自動運転で扱うデータ群まとめ センサーデータや位置情報、地図

どのように役立てられている?



実証が加速し、国内でも実用化が始まった自動運転。限定条件下で実績を重ね、法改正の動きと合わせて徐々に対象エリアや走行条件を拡大していくフェーズに突入した。







この自動運転実現の裏側には、膨大な量のデータが存在する。さまざまなデータが寄り集まって自動運転を支えているのだ。この記事では、自動運転で用いられるデータにはどのようなものがあり、どのように役立てられているのかを解説していく。

■自動運転で「データ」が重要な役割を果たす理由

自動運転車は、カメラやLiDARといった外部センサーが「目」の役割を担い、車両周囲の状況を把握する。各センサーが得た情報から道路の形状や交通標識、他の車両、歩行者などをAI(人工知能)が検知・解析し、車両を制御する。

この一連の機能は、従来人間が手動で行っていた運転操作をそのまま機械化・コンピュータ化したものと言える。運転操作をデジタル化し、コンピュータ処理しているのだ。その際、人間が目や脳などを使って自然に処理している各種情報もデジタル化される。

つまり、人間が運転する上で自然に処理していた膨大な情報をすべてデータに置き換え、コンピュータ処理することで自動運転は成り立っているのだ。その意味で、自動運転の「核」はデータにあるといっても過言ではない。

また、自動運転の精度・安全性を高めるため、GPSをはじめとした衛星測位システムによる位置情報や、自動運転向けに作製された高精度3次元地図、リアルタイムの各種交通情報など、さまざまなデータを活用するのがスタンダードとなっている。

自動運転技術はこうしたさまざまなデータに支えられており、技術の進化とともに生成されるデータや通信されるデータはより膨大なものとなっていくことが想定される。このため、データを蓄積するストレージや高速処理するエンジン、通信環境など、データに関わるさまざまなハードウェアの進化も必須となる。

■自動運転で扱われるデータ
センシングデータ

自動運転において最もメジャーなデータが、外部センサーが取得するセンシングデータだ。カメラやLiDAR、ミリ波レーダー、超音波センサーといったさまざまなセンサーデータをフュージョン(融合)し、それぞれの特性を生かして短所を補い合うことで「目」としての役割を担う。

開発段階では、例えばカメラの場合、画像に映し出されたモノが何かをAIに学ばせる必要がある。歩行者(人)を判別する際には、大人から子どもまであらゆる体格、服装、鞄などの所持品、動作など千差万別な「人データ」を用意し、AIが人の特徴を正確に見出すまで学ばせ続けなければならない。

その作業には膨大なデータが必要となることは言うまでもない。座り込む人や壁にもたれる人、ランニング中の人など、あらゆる環境下で判別できるよう、学習を繰り返さなければならない。同様に、道路標識や信号、周囲の車両、自転車、ガードレールなど、道路交通に関わるあらゆるモノを識別できるようになって初めて自動運転が可能になるのだ。

センサーデータからAIを学習させ、コンピュータで視覚機能を実現する「コンピュータビジョン」は、自動運転開発における主要要素に数えられる。

また、応用形として、判別したモノがどのように動くかといった行動予測を行う技術も重要となる。手動運転時、前方の道路脇にいる人や車両が飛び出してくる可能性を考慮しながら車両を制御するのと同様、AIもこうした予測を行いながら安全走行を実現するのだ。

こうしたAIの学習は、本質的に終わることはない。99%安全を確保し実用化域に達した後も、次は99.9%を目指さなければならない。夜間や逆光下などでも可能な限り検出できるよう、データの収集と学習を繰り返し続けることが重要とされる。

GPS・GNSSデータ(位置情報データ)

自動運転においては、現在どこを走行しているのかを把握する自車位置推定技術も必要となる。この位置情報において主力となるのがGPSをはじめとしたGNSS(衛星測位システム/全球測位衛星システム)だ。

複数の衛生から常時発出されている電波が、受信機を備えた車両までに到達する時間などを計測することで位置を導き出す仕組みで、基本的には従来のカーナビゲーションなどと同様だ。

ただ、GPSは大きな誤差が出ることも珍しくない。電波の受信状況などによっては誤差が数十メートルに達し、カーナビ上で1本隣の道路を走っていることもある。GPSは米国の衛星であるため、位置情報を安定的に得づらい面があるのだ。

自動運転においては、誤差数十メートルは当然、誤差数メートルも致命的となる。1メートルずれれば車線をはみ出し、ガードレールなどに接触する可能性が非常に高くなるためだ。このため、自動運転では誤差数センチレベルの正確性が求められる。

日本では近年、独自の衛星測位システムとなる準天頂衛星システム「みちびき(QZSS)」が打ち上げられ、サブメーター級の測位補強やセンチメーター級の測位補強に期待が寄せられている。

ただし、こうしたデータ補強にも弱点がある。タイムラグだ。補強データの作成・送信に数秒から十数秒を要する場合があるため、補正が間に合わず測位結果が乱れる可能性があるという。

より正確な位置情報を得るためには、衛星測位データをベースに、ジャイロセンサーや加速度センサーといった慣性センサーや後述する高精度3次元地図、場合によっては磁気マーカーシステムやSLAM技術などを併用し、安定した情報を得ることが肝要となりそうだ。

【参考】関連記事としては「自動運転車の位置特定技術、3つの手法とそれぞれの弱点」も参照。

地図(マップ)データ

自動運転向けの作製された高精度3次元地図もデータの宝庫だ。区画線や道路標識、ガードレールといった道路上及び道路周辺の実在地物をはじめ、走行ルートの参考となる車線の中心線のような仮想地物を立体的に収録した極めて精度が高い地図データだ。

高精度3次元地図の作製は、立体的にスキャンして3次元データを得ることができるLiDARを搭載した車両を実際に走行させ、道路周辺のデータを得る手法が一般的だ。LiDARデータは基本的に点描画のような点群で表されているが、ソフトウェアによって白線や道路標識などを自動抽出するなどし、点群データに情報を付加していく。

自動運転車は、この高精度3次元地図をベースに、車載LiDARなどで得たリアルタイムのデータを照合しながら走行する。例えば、車載LiDARが走行中に捉えた道路標識と、マップ上の道路標識の位置を照合することで、現在マップ上のどの場所を走行しているかを把握することができる。正確な自車位置を特定することが可能になるのだ。

また、道路標識などのほか、渋滞情報などリアルタイムの交通情報を付加することで自動運転車は進行先の情報を先読みすることができ、ルートプランニングに役立てることも可能になる。

すべての道路を網羅する地図の作製には膨大なデータの収集が必要となるが、地図作製・更新に汎用タイプの車載カメラの画像を活用する技術開発なども進んでいる。

乗員のデータ

自動運転においては、車内のデータ、とりわけ乗員に関するデータも重要性を増してくる。特に、一般乗用車で普及が始まった自動運転レベル3では必須のデータとなる。

レベル3は一定条件下で自動運転が可能となるが、システムから手動運転への交代要請があった場合、ドライバーは速やかに運転操作を行わなければならない。再三の要請に対しドライバーが反応しない場合、車両は路肩などに緊急停止することになる。

レベル3の機能を誤解したドライバーが居眠りする可能性なども指摘されている。海外では実際、ハンズオフ運転が可能なレベル2車両でさえ居眠り運転する例が複数報告されている。大事故につながりかねない案件だ。

こうした事故防止に向け、必須とされているのがドライバーモニタリングシステムだ。ドライバーのまばたきの状況や顔の向き、姿勢などを車内カメラで随時監視し、注意を促す仕組みだ。漫然運転の防止をはじめ、早期に危険運転の芽を摘む効果に期待が寄せられている。

一方、レベル4の移動サービスなどでは、利用者となる乗員の属性データや嗜好に関するデータを蓄積することで、新たな車内サービスの提供や効果的・効率的な運行体系の構築などに役立てることができそうだ。将来の自動運転バスやタクシーなどでは、顔認証システムで個人を識別し、自動決済するシステムが導入される可能性も考えられそうだ。

【参考】関連記事としては「自動運転レベル3の「油断の罠」に挑む技術者たち」も参照。

渋滞情報などの交通データ

刻一刻と状況が変わる道路交通においては、渋滞情報や事故情報、道路工事による交通規制情報などをはじめ、気象情報や落下物情報、信号現示情報、交差点内における歩行者や自転車情報など、あらゆる情報が生成されている。

これらリアルタイムに更新される各種交通情報を高精度3次元地図に付加したものをダイナミックマップと呼ぶ。いつどこで何が発生しているかを把握し、またこれから何が発生する可能性があるかを予測するのに役立つ。こうした情報を自動運転車に与えることで、より精度の高い安全走行を実現することが可能になる。

データのやり取りには、情報提供機関からの直接送信のほか、自動車同士で通信を行うV2V(車車間通信)や道路インフラと通信を行うV2I(路車間通信)などが考えられる。

こうしたデータのやり取りは、例えば急カーブで見通しの悪い道路で対向車両の接近を事前に通知したり、狭い路地の交差点で死角の情報を補ったりすることにも役立てることができる。

【参考】関連記事としては「自動運転とデータ通信…V2IやV2V、5Gなどの基礎解説」も参照。

車両にまつわるデータ

自動運転車は、車両の稼働状況やメンテナンス状況、各部品や消耗品、システムなどの保全情報など、車両にまつわるさまざまなデータも収集・蓄積し、安全走行につなげることが求められる。

ドライバーレスで運転が可能なレベル4以降の自動運転車は、故障の兆候となる車両の異音や違和感などに気付きにくい。移動サービスなどの場合、運行途中でアラームが鳴ってもドライバーレスのため即座に対応できず、緊急停止せざるを得ないケースも想定される。可能な限り事前に予測・検知するシステムが求められるところだ。

また、車両の運行情報や乗員データなどを、より質の高いサービスの提供や効率的な運行体制の構築などに役立てることも必然となりそうだ。

■【まとめ】自動運転はデータの宝庫 重要性増すデータマネジメント

自動運転は、開発段階から実用段階に至るまで常に膨大なデータを生成・消費していることが分かった。人間が行っていた動作をコンピュータに置き換えるためには、運転操作に関わる全ての動作や思考をデータ化する必要があるのだ。

こうしたデータは、自動運転技術の高度化に伴いさらに質と量を高めていくことが予想される。自動運転を構成するセンサーやAI技術の開発などとともに、今後はデータマネジメントも重要性を増していくことに間違いはなさそうだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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