米中びっくり!フランス勢「自動運転シャトル」で存在感

無人サービス領域でいち早く成功



(左)EasyMileの自動運転シャトル=出典:EasyMile公式サイト/(右)Navyaの自動運転シャトル=出典:Navya公式サイト

「自動運転先進国」と聞いて思い浮かべる国はどこだろうか。多くの人は米国や中国を思い浮かべるのではないだろうか。日本やドイツも法整備などの環境面で先行しており、今後の躍進に大きな期待が寄せられるところだ。

では、フランスを思い浮かべた人はいるだろうか。同国の自動車メーカーのルノーやプジョーなどは自動運転分野で話題に上がることは少なく、忘れられた存在となっている。


しかし、フランス勢が席巻している領域もある。自動運転シャトルだ。この領域においていち早く世界展開に成功したのがフランス企業なのだ。

この記事では、自動運転シャトルで存在感を発揮するフランス勢について解説していく。

■フランスと自動車産業・自動運転
「自動車大国」の一角ではある

フランスは、一次産業を筆頭に自動車や軍需、通信衛星、宇宙航空、観光など幅広い産業を有する。特に農業はEU全体の生産量の約3割を占める大国だ。人口は約6,700万人と英国と同規模で、1人当たりの名目GDPは日本よりやや高い4万5,000ドル規模となっている。

自動車関連では、日産・三菱とアライアンスを組むルノーや、ステランティス傘下となったプジョー、シトロエンなど世界に通じるメーカー・ブランドが籍を置く。自動車業界では独特の存在感を発揮している印象だ。


メーカー・ブランドを見る限り自動車大国の一角であることは間違いなく、2020年の新車登録・販売台数は約210万台で世界6位、自動車生産台数は約130万台で世界13位となっている。

自動運転開発は消極的?

一方、自動車メーカーにおける自動運転開発に目を移すと、ルノーやプジョーといったグローバル企業の存在感は非常に薄い。それぞれ自社開発を進めているものの、実装レベルはADAS自動運転レベル2にとどまり、ハンズオフ機能搭載の話題も特に聞こえてこない。

ルノーは提携先の日産頼みだ。プジョーが属するステランティスは、欧州の「L3Pilotプロジェクト」における実証などを行っており、2024年からレベル3の市場投入を開始する計画だが、BMWやWaymoといったテクノロジーパートナーの存在が今後大きくなりそうな印象だ。

つまり、自動車大国の一角にしては、各メーカーにおける先進分野の開発が意欲的に進められていないのだ。もちろん、内々の開発状況をあまり表に出していないだけかもしれないが、日本勢や米国勢、ドイツ勢、中国勢などと比較すれば、その意欲に温度差を感じる。


【参考】ステランティスの取り組みについては「ステランティス、2024年にレベル3自動運転車を展開へ」も参照。

新興勢が自動運転分野をけん引

自動運転分野における自動車メーカーの動きが活発に感じられないフランスだが、各メーカーに代わって気勢をあげているのが新興勢だ。特にNavyaとEasyMileは、世界の自動運転シャトル市場をリードするほどの活躍を見せている。

この2社だけで、自動運転分野におけるフランスの存在感を高めているといっても過言ではないだろう。以下、2社の取り組みに触れていく。

■NavyaとEasyMileの取り組み
自動運転初期をリード

NavyaとEasyMileは共通事項が多い。ともに2014年に創業し、低速の自律走行を行う小型のボックスタイプの自動運転車の開発を進めている。車体は全長4メートル台×幅2メートルほどで乗用車とほぼ変わらないサイズ感で、10~15人ほどの乗客を乗せて時速20キロほどで走行する。

取り回しやすいボディサイズと低速走行、そしてあらかじめ決まったルートを走行するバスやシャトルサービスに特化した運行形態は安全を確保しやすく、自動運転の初期実装時にもってこいだ。自動運転黎明期において、非常に理にかなった開発戦略と言える。

この戦略が見事にはまり、両社の自動運転モデルは日本をはじめとする世界各地で実証やサービス実装に広く活用されるようになった。

また、こうした小型ボックスタイプは、自動運転シャトルやバスの主流となりつつある。トヨタの「e-Palette(イーパレット)」やGM・Cruiseホンダ陣営の「Origin(オリジン)」など、後続組の自動運転モデルも形状が類似しているのだ。

Navyaなどのモデルを各社が模倣したわけではないと思うが、先行する両社の車両が1つのモデルケースとなったのは間違いないだろう。その上で各社が同様の形状の車両を開発したということは、自動運転初期におけるモデルとしていち早く正解を導き出した――とも言えそうだ。

Navya:日本でもおなじみのARMAを開発
Navyaの自動運転シャトル=出典:Navya公式サイト

Navyaは、自動運転EV(電気自動車)シャトルARMAと改良型のEVOを主力にビジネス展開を拡大している。ARMAは最大乗車定員15人で、時速25キロで走行できる。1回の充電で約9時間、航続距離は100キロメートルとなっている。

LiDARやカメラを軸としたセンサー構成で、あらかじめ作製した地図情報をベースに自動運転を行う。EVOは、基本スペックはARMAとほぼ同様だが、センサーをはじめとした自動運転システムが強化されており、より精度の高いレベル4走行が可能になるようだ。

自動運転シャトルの出荷台数は、2022年10月時点で前年同期比9%増の累計208台に達した。2022年中にもサウジアラビアやポルトガルなど世界各地で導入に向けた取り組みが進んでいるようだ。また、EVバスメーカーの仏BlueBusと、全長6メートルのバスにNavyaの自動運転システムを統合する取り組みなども進めている。

日本では、国内総代理店を務めるマクニカや、ソフトバンクグループのBOLDLYなどが積極的に導入を図っている。

各地の実証をはじめ、茨城県境町や北海道上士幌町では混在交通下の車道を走行する路線バスとして導入が始まっている。現状はオペレーターが同乗し実質レベル2の状態で運行しているが、改正道路交通法が施行される2023年度以降、早い段階で無人運転を実現するレベル4実装に着手するものと思われる。

国内初の混在交通下におけるレベル4実装となるか、要注目だ。

▼Navya公式サイト
https://www.navya.tech/en/

EasyMile:世界の300エリア以上で走行実績
EasyMileの自動運転シャトル=出典:EasyMile公式サイト

EasyMileは、自動運転シャトル「EZ10」を商品化している。ARMAより少しだけ車体が小さく12人乗りとなっているが、その他のスペックはほぼ同一だ。2021年時点で180台以上の納入実績を誇り、世界30カ国以上、300以上のエリアで走行し、延べ50万人以上を運んだという。

2022年には、ドイツやベルギーなどで継続運行に向けた新たな取り組みがスタートしている。フランス国内でも2021年に混合交通下での無人走行に向けた認可を取得している。

日本では、2016年にDeNAと業務提携を交わし、私有地などにおいて「Robot Shuttle(ロボットシャトル)」として実証などを行っている。また、国土交通省が実施する「中山間地域における道の駅を拠点とした自動運転サービス」においても活用されている。

▼EasyMile公式サイト
https://easymile.com/

【参考】EasyMileの取り組みについては「世界シェア60%!?自動運転シャトル開発の仏EasyMile、資金増強」も参照。

■自動運転シャトルの開発企業
開発各社がNavyaやEasyMileを猛追

国内では、トヨタのe-Paletteがシャトルサービスをはじめとした多用途サービス向けに開発が進められているほか、ヤマハ発動機のゴルフカーをベースにした自動運転車も実用化が進んでいる。

ヤマハ発動機製の自動運転車は、磁気マーカーを活用した電磁誘導式で安定した自律走行を実現している。ゴルフカーベースのため低速かつ非常にコンパクトで、自動運転初期にもってこいの1台だ。福井県永平寺町や沖縄県北谷町では、すでに運転席無人の遠隔監視・操作式のレベル3運行を実現している。

【参考】ヤマハ発動機製の自動運転車については「誘導線を使う自動運転レベル3で移動サービス!福井県永平寺町でスタート」も参照。

米国では、トヨタが出資するMay Mobilityや、3Dプリントを活用したLocal Motors、COAST Autonomousといった新興勢が開発を進めている。インテル傘下のMobileyeも2024年に自動運転シャトルの運行を計画しているほか、独サプライヤーのZFも今後数年以内に数千台規模のレベル4シャトルバスを北米向けに展開していく構えだ。

【参考】May Mobilityの取り組みについては「トヨタの自動運転用シエナ、初の商業利用か!米May Mobilityが発表」も参照。

中国では、Baidu(百度)のアポロプロジェクトのもと金龍客車が自動運転ミニバス「Apolong」を量産化しているほか、自動運転タクシーの開発を主体とするWeRideも最高時速40キロの「WeRuanMinibus」を製品化している。

このほか、エストニアのAuve Techが開発する自動運転EVシャトル「MiCa」は、BOLDLYとの提携のもと日本国内に導入される見通しだ。

【参考】MiCaについては「BOLDLY、エストニア製自動運転バス「MiCa」展開へ」も参照。

■【まとめ】NavyaやEasyMile、日本展開にも要注目

自動運転のパイオニアとして知られる米Waymoが自動運転タクシーのパイロットプログラムに着手したのは2017年だ。しかし、NavyaやEasyMileはこれよりも早くグローバル展開を推し進め、各地で実証などに導入されてきた。こうした実績を踏まえると、自動運転分野における両社の評価は非常に高いものとなる。

いち早く自動運転実装に力を注いできた両社は、Waymoとは別の角度で自動運転時代の礎を築いた存在と言える。

日本でもなじみ深いARMAなどは、まもなく本格的な無人走行を実現する見込みで、国内でも存在感をさらに強めるものと思われる。境町など先行する自治体の今後の動向をはじめ、新たな導入例などにも注目していきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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