【2024年4月の自動運転ラボ10大ニュース】日本版ライドシェア事業がスタート

クルマの「看板誤認識」も話題に



出典:デジタル庁/首相官邸

国内では自家用車活用事業がスタートし、ライドシェア関連の話題が熱気を帯びている。この熱は今しばらく冷めることなく続きそうだ。海外では、Waymo中国勢に新たな動きが出ている。着々と自動運転サービスの幅を拡大しているようだ。

自動運転をはじめとした各種モビリティサービスの変革は、新年度を迎えてもしっかりと進み続けている。2024年4月の10大ニュースを振り返り、その足跡をたどっていこう。


■音喜多氏、河野大臣に「それはライドシェアではありません」(2024年4月4日付)

自家用車活用事業に関し、政治家の発言も注目を集めている。規制改革を主導する河野太郎氏がXで、今月からタクシー事業者が運営主体となってライドシェアを提供できるようになることをポストしたところ、日本維新の会の音喜多駿氏が「それはライドシェアではありません。新規参入などを認めない骨抜きの『日本版ライドシェア』」「規制改革大臣がそこで納得されていたら終わり」と反応するなど、推進派も過熱しているようだ。

自家用車活用事業は、一般ドライバーが自家用車を使用してサービスを提供するという意味では紛れもなくライドシェアだ。しかし、タクシー事業者の管理下でのみサービス提供できる自由度の低さは、本質的な意味でライドシェアとは言えない。両者とも間違っておらず、河野氏も本心では同じように思っているかもしれない。

規制改革推進会議において本格版ライドシェアの議論が進められているが、最終的な合意に達するまでは紆余曲折が予想される。まずは6月発表予定の取りまとめ案に注目だ。

【参考】詳しくは「音喜多氏、河野大臣に「それはライドシェアではありません」」を参照。


■ライドシェア解禁!・・・沈黙貫くトヨタ、参入見送りか(2024年4月5日付)

日本版ライドシェア、あるいは本格版ライドシェアに向け各社が参入する中、モビリティ・カンパニーを目指すトヨタは動くのか?――といった主旨の記事だ。


タクシー事業者やプラットフォーマーらが相次いで参戦を表明する中、MaaS関連事業者などもどのような関わりができるか、またどのような応用系が考えられるかなど模索している。

モビリティサービスに力を入れるトヨタはどうだろうか。MaaSアプリ「my route」と本格版ライドシェアの統合をはじめ、「自家用車をサービスカーに変換する」という視点に立てば、さまざまなサービスが考えられるのではないだろうか。

ドラレコや車内向けカメラ、運行管理システムなど、関連ソリューションはいろいろと考えられる。本格版ライドシェアの動向そのものが不確定なものではあるが、水面下ですでに動き出している企業も少なくなさそうだ。

■配送ロボ、市場規模40倍で「超ドル箱」化へ 2030年に4,000億円予測(2024年4月5日付)

富士経済の調査によると、屋外におけるデリバリーロボット市場は右肩上がりで成長し、2023年実績の100億円から2030年には4,000億円規模に達すると予測している。

日本では試験的なサービスが進められているものの、ロボットデリバリーサービスを展開する事業者が限定的であるため当面は緩やかな市場成長が見込まれるという。事業者らがこぞって取り組みに注力し始めるきっかけのようなものが欲しいところだ。

なかなか本格的な取り組みが出てこない日本だが、ウーバーイーツジャパンが3月に東京都内でサービスを開始した。フードデリバリーとの相性は良く、今後の展開次第では同社の取り組みが呼び水となり、大きな広がりを見せていくかもしれない。

6年後の2030年にはどのような世界が広がっているか、非常に興味深いところだ。

■タクシー会社「倒産ドミノ」か ライドシェア、全面解禁の検討へ(2024年4月9日付)

帝国データバンクの調査によると、2023年度に倒産したタクシー事業者は33件となり、過去10年で最多を記録したという。

コロナ禍の需要減でドライバーが減少し、コロナ後の需要急回復で供給が間に合わない状況が続いている。コロナ時の融資の返済などの影響も考えられるが、既存のタクシー事業そのものが高収益を生み出しにくい構造となっているため、厳しい状況を打破するには規制面を含めた変革が必要となりそうだ。

4月に自家用車活用事業がスタートしたが、これはドライバー確保に資する新規事業と言える。一方、現在協議を進めている本格版ライドシェアは、一般ドライバーがそのままタクシーのライバルとなるため、制度設計次第で経営に大きな影響が出る。

発表予定の6月にどのような案が示されるのか、また業界はどのような反応を示すのか。要注目だ。

■Googleが「二刀流」!自動運転タクシーでUber Eatsも配達(2024年4月11日付)

Waymoの自動運転タクシーを活用した無人デリバリーサービスがアリゾナ州フェニックスで始まったようだ。提携するUber Technologiesの乗客向け配車サービスに加え、Uber Eatsでも無人車両の展開を開始した。

両社は2023年10月、UberのプラットフォームでWaymo の自動運転タクシーがマッチングされる無人サービスをフェニックスで開始した。これまでに数万回のマッチング・移動を実現してきたという。

今回、新たにUber Eatsのデリバリーサービスにおいても自動運転タクシーをマッチング可能にし、無人の食事配達サービスに着手した。

自動運転タクシーでデリバリーを行う実証は各地で行われているが、これは意外と良いアイデアだ。すでにタクシーサービスを展開しており運行に支障はなく、人を運ぶか、モノを運ぶかの違いのみで稼働率を高めることができる。

将来の自動運転タクシーは、こうした二刀流がスタンダードになるのかもしれない。

■ついに「量産型」の自動運転タクシー!中国で来年製造スタート(2024年4月13日付)

中国配車サービス大手DiDi Chuxing(滴滴出行)の自動運転開発部門DiDi Autonomous Drivingが広州汽車集団(GACグループ)傘下のAion New Energy Automobileと合弁を設立し、2025年にも自動運転タクシーの量産を開始する計画を発表した。

DiDi Autonomous Drivingは2023年、GAC Aionと自動運転タクシー量産化に向け合弁を設立する契約を締結し、政府関連の投資家やGACキャピタル、広州開発区投資グループから最大1億4,900万ドルの資金提供を受けていた。

現在、広州と上海の一部エリアで自動運転と手動運転を組み合わせた混合配車モデルで自動運転タクシーサービスを運営しているが、今後、無人サービスに向けた取り組みを大きく加速していくことになる。

中国の自動運転タクシー市場は強力なライバルが多いが、DiDiは配車プラットフォームで圧倒的な強みを持つ。米Uber Technologies同様、配車プラットフォーマーがどのように自動運転サービスを統合していくか、要注目だ。

■高速道、「AIカメラ」で落下物検知へ 自動運転実現に向け(2024年4月15日付)

構想道路におけるAI(人工知能)カメラの導入が進み始めているようだ。NEXCO3社などは、AIカメラを活用した事故や落下物の検知やV2Iなど、さまざまな実証を行っている。

自動運転技術の実装をはじめとした次世代高速道路に向けた対応だ。高規格道路として安全性や利便性などをいっそう高め、幹線道路としての役割を果たしていく。

自動運転関連では、2024年度に新東名高速道路の一部区間で自動運転車用レーンの整備に向けた実証が始まる予定だ。

自動運転トラック開発に向けた民間の取り組みも進められている。自家用車においては、制限速度を満たすレベル3が登場すれば需要が大きく増し、普及に弾みがつくかもしれない。

高速道路における自動運転実用化の動向に改めて注目したいところだ。

■タイミー、ライドシェア参入か 労使の「直接契約」が前提(2024年4月22日付)

スキマバイトのマッチングを図るタイミーが規制改革推進会議の地域産業活性化ワーキング・グループで「ライドシェアに関する意識調査結果」を発表した。

スキマ時間に仕事を探しているワーカーのうち、43.1%がライドシェアドライバーの意向ありと回答しており、その理由として「副業としての追加収入」や「好きな時間に働きたい」を挙げる者が多かったようだ。

好きな時間・好きな場所で自由に働ける柔軟な働き方が重要なようで、これは自家用車活用事業ではなく本格ライドシェアへの関心を示す内容と言える。

タイミー自身がライドシェア事業に参入するかは不明だが、スキマ時間・スキマバイトといった概念とライドシェアは非常に親和性が高い。

同ワーキング・グループは会議を重ね、タクシー事業者や旅館協会、飲食団体連合会など各方面から意見を聴取している。6月にどのような取りまとめを行うのか必見だ。

■天下一品のロゴ、ホンダ車が「進入禁止」と再び誤認識(2024年4月22日付)

ホンダADAS「ホンダセンシング」が、ラーメンチェーン天下一品のロゴを「進入禁止」と誤認識する問題が再燃しているようだ。

ローソンが天下一品フェアを開催したため、天下一品のロゴがあちこちにあふれたことにより「ロゴ遭遇率」が高まり、コンビニでも「進入禁止」のアラートが発出されてしまったようだ。

カメラのパーセプション技術における問題で、車両制御に関係のない機能で使用されているうちは笑い話で済むが、車両制御に関わる自動運転においては死活問題となる。

道路標識に誤認させるマークなどは今後もいろいろと出てくるかもしれない。悪意を持って誤認を誘う者が出てくる可能性もある。識別すべきオブジェクトをどのように特定するか、パーセプション技術をはじめ、別の観点・アイデアを盛り込んだ対策が将来的に必要になりそうだ。

■カナダで「自動運転禁止」州が誕生 レベル3以上で懲役刑も(2024年4月23日付)

カナダのブリティッシュ・コロンビア州で自動車法が改正され、自動運転レベル3以上の走行が禁止されたようだ。自動運転車を走行させた場合、最高2,000カナダドル(約22万5,000円)の罰金や6カ月以下の懲役が課される。

手動運転がまだまだ主流な環境下において、技術が成熟していない自動運転車が混在すると安全性が損なわれる――といった理由のようだ。カナダでは自動運転車の輸入や販売は行われておらず、現状大きな影響はない。

同州によると、自動車法に基づく試験プロジェクトを通じて、あるいは将来の規制により自動運転が可能とならない限り、高度に自動化された自動運転車は同州の公道で運転できず、高度に自動化された自動運転機能も使用できないとしている。

一方、将来にわたり禁止していく方針ではないようで、同州の道路において自動運転が許可されるにはさらなるテストと政策開発が必要としている。つまり、勝手にレベル3車両に乗ったり実証したり――といった行動を規制する意味合いが強いものと思われる。

■【まとめ】ライドシェア関連の話題はまだまだ続く

国内では、ライドシェア関連の話題がまだまだ続く見込みだ。自動運転バスやタクシー、自動配送ロボットなども着々と取り組みが進められているものの、現実的な変化を感じやすいライドシェアの方が現状はインパクトが高いのかもしれない。

将来的には自動運転タクシーのような無人サービスがライドシェアサービスの上位互換となり、人間によるライドシェアは存在意義を失っていく可能性が高いが、それはまだ先の話だ。

それまでの「つなぎサービス」としてライドシェアがどのように位置付けられるのか。今後の議論の行方に引き続き注目したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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