自動運転タクシーの実用化が世界で加速!2022年2月の自動運転ラボ10大ニュース

AutoXが車両数1,000台突破



自動運転タクシーの実用化が大きく加速し始めたようだ。米国ではGM傘下のCruiseがサンフランシスコでサービスインし、中国ではAutoXが車両数1,000台を突破したと発表した。韓国でも自動運転タクシーの有料サービスが始まるようだ。


着実に拡大を続ける自動運転市場。右肩上がりを予感させる2022年2月の10大ニュースを1つずつおさらいしていこう。

Waymoから3年2カ月遅れ、GM Cruiseが自動運転タクシーの展開スタート(2022年2月7日付)

GM傘下のCruiseが、ついに自動運転タクシーをサービスインした。カリフォルニア州サンフランシスコで一般乗客を対象としたサービスを開始したのだ。

有償サービス提供は認可待ちで、それまでは無料でサービスを提供する。車両はGMブランドのシボレーボルトEV(電気自動車)をベースとしたもののようだ。

同州ではWaymoなども自動運転タクシーの実証を進めており、今後徐々にサービス競争が本格化していくものと思われる。


また、Cruiseはハンドルなどを備えない完全無人仕様の自動運転車「Origin」の商用化に向け、米運輸省道路交通安全局(NHTSA)に承認を求める請願書を提出したようだ。認可が下り次第、自動運転シャトルサービスなど多角的に進めていく可能性が考えられる。

Waymoを追いかける筆頭候補として早くから名前を挙げられつつも、安全性を重視してサービス化を遅らせてきた同社だが、攻勢に転じたここからが本当の勝負となる。Waymoをはじめとする同業他社との技術やサービス競争の行方に注目したい。

■Arm売却断念による上場案、孫氏「元々あった案、プランAだ」(2022年2月8日付)

ソフトバンクグループは2022年3月期第3四半期決算発表で、傘下の英アームを米NVIDIAに売却する計画を断念し、株式再上場を目指す方針であることを明らかにした。

アームはもともとロンドン証券取引所と米ナスダック市場に上場していたが、2016年のソフトバンクグループによる買収時に上場廃止していた。2020年に同業NVIDIAが全株式を4.2兆円で買収する計画が発表されたが、各国の公正取引委員会などが独占への懸念を示し、買収の承認が降りなかったようだ。

再上場案を明かした孫正義氏は、これが売却断念による代替案ではないことを強調し、「半導体業界史上最大の上場を目指す」とした。

インテルやサムスン、TSMC、SKなど強豪がひしめく半導体業界だが、産業界からの高い需要はまだまだ続く。技術革新に伴う高性能化がカギを握る同業界において、アームがどのように存在感を発揮していくか、要注目だ。

■ルミナーCEO「我々の株価はこの1年の勝利を反映していない」 自動運転向けLiDARを開発(2022年2月10日付)

2020年12月に株式上場を果たした米Luminar TechnologiesのAustin Russell(オースティン・ラッセル) CEO(最高経営責任者)が、自社株を購入したようだ。

報道によると、ラッセルCEOは「われわれの株価は、過去1年間の勝利と成功を反映していない」と考えているという。企業価値に対し相対的に株価が低いとする見方だ。

コロナ禍の景気対策の影響などにより、企業業績が正常に評価され、それが株価に反映される環境にはなかったかもしれないが、S&P500指数と比較しても株式市場における同社の苦戦は明らかなようだ。

OEMなどとの契約は順調に進んでおり、今後レベル3の自家用車やレベル4の自動運転車、宅配ロボットなどが普及を迎えることを加味すれば、今が「買い」に思われる。しかし、多くの投資家はそのように判断していないということなのか。

自動運転関連銘柄は年々増加しているが、多くはLuminar同様伸び悩んでいる印象だ。今後、どのような経過をたどっていくのか。株式市場の動向にもしっかりと目を向けておきたい。

■自動運転と中国の一帯一路、無人トラックが超広域物流で活躍(2022年2月11日付)

ユーラシア大陸を陸路・海路で横断・網羅する中国主導の一大プロジェクト「一帯一路」において、自動運転技術が将来重宝するのでは――といった主旨の記事だ。

陸では鉄道の自動運転化をはじめ、長距離輸送の負担を軽減するトラックの自動運転化などに期待が寄せられる。海路では、自動運航船の開発が進められている。

中国系企業による自動運転トラックの開発は、すでに頭角を現しているPlusやTuSimpleをはじめ、Inceptio、Trunk Tech、FABUなど裾野は大きく広がっているようだ。ステルス状態のスタートアップも相当数に上るものと思われ、今後も続々と水面から顔を出す企業が増えていくことが予想される。

空路、海路主体の日本も、この一帯一路を活用することで欧州などとの取引における輸送コストを低減することが可能になる。自動運転ならばなおさらだ。ラストマイルはもちろん、グローバルなモノの輸送においても、将来自動運転技術が大きく貢献することになりそうだ。

■AutoXの自動運転タクシー、1,000台突破 「世界最多」との報道も(2022年2月14日付)

中国スタートアップのAutoXが、自社の自動運転タクシーフリートが1,000台を超えたと発表した。急成長する自動運転市場を象徴するかのような数字だ。

AutoXは現在、深セン、上海、広州、北京とサンフランシスコの5都市で自動運転タクシーの実証やサービスを行っているという。こうした多都市展開が多くの車両を実働させる決め手になるとともに、さまざまな車体プラットフォームに自動運転システムを統合可能にする技術がポイントとなりそうだ。

世界では、Waymoや百度なども多くの自動運転車両を保有しているものと思われる。今後急伸が予測されるのは、モービルアイ勢とGM Cruise、Argo AIなどだ。

世界各国の法規制が徐々にレベル4に対応し始める今後、自動運転市場は急速な伸びを見せる可能性が高い。各社の動向に要注目だ。

■1乗車約200円!韓国でも有料の自動運転タクシー登場(2022年2月15日付)

韓国の首都ソウルでも自動運転タクシーの有料サービス実証が始まったようだ。ソウル市は昨年末からサンアムドン(上岩洞)でサービス実証を本格化しており、自動運転の社会実装を大きく加速させている印象だ。

ソウル市は2021年11月末から、乗用車型の自動運転車3台を導入し駅やオフィス街などでタクシーサービスを開始したほか、12月末までに自動運転バスなどを順次追加し、計6台体制にすると発表していた。

自動運転車を提供する開発企業の全容は不明だが、同国スタートアップの42dotがいち早く限定ライセンスを取得し、12月末まで3台の自動運転タクシーを無償運行すると発表している。セーフティドライバーが同乗し、子ども保護区域では手動運行を行っているようだ。最新の発表によると、導入した4台の自動運転タクシーを1乗車2,000ウォン(約200円)で有料運行するという。

自動運転サービスは、独走する米国を中国が猛追しトップ争いを繰り広げているが、これに続く第2集団が判然としていない。2022年は、この第2集団に名乗りを上げるべく各国の取り組みが加速する年になりそうだ。

■カリフォルニアでの自動運転走行、企業別距離ランキング(2022年2月16日付)

米カリフォルニア州車両管理局(DMV)がこのほど、同州で行われている自動運転公道実証の最新情報を発表した。2020年12月から2021年11月までの1年間で、26社が総計660万キロメートルを走行したようだ。

660万キロメートルは、地球約165周に相当する。または、青森県から山口県に至る本州(約1,500キロメートル)を約2,200回往復する距離だ。

660万キロメートルのうち、57%にあたる374万キロメートルをWaymoが占めており、前年の2位から再度1位に返り咲いた。Waymoはアリゾナ州に次いでカリフォルニア州でも自動運転タクシーサービスを開始する計画で、サービスインに向け実証を本格化させた印象だ。

DMVはこのほか、実証中の手動介入状況や事故などについても各社に報告を義務付けている。こうした情報開示は、各社の取り組み状況を知るだけでなく、社会受容性の向上などにもつながっていく。

日本でも、明確な公道実証制度のもと、こうした情報を取りまとめて開示を進めてみてはどうだろうか。どの企業が実証に力を入れているのか、またどのエリアで実証が盛んに行われているのかなど、各企業や自治体などの取り組みを前面に出すことで、自動運転に対する社会の関心を高め、ひいては受容性向上につながっていくのではないだろうか。

■親和性抜群!自動運転×デジタルツイン、仮想の現実世界で自由に実証(2022年2月17日付)

現実の物理空間における環境をデジタルで仮想的に再現するデジタルツインが、自動運転分野においても注目を集めているようだ。

自動車の製造工程や都市空間など、あらゆる環境・モノをコンピューター上で再現することで、開発から製造、実証、そして実用化に至るさまざまな場面で事業を効率的かつ効果的なものへと変えていくことが期待される。

多くの自動運転システムで活用される高精度3次元地図は言わばバーチャル空間だ。また、自動運転においては物体検知などの技術向上のため、開発時はもちろん実用化後もシミュレーションを積み重ねていくことが求められる。さらには、IoT技術でさまざまな情報を連携させ、安全性や利便性を向上させていくことも重要となる。

こうしたさまざまな場面でデジタルツイン技術は有用となる。何をどこまで再現できるか、そしてリアルの事象とどのように結び付けることができるかなど、まだまだ発展・応用が可能な技術領域であり、スマートシティをはじめとした取り組みにおいても主要技術となっていく可能性が高い。

デジタルツイン技術が世の中にどのように活用されていくか、要注目だ。

■インテル傘下Mobileye、北米で2024年に自動運転シャトル投入へ(2022年2月18日付)

自家用車向けレベル4の開発など攻勢を続けるモービルアイが、また1つ新たな計画を発表した。2024年にも米国でレベル4のオンデマンド型配車サービスを展開することを明らかにしたのだ。

モービルアイと独BENTELER EV Systems、米Beepが提携し、自動運転車両の開発や製造、運用管理システムの開発などを進めていく。詳細は明かされていないものの、トヨタe-PaletteやCruiseのOriginのようなシャトルバスタイプのボディで、ラストワンマイルの移動に導入していく方針のようだ。

モービルアイは自社開発した自動運転システム「Mobileye Drive」を広く社会実装するため、世界各地のメーカーやサービス事業者とのパートナーシップを一気に加速している印象だ。米国以外にもドイツやドバイ、日本をはじめとしたアジア諸国などへの導入を計画しており、今後の動向に要注目だ。

■「学生×ポイント制」ライドシェア登場!規制にめげず実証実験(2022年2月21日付)

山梨県都留市で興味深い実証が始まったようだ。MaaS関連サービスなどを手掛けるPathfinderと同市でまちづくりを行う一般社団法人まちのtoolboxが、独自の「ライドポイント」を活用した学生向けライドシェアサービスの実証を行っている。

国内では営利目的のライドシェアは禁止されているが、学生限定の循環型ライドシェアとしてポイントを活用する。ポイントは定期配布またはドライバーになることで獲得でき、そのポイントを活用してライドシェアや学生が格安で利用できる予約型カーシェアサービス「ローカライド」を利用することができる。

地方においては、住民の生活の足となる公共交通的役割でライドシェアを実証する動きが徐々に広がっているが、「お金」ではなくこうしたポイント制や「地域通貨」を導入し、エリア内の店舗などでも使用できるようにすれば、経済活性化にもつなげることができるかもしれない。

■【まとめ】自動運転サービスの新規参入はまだまだ続く

自動運転タクシーやバスの実用化は加速の一途をたどっており、2022年中に新たにローンチする企業もまだまだ出てきそうな勢いだ。

国内では、山梨県都留市でライドシェアに関する新たな取り組みがスタートした。ポイント制の発想を応用すれば、有償サービスを回避しつつライドシェアを社会実装する道が大きく開けるかもしれない。モビリティサービスも、アイデア次第でまだまだ進化の余地があるということだ。

自動運転をはじめ、各種モビリティサービスの発展に引き続き注目していきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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