世界シェア60%!?自動運転シャトル開発の仏EasyMile、資金増強

世界300カ所以上の走行実績、大学に照準



EasyMileの自動運転シャトル「EZ10」=出典:EasyMile公式サイト

自動運転シャトルの開発を手掛ける仏スタートアップのEasyMileは2021年4月、5,500万ユーロ(約72億円)のシリーズB資金調達ラウンドを終了したと発表した。

自動運転シャトルの開発では仏Navyaが有名だが、EasyMileも負けず劣らず積極的に世界展開を図っている。この記事では、同社の取り組みについて解説していく。







■EasyMileの概要
300カ所以上に渡る走行実績

EasyMileは2014年創業のスタートアップで、主に自動運転シャトルや電動の自動牽引トラクターの開発を手掛けている。仏トゥールーズ、独ベルリン、米デンバー、シンガポール、オーストラリアのアデレードに拠点を設け広く世界展開を図っており、これまでに実証を含め30カ国以上、300以上のエリアの総延長80万キロで自動運転車を走行させている。

同社によると、自動運転シャトルにおいて世界シェアの60%にあたる180台の以上の車を展開しているという。

自動運転シャトル「EZ10」は「4,050ミリ×1,892ミリ×2,871ミリ」の箱型で、最大12人が乗車することができる。運転席のない自動運転モデルで、最高時速40キロで走行することができる。2015年に登場し、スイス連邦工科大学ローザンヌ校の構内で走行を開始した。

日本でも2016年にDeNAと業務提携し、私有地における無人運転バスを使用した交通システム「Robot Shuttle(ロボットシャトル)」の運用を行っているほか、国土交通省が実施する「中山間地域における道の駅を拠点とした自動運転サービス」においても活用されている。

コンチネンタルらが出資

投資家には、航空機地上支援機材を取り扱う仏TLDや鉄道車両メーカーの仏Alstom、自動車部品大手の独コンチネンタルなどが名を連ねている。今回のBラウンドはSearchlight Capital Partnersが主導しており、コンチネンタルなど初期投資家もすべて再出資したようだ。

今回の資金調達により、同社は製品と技術のロードマップの完成を促進し、国際的な展開拡大とクライアントサービスを加速させていくとしている。報道によると、閉鎖空間であるキャンパス内での商用展開を推進し、事業を拡大していく方針のようだ。

これまでの取り組み

2019年6月には、Transdev Canadaと共同でEZ10を活用した移動サービスをモントリオール中心部の公道で約2カ月間にわたり実施した。同年10月には、ドイツのバイエルンでも公道パイロットプログラムに着手している。

同年12月には、ラテンアメリカ初の公共交通機関用自動運転車としてEZ10がチリのサンディアゴで運行を開始したほか、サウジアラビア初の自動運転サービスをキングアブドゥッラー科学技術大学(KAUST)で開始したことなども発表している。

新型コロナウイルスの感染拡大が続いていた2020年6月には、米コロラド州でEZ10を活用し食料品を配送する実証実験を開始している。

同年12月には、EdisonFuture子会社の米EV(電気自動車)開発メーカーのPhoenix Motorcarsとパートナーシップを交わし、ゼロエミッショントラックと自律シャトルバスを配備すると発表した。フェニックスのEVシャトルバスやトラックにEasyMileの自動運転ソフトウェアを統合する計画のようだ。

2021年3月には、韓国の自動運転・MaaSプロバイダーであるSpringCloudとの提携のもと、ソウル科学技術大学のキャンパスでEZ10無人乗用車シャトル「Springcar」の運行を開始したことを発表している。

このほかにも、ラトビアやノルウェー、オーストラリアなど、さまざまな地域で実証やサービス展開を進めている。近年では公道での実用化を見越した取り組みも進んでいるほか、自社の自動運転システムをソリューションとして提供する展開も図っている印象だ。

■競争激化する自動運転シャトル開発

自動運転シャトルの開発領域では、仏NAVYAの「ARMA」やトヨタの「e-Palette」あたりが直接競合することになりそうだ。3社とも汎用性が高いボックスタイプの形状で、シャトルバス以外の用途にも活用可能なポテンシャルを有している。

特にNAVYAとは創業時期や国、自動運転シャトルバスや牽引車といったソリューションの展開などがことごとく類似している。

自動運転シャトルやミニバスタイプはこのほか、米May Mobilityや中国のWeRide、QCraft、百度などがそれぞれ開発を進めている。また、米GM CruiseやZooxなどが開発する自動運転車両も、従来の自動車とは異なる構造で運転席などを備えておらず、タクシーやシャトルサービス用途で使用される可能性が高そうだ。

世界的な自動運転サービスは、米Waymoの影響か自動運転タクシーが先行しているイメージが強いが、シャトルバスは比較的小さなボディで定路線を低~中速で走行するため、リスクとなる不確定要素を排除しやすく安全を確保しやすい。

世界全体を通してみると、こうした自動運転シャトルサービスの実用化を先に進める向きが強い。日本でも、茨城県境町で導入されている「NAVYA ARMA」や、福井県吉田郡永平寺町でサービスが始まった「ZEN drive Pilot」搭載車両など、低速・定路線サービスが先行している。

■【まとめ】自動運転シャトル実用化に向けた動きが本格化

世界的に見ると、自動運転の実用化で先行する米国や中国はある意味規制面で例外と言える環境にあり、日本や欧州各国のように、石橋をたたいてしばらく観察してからでないと渡らない国は多い。

その意味では、自動運転シャトルは自動運転タクシーよりも実用化面で優位に立つ。安全を担保しやすく、制限区域におけるサービス化も図りやすい。

今後、こうした自動運転シャトルサービス実用化に向けた動きが世界各地で本格化し、公道デビューを果たす取り組みも続発する可能性が高い。その中の有力な一社として、EasyMileの動向に要注目だ。

【参考】関連記事としては「自動運転シャトル、e-Palette、Origin、ARMAの国内バトル勃発へ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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