
ちなみにGhost Locomotionは、HDカメラなどを使った周囲の状況の認識スピードについて「人間の5倍も速い」としているほか、「衝突直前の最後の操作を、人的操作に頼ることはない」「ドライバーが状況を注視する必要もない」とも言い切っている。
■ターゲットは既存車両!後付けで自動運転化を実現
Ghost Locomotionはソフトウェア開発のみに集中し、既存車両にそのソフトウェアを後付けするというアプローチをとっている。そして自動運転レベル3相当の後付けシステムを2021年に発売すると発表している。
Ghost Locomotionの自動運転システムが適用可能なのは、2012年以降に発売されてきたほとんどの車種だといい、自動車のトランクルームにGhost Locomotionのキットを設置することで、既存の車体を自動運転化することができるようだ。既存車両をターゲットとするとなると、マーケットは非常に大きい。
実際に発売が予定されるのは取り付けキットとソフトウェアで、設置初期費用として3,495ドル(約39万円)、そしてシステムの月額使用料として99ドルがかかると発表されている。しばらくは米国内の一部高速道路のみが動作対象だが、範囲を随時拡大していく見込みだという。
ちなみに2021年7月現在、Ghost Locomotionは米カリフォルニアで同製品を使ったテスト走行を続けており、当局から許可を受け次第、販売に踏み切るものとみられている。購入希望者は、Ghost Locomotionのウェブサイトからメンバー登録(https://driveghost.com/sign-up)することで最新情報を受け取ることができる。
■【まとめ】衝突事故減少に向け高まる期待
Ghost Locomotionの「後付け」というアプローチは、一般消費者にとって自動運転をより身近なものにする。
同社のゼネラルカウンセル(法務担当役員)であるジャックリン・グラスマン氏は「Ghost Locomotionの技術を市場に投入することで、数年以内には多くの人命を救うことができるだろう」と話す。同社の目標である衝突事故減少の実現に、大きく期待したい。
【参考】関連記事としては「自動運転で注目!国内外スタートアップ45社を総まとめ」も参照。