【2021年1月分】自動運転・MaaS・AIの最新ニュースまとめ

モービルアイが日本で自動運転サービスに参戦!?



2021年が幕を開けた。新型コロナウイルスの影響で年初の世界最大の技術見本市「CES 2021」がオンライン開催になるなど依然コロナ禍は続いているが、自動運転業界は開発スピードを緩めることなく技術の社会実装に向けた動きを加速しているようだ。


2021年1月の10大ニュースをおさらいし、新年の業界の動向に迫っていこう。

■楽天・三木谷氏が狙う「超ドル箱ビジネス」!自動運転ロボ配送、実証実験次々(2021年1月1日付)

国内EC最大手の楽天がロボットやドローンを活用した無人配送の実証に力を入れている。2020年12月から神奈川県横須賀市で自動配送ロボットの公道実証を進めている。

同社は2016年にドローンによるデリバリープロジェクトを開始したほか、2019年にロボット配送プロジェクトにも着手し、これまでに千葉大学や横須賀市、長野県内のリゾート施設などで実証を行ってきた。

横須賀市とは包括連携協定を締結し、自動配送ロボットやドローンによる無人配送で地域の課題解決を目指す取り組みを進めており、今回の実証では、配送エリアから約5キロ離れた地点からロボットを遠隔監視し、公道を安全に自動走行できることを実証する。ロボットはこれまで中国京東集団製のものを使用していたが、今回はパナソニック製の最新ロボットを活用している。


国も配送ロボットの社会実装に向け本腰を入れており、楽天に大きな追い風が吹き始めているようだ。

■自動運転向けAIチップ開発のHorizon、2021年中に上場へ(2021年1月4日付)

AI(人工知能)チップ開発を手掛ける中国Horizon Roboticsがこのほど、資金調達Cラウンドで1.5億ドルを調達したようだ。同ラウンドでは総額7億ドルを目標に据えている。2021年中にIPO(新規株式公開)を目指す動きなども報じられており、インテルやNVIDIAなど半導体業界に強力なライバルが出現することになるかもしれない。

同社はAI技術を活用したBPU(Brain Processing Unit)を2017年に開発し、これまでに第3世代まで進化を果たしている。中国自動車メーカーChery(奇瑞汽車)のレベル2+車両などに採用されているほか、2020年10月には独コンチネンタルと中国市場向けの自動運転開発でパートナーシップを結ぶなど、着々と業界における地位を向上させているようだ。

2021年はLiDARやEV(電気自動車)メーカーを中心にIPOを目指す動きがすでに出ているが、同社の動向にも注目だ。

■経産省「空飛ぶクルマ」の先導研究などで予算計上 総額40億円、2021年度に(2021年1月6日付)

経産省の2021年度予算案の中で、「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」への概算要求が40億円であることが分かった。

前年度に引き続き、ロボットやドローンの社会実装を世界に先駆けて進めるための技術開発などを進めるほか、新たに「空飛ぶクルマ」を活用した社会の実現に向け、運航技術の開発や安全システムの開発に向け先導調査研究を行うこととしている。

空の移動革命に向けたロードマップによると、空飛ぶクルマは2020年代半ば、早ければ2023年にモノの移動から事業化し、2030年代にかけて地方における人の移動、都市における人の移動へと実用化域の拡大を図っていく方針だ。

2021年もモノ、人の移動ともに実証がいっそう加速するものと思われる。各開発企業の取り組みに要注目だ。

■日本初!大型自動運転バス実証実験、通常の路線バスと同じ形態で(2021年1月8日付)

群馬大学などが、大型自動運転バスの実証を埼玉県飯能市で2021年2月に実施することを発表した。営業運行している路線バスと同じ運行形態での大型バス実証は国内初という。

実証メンバーは同大のほか、西武バス、日本モビリティ、あいおいニッセイ同和損害保険、MS&ADインターリスク総研。遠隔監視システムを活用し、西武池袋線飯能駅南口から美杉台ニュータウンまでの片道約2.5キロのコースを予定している。

車体が大きく重い大型バスの自動運転化はハードルが高いが、実現すれば自動運転業界において大きな前進となるだけに、実証の成果に期待したい。

■経営統合でCASE領域リード!「日立Astemo」設立、自動運転開発も加速か(2021年1月11日付)

CASE(C=コネクテッド、A=自動運転、S=シェアリング・サービス、E=電動化)をけん引するグローバルリーダーを目指し、自動車部品メーカーらの大型統合が実現した。日立オートモティブシステムズとホンダ系のケーヒン、ショーワ、日信工業が経営統合し、日立Astemoとして新たなスタートを切った。

新会社は日立が3分の2、ホンダが3分の1の株式を保有する。統合4社の強みを生かして相乗効果を創出していくとともに、EVや自動運転、先進シャシー、次世代モーターなどの成長分野へのシフトを進め、CASE時代に対応していく方針だ。

日立製作所、ホンダという大きなバックボーンを持ちつつ、トヨタ日産、スバル、マツダ、フォルクスワーゲン、ダイムラー、フォードなど世界の自動車メーカーとのつながりをどのように強化していくか。徐々に真価を発揮し、グローバルポジションを高めていくことに期待したい。

■日産、2025年に向け「次世代AD(自動運転)」開発!求人情報から判明(2021年1月12日付)

日産の求人情報から、同社の自動運転ロードマップを垣間見る趣旨の記事だ。同社が募集中の「次世代自動運転システム開発エンジニア」の職務内容に「2025年に向けた次世代ADの開発業務」とあることから、2025年をめどとする自動運転開発計画があるのでは?-とみる内容だ。

日産は2019年、国内メーカーで初となるハンズフリー走行が可能な高度レベル2を市販化するなど、最新技術の実装に意欲的だ。今後、2020年代前半にはレベル3を可能にする「プロパイロット3.0(仮)」や、DeNAと取り組む自動運転サービスの実用化などにも期待が持たれるところだ。

憶測となるが、「2025年」という時期を考慮するとレベル4相当の技術が想定される。EV化やADASの標準搭載とともに商品ラインアップの効率化を図り、着々と事業構造改革を進める日産。自動運転分野においても、次の一手に注目したい。

Teslaの株価8倍を上回る「13倍」のNIO、新EV発表!自動運転センサー搭載(2021年1月12日付)

中国のEVメーカーNIOがこのほど、高性能セダン「ET7」を発表した。航続距離1000キロ超を誇る新型EVとして2022年の市場化を目指す。

最大出力は480kWで、時速100キロまで3.9秒で到達するパワーを備える。新しい150kWhのバッテリーを組み合わせることで航続距離1,000キロを達成可能という。

エクステリアは自動運転用に設計されており、搭載するLiDARやカメラなどを違和感なくデザインに落とし込んでいる。各種センサーで360度センシングを実現する「NIO Aquila Super Sensing」など冗長性のあるシステムを搭載予定だ。

自動運転レベルなど具体的な性能は公開されていないが、レベル2+、あるいはレベル3相当の技術が搭載される可能性が高そうだ。

同社の株価は2020年の1年間で13倍に跳ね上がったが、ET7の動向次第で2021年もさらに過熱していくのかもしれない。

■インテル傘下Mobileye、東京で自動運転実証を数カ月以内に実施へ(2021年1月14日付)

自動運転開発を手掛けるモービルアイが、少なくとも世界4都市で2021年中に自動運転の実証を進めることが明らかになった。CES 2021で同社CEOのアムノン・シャシュア氏が発表した。

4都市はデトロイト、東京、上海、パリで、許可が下りればニューヨークでも実施する方針。インテルグループは自動運転タクシーの世界展開を目指しており、その布石となる可能性が高そうだ。

日本やアジアにおいては、2020年7月にWILLERとロボタクシーソリューションの展開に向け戦略的パートナーシップを結んでおり、2021年に公道実証を開始し、2023年に完全自動運転のロボタクシーや自動運転シャトルのサービス開始を目指すとしている。

同社はこれまで独自のマッピングシステム「REM」やカメラを主体とした自動運転システム開発を進めてきたが、CES2021ではミリ波レーダーやLiDARの開発に言及するなど、より高度なシステム構築を目指す動きを鮮明にしている。

世界の名だたる自動車メーカーが認める同社の自動運転技術がどのように展開されていくのか、要注目だ。

■自動運転視野のソニーVISION-S、公道実証開始!AImotiveと協力も(2021年1月19日付)

ソニーがCES2021で「VISION-S」の開発進捗状況を公開した。世界の名だたるサプライヤーがこぞってプロジェクトに参画し、公道実証も本格化したようだ。

VISION-Sは、次世代の自動車を見つめ直す目的でソニーが一から作り上げたプロトタイプで、CES 2020で初公開された。マグナ・シュタイヤーやボッシュ、コンチネンタルといったサプライヤーをはじめ、自動運転分野においてはハンガリーのAImotiveが協力している。

イメージセンサーに代表されるセンシング分野での活躍が見込まれるソニーだが、次世代の自動車業界に向け、VISION-Sの開発を通じてどのようなアプローチを仕掛けてくるのか。今後の展開に注目だ。

■トヨタ出資のライドシェア大手Grab、2021年中に米国で上場か(2021年1月22日付)

シンガポールの配車サービス大手Grabが年内にも米国の株式市場へ上場を検討しているという。ロイター通信が複数の関係者筋の話として報じた。

同社はこれまでにトヨタやソフトバンク、ホンダ、三菱UFJフィナンシャル・グループなど日本企業を含む各社から投資を受けている。企業評価額は160億ドルを超え、デカコーンに成長している。

事業の主力は、東南アジア各国で展開するライドシェアやデリバリーなどの配車サービスだが、近年は金融業やベンチャー企業への投資・育成などにも力を入れており、事業多角化によって経営基盤の強化を図っている印象だ。

資金調達はすでにシリーズHラウンド(2019年)に至っており、上場を予測する投資家も多い。本年中の公式発表に期待したい。

■【まとめ】2021年も新規上場相次ぐ1年に、国内では実証加速

2021年も世界各地で自動運転関連企業の上場が相次ぎ、株式市場を賑わせることになりそうだ。国内では、自動運転大型バスや配送ロボット、空飛ぶクルマなど、自動運転技術の実証もどんどん多様化している印象が強い。

また、モービルアイに代表される海外企業の実証も本格的にスタートする見込みだが、これは見方を変えれば日本の公道実証環境やモビリティ市場が認められた証と言える。国内開発企業にとっては強力なライバルとなりそうだが、業界全体の動向としてしっかり注目していきたいところだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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