【2023年1月の自動運転ラボ10大ニュース】レベル3~4計画が次々

メルセデスが北米でレベル3展開へ



2023年が幕を開けたばかりだが、自動運転に意欲的な各社の動きが早くも活発化している。海外では、モービルアイやボルボ・カーズ、メルセデス・ベンツなどが自動運転実装に向けた取り組みや計画をそれぞれ発表している。







国内では、タクシー事業を展開するMKグループの1社が全車をレベル3~4にする計画を発表した。国内外とも技術開発とともに環境面の整備も整いつつあり、2023年は大きく社会実装が進展する1年となりそうだ。

2023年1月の10大ニュースを一つずつ振り返っていこう。

トヨタより先?自動運転タクシー、日本初は「東京MK」濃厚か(2023年1月8日付)

MKタクシーでおなじみの東京エムケイが、2025年までに全車をレベル3~4クラスの自動運転機能を搭載した車両にすることを目指す方針を発表した。ドライバーの疲労軽減が目的としている。

供給元となる自動車メーカーや自動運転開発事業者などは不明で、あくまで計画の段階だが、MKグループにEV(電気自動車)を納入しているBMWなどさまざまな選択肢が考えられる。

国内における自動運転タクシーは、ホンダモビリティソリューションズが帝都自動車交通と国際自動車と提携し、2020年代半ばにも東京都心部で自動運転モビリティサービスを提供する合意を交わしている。

また、ティアフォー勢は日本交通系のJapanTaxiなどと協業し、すでに自動運転タクシーの実証に着手している。

国内では、レベル4が解禁される2023年度から自動運転バス・シャトルの社会実装が加速していく見込みで、走行経路が複雑な自動運転タクシーはそこから数年遅れで実装が始まるものと思われる。

2023年度に自動運転タクシーの公道実証が大きく加速する可能性も高い。国内初はどの開発事業者・運行事業者となるのか。新年度の動向にも要注目だ。

■自動運転、日本勢の新興ティアフォーとNVIDIAに接近の兆し(2023年1月9日付)

EV開発に向けたオープンプラットフォーム「MIH」を展開する台湾のFoxconnが、自動運転開発に向け米NVIDIAとパートナーシップを結んだ。MIHにおける自動運転開発は日本のティアフォーが主導しており、MIHを通じてNVIDIAとティアフォーが自動運転分野で急接近するか――といった観点の記事だ。

今回のパートナーシップでは、NVIDIAのSoCを搭載したECUをFoxconnが製造し、Foxconnが製造するEVに同製品を搭載していく内容となっている。

MIHは、2023年1月時点で2,700社を超える企業が参画する超巨大アライアンスだ。開発は順調に進んでいる様子で、2023年末までにデモンストレーションモデルを構築する計画を発表している。事業が軌道に乗れば、参画各社によるEV製品化が一気に進む可能性がある。

同様に、自動運転技術も確立されれば、ティアフォーとNVIDIAのソリューションを搭載した自動運転EVの量産化も一気に進展する可能性がある。

自動車製造にイノベーションを起こすMIHが、近い将来自動運転分野をも席巻するかもしれない。MIHが今後自動車業界にどのような影響を及ぼし、そしてシェアを拡大していくのか。引き続き注目したい。

■米国勢、「初の自動運転レベル3」をメルセデスに奪われる展開(2023年1月10日付)

独メルセデス・ベンツは、米ラスベガスで開催された技術見本市「CES 2023」で、レベル3車を米ネバダ州とカリフォルニア州で2023年中に利用可能にすると発表した。米国市場初のレベル3となる見通しだ。

同社はネバダ州とカリフォルニア州のDMVにレベル3システムの認証を申請しており、ネバダ州はすでに承認済みという。カリフォルニア州も間もなく承認されると見ている。正式な手続きが済めば、同社のレベル3システム「DRIVE PILOT」が使用可能になる。

当面は渋滞時限定のレベル3となりそうだが、今後どのようなステップを踏んで通常走行時のレベル3に拡大していくのか。また、搭載車種をどのように拡大していくのかなど、注目点は多い。

BMWなど他社の動向を含め、2023年中にレベル3市場がどのように拡大していくのか要注目だ。

■ドバイ国家戦略、GMに追い風!自動運転タクシー4,000台供給へ(2023年1月10日付)

米カリフォルニア州で自動運転タクシーの商用運行を行うCruise。大事故こそ起こしていないものの、立ち往生など相次ぐトラブルがSNSなどで報告されており、まだまだ課題も多いようだ。

順風満帆とは言えない船出となったが、計画では2023年から同社の自動運転タクシーがドバイで運用を開始する見込みだ。2030年までに4,000台規模までフリートを拡大する計画で、これがCruiseに追い風となるか注目だ。

2022年11月には、ドバイの道路交通局(RTA)の代表団がサンフランシスコを訪れ、Cruiseの上級管理職と面会した。自動運転車の認可に関わる最新の米政府の動向について説明を受けたほか、カリフォルニア州当局にインタビューを行ったという。

Cruiseは2022年12月に新たなソフトウェアをリリースし、ブレーキングや自転車の行動予測、認識システムと予測システム間のインターフェースの合理化、ソフトウェアの安定性向上などさまざまな面でアップデートを行ったという。

世界展開に向け、さらなるクオリティ向上は欠かせない。アップデート後の米国内サービスの動向などにも注目だ。

■Google、自動車向けHDマップの提供開始!自動運転実現にも貢献(2023年1月12日付)

グーグルが開発したHDマップを、ボルボ・カーズとポールスターが導入すると発表した。それぞれ最新モデルとなる「Volvo EX90」と「Polestar 3」を皮切りに拡大していく方針のようだ。

同社のHDマップが、日本で開発が進められている高精度3次元地図と同レベルのものかは不明で、導入する市場も分からないが、「Pilot Assist」などの運転支援機能をはじめ、将来的にはルーフに統合されたLiDARなどのセンサーセットと組み合わせ、自動運転技術の導入をサポートしていくものになるという。

ボルボ・カーズはレベル3システム「ライドパイロット」を北米市場向けに展開予定で、このレベル3にもグーグルのHDマップが有効活用されるのかなど、いろいろ気になるところだ。

■米中びっくり!フランス勢「自動運転シャトル」で存在感(2023年1月12日付)

自動運転技術の実用化で世界の先陣を切る米国と中国だが、自動運転シャトルの開発と世界展開では、仏新興企業勢に先を越されている。

ともに2014年創業のNavyaとEasyMileは、グーグル(Waymo)に負けず劣らず早期に自動運転シャトルを開発し、世界への発信を開始した。

特定のルートを比較的低速で走行する小型バスは、自動運転創世期にもってこいのモビリティであり、実証や閉鎖空間などへの導入が徐々に進んだ。日本でもBOLDLYなどがNavyaのARMA積極導入を図っており、最も馴染みの強い自動運転車となっている。

両社は現在、車両の販売とともに導入後のサービス関連の売り上げも伸ばしている。販売のみに依存しない新たなビジネスモデルをいち早く構築し、追いすがる同業他社と差別化を図っていく構えだ。こうしたビジネス展開の在り方にもしっかり注目していきたいところだ。

■ある夫婦が「自動運転ベビーカー」開発!3,800ドルで販売(2023年1月13日付)

カナダのスタートアップであるGlüxKindが、CES2023で自動運転ベビーカーを披露したようだ。スマートベビーカー「Ella」は360度センシングを可能にし、自動ブレーキやハンズフリーモード、アプリ連携機能などを備えているという。

すでに先行予約を受け付けており、最初の100台は3,800ドル(約50万円)で販売するようだ。どこまでの安全機能を備えているのか詳細は不明だが、ベビーカーは数ある乗り物の中でも絶対的な安全性が必須となる。

ベビーカーにおいては、さすがに目の届かない遠隔監視のみの自動運転などはないだろうが、近接監視タイプなどでどのようなメリットと安全性を提供できるのか。モビリティの一種として注目したい。

■関係者必読!SIP第2期自動運転、全300ページの最終報告書(2023年1月14日付)

2018年度にスタートした戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期が、2022年度末をもって終了する。自動運転実用化に向けた基盤技術の開発など、早期社会実装に向けたさまざまな取り組みが官民総出で行われてきたが、その内容の濃さが最終報告書の厚さに表れているようだ。

自動運転の実用化には、個々の開発企業の取り組み以外にも、こうした協同体制が必要不可欠となる。協調領域の研究開発などがその代表例だろう。

2023年度にレベル4の社会実装が始まる見込みだが、路車連携の在り方など、まだ完全に固まっていない部分も多く残されている。

2021年度にスタートした「RoAD to the L4(自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト)」など、引き続き官民連携のもと進められる事業は継続されている。それぞれの取り組み動向に改めて注目だ。

■自動運転、事故発生が再認識させる「人間くささ」の重要性(2023年1月16日付)

滋賀県大津市内で行われている自動運転バス実証で、乗客がけがをする事故が発生した。車両が加速した際、乗客が座席からずり落ちたという。

大津市や運行事業者の京阪バスなどから続報が出されていないため詳細は不明だが、1つのポイントとして注目すべきは、どの程度の加速だったか――という点だ。人間のドライバーと比べ、加減速に滑らかさをどれほど欠いていたのか――という視点だ。

自動運転技術は、周囲の車両や歩行者などと接触しない外部の安全が第一に重視されるが、実用面を考慮すれば、こうした乗り心地に関する質も問われることになる。

また、乗客がどのような体制で着座していたかも気になるところだ。車内無人となる自動運転サービスでは、乗客一人ひとりの行動に目が届きにくくなる。

まもなく自動運転サービスが本格化する時代が到来するが、車内の安全をどのように確保していくか――といった観点の新サービスや技術の登場にも期待したい。

■3兆円企業のIntel傘下Mobileye、欧州で自動運転展開へ認可取得(2023年1月17日付)

モービルアイが、ドイツの第三者認証機関TÜV SÜDから自動運転技術に関する認証を得た。この認証により、ドイツでのパイロットプログラムを拡大し、「Mobileye Drive」を搭載した「NIO ES8」をドイツの全ての道路でセーフティドライバー同乗のもと運用することができるという。

同社は2020年にTÜV SÜDの認証を受け、ドイツ当局から承認を取得してミュンヘン周辺で公道実証に着手している。ミュンヘンとダルムシュタットを皮切りにサービスを拡大していく方針で、当面はセーフティドライバー同乗のもと走行するが、必要な承認を取得でき次第、無人化を図っていく。

NIO ES8には、カメラだけで自律走行可能なシステムとLiDARとレーダーで自律走行を行うシステムを備えた「Mobileye Drive」が搭載されており、2つのシステムが独立して機能することで高い冗長性を発揮する。ロボタクシーやシャトル、ラストマイル配送など、さまざまな自動運転サービスを可能にする。

同社はイスラエルやドバイ、日本などでも各地のサービスプロバイダーとともに自動運転サービスを立ち上げる計画で、2023年に各地の取り組みが大きく加速する可能性が高い。日本でもどのような展開を行っていくのか、要注目だ。

■【まとめ】レベル3〜4の社会実装が大きく加速する年に

海外では、日本・ドイツに次ぐレベル3の実用化が北米で始まり、メルセデスを皮切りに年内に複数社が実装する可能性が高い。

レベル4は、モービルアイの動向に注目が集まるところだ。世界展開を大きく加速する同社と、先行するWaymoやCruiseなどの事業・サービスが徐々にぶつかり合い、競争を激化させていくことになる。

国内では、改正道路交通法の施行がターニングポイントとなる。レベル4に関する取り組みがどのように加速していくのか、2023年の動向に今からしっかりと注目していきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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