【2020年12月分】自動運転・MaaS・AIの最新ニュースまとめ

レベル4本格化の兆し、公道実証つぎつぎと



2020年もそろそろ終わる。新型コロナウイルスの影響で春先は自動車メーカー各社の業績に大きな影を落としたものの後半には持ち直し、2021年に向けた取り組みは再度加速しているようだ。


自動運転業界も米国・中国を中心に翌年に期待をつなぐ前向きな話題が出揃い、師走を締めくくってくれた。2020年12月の10大ニュースを1つずつ振り返っていこう。

■BMWが新境地開拓!「自動運転物流ロボット」市場に参入(2020年12月4日付)

BMWが物流分野の自動化事業に本格着手した。子会社「IDEALworks」を設立し、物流最適化に向け倉庫内作業をオートメーション化するソリューションの提供を行っている。

同社による物流分野への挑戦は2015年にスタートし、社内製品として工場内でコンテナを運ぶスマート輸送ロボット(SMR)を開発した。その後も開発を継続し、ついに市場投入する次のステップにたどり着いたようだ。

ファクトリーオートメーションに向けたソリューションの提供が主軸となるが、将来的に物流におけるファーストマイルからラストマイルまでを担う自動運転トラックや配送ロボットの開発まで事業が派生する可能性も考えられる。


自動車メーカーとしての強みを発揮し、物流をトータルで無人化・自動運転化する取り組みにも期待したいところだ。

■AutoXの自動運転タクシー、深圳で「安全要員なし」で!交通当局が許可(2020年12月5日付)

自動運転開発を手掛ける中国スタートアップのAutoXが、中国初となるドライバーレスの自動運転タクシーの公道走行を開始した。

同社は中国の上海、深圳、武漢と米カリフォルニア州で実証を進めており、このほど中国の交通当局から許可を得て、深圳で無人による自動運転タクシーを25台導入し、トライアル形式でサービスを提供し始めたようだ。

百度も湖南省長沙市や北京市でドライバーレスの自動運転車による公道実証許可を得ており、無人サービス提供に向けた取り組みを加速させている印象だ。

なお、タクシーサービス形式ではないもののWeRideも7月に広州市で無人遠隔制御による公道試験許可を得ている。ここ数年で大きく加速した自動運転タクシーの開発・実用化競争は、ドライバーレスという次のステージに突入したようだ。

LiDAR企業のLuminar上場!株価急上昇、自動運転の「目」を開発(2020年12月9日付)

LiDAR開発を手掛けるスタートアップの代表格・米Luminar Technologiesがナスダック市場に上場した。スタートアップではないが、LiDAR開発大手のVelodyne Lidarも2020年に上場を果たしており、自動運転技術の社会実装本格化を反映するような形で市場が盛り上がっている。

世界では、2021年にかけてレベル3レベル4の実用化が加速し、社会に多くの自動運転車が投入される見通しだ。これら自動運転車の大半に搭載されるLiDARも開発段階から実装段階に移行し、さらなる開発と量産化に向けた取り組みが加速しているのだ。

スタートアップをはじめ、電子機器メーカーや部品メーカー大手なども軒並みLiDAR開発に注力しており、今後しばらくの間LiDAR市場が右肩上がりを続けることは間違いなさそうだ。

■自動運転、Uberは後退、Appleは前進?(2020年12月15日付)

ついにアップルの自動運転開発の全貌が明らかになるかもしれない。「Apple Car」向けのチップ開発において台湾のTSMC(台湾積体電路製造)が協力していることを台湾メディアがすっぱ抜いたのだ。

報道によると、両社はApple Carに搭載するチップの製造工場をアメリカに建設予定という。報道合戦は過熱し、中には2021年9月にApple Carが発売される見込みと報じるメディアも出てきた。

当のアップルは依然沈黙を続けており、各種情報の真偽は不明だが、自動運転開発を前に進めていることだけは確かだ。グーグルと肩を並べるIT企業が自動運転分野に本格参入するとなれば、業界に及ぶ影響も計り知れない。

2021年に進捗に関する公式発表が出されるか、まずはその点に注目だ。

【参考】詳しくは「自動運転、Uberは後退、Appleは前進?」を参照。

■米Walmartがついに完全無人の自動運転配送!Gatik社と共同で2021年から(2020年12月17日付)

米小売大手のウォルマートが自動運転トラック開発を手掛ける米Gatikと協業し、ミドルマイル物流にドライバーレスの自動運転を2021年から導入すると発表した。

両社はすでに11万キロ以上の実証を重ねており、物流拠点から約3キロ離れた小型店舗までの商品搬送を無人で行う。将来的には、スーパーマーケットなどの小売拠点から注文客が商品を受け取るピックアップポイントまでの輸送にも導入する計画のようだ。

配送分野における自動運転技術の導入は、宅配ロボットに代表されるラストワンマイルが過熱しているが、こうしたミドルマイルへの導入は物流倉庫のオートメーション化と相乗効果を発揮し、効率的な配送を実現する。

米国ではWaymoやEmbark Trucksなど自動運転トラックの開発企業も多く、またクローガーやドミノ・ピザといった小売りや宅配チェーンも導入に前向きだ。今後、ウォルマートらの取り組みに追随する動きが出るのか、他社の動向にも注目が集まりそうだ。

■レベル3は「条件付自動運転車」!国が呼称決定、誤解防止で(2020年12月18日付)

国土交通省が自動運転レベル3以上の車両の呼称を公表した。消費者らの誤認を防止するためのもので、強制力はないものの自動車メーカー各社などが呼称を統一することで自動運転への共通理解を高めていく狙いだ。

レベル3は条件付自動運転車(限定領域)」、レベル4は「自動運転車(限定領域)」、レベル5は「完全自動運転車」と整理された。国内メーカーは今後この呼称に従う可能性が高いが、海外メーカーはそうとは限らない。

テスラの「オートパイロット」のように、現状はADAS(先進運転支援システム)ながら自動運転を想起させる名称もあり、海外でも波紋が広がっている。こうした呼称の使用においても今後国際的に議論を活発化させ、一定の統一ルールを設けるべきなのかもしれない。

■最高時速120km!Amazon傘下Zoox、攻めの自動運転タクシー用車両をお披露目(2020年12月19日付)

米アマゾン子会社のZooxが自社開発・生産を行う自動運転タクシーを発表した。ハンドルなどの制御装置を備えない本格自動運転仕様で、実用化に高い期待が寄せられる。

公式発表によると、ボディは全長3,630×高さ1,936ミリの箱型コンパクトサイズで、対面方式で4人が乗車できる。前後の区別がなく、両端に備えられたモーターでどちらの方向にも同じように走行することができる。最高時速120キロと高スペックで、使用するシーンによっては高速道路にも対応可能なつくりとなっていそうだ。

こうした箱型でハンドルなどを備えないモデルは、GM・Cruiseの「Origin」やトヨタの「e-Palette」などと共通する(e-Paletteは操作用ジョイスティックを格納)。近未来の自動運転移動サービスの主流となりそうだ。

なお、Zooxの自動運転サービスに関する具体的な計画は示されていない。親会社となったアマゾンの戦略とともに要注目だ。

■三井不動産、日本初のマンション住民向けMaaSサブスク!Whimを導入(2020年12月21日付)

モビリティ構想を進める三井不動産が、不動産×MaaSの取り組みを加速させている。2020年9月に実証を開始した柏の葉エリアに続き、12月から新たに日本橋エリアと豊洲エリアにおいても実証に着手する。

実証では、フィンランドのMaaS Globalが開発した「Whim」を使用し、カーシェア、シェアサイクル、バス、タクシーをサブスクリプションで利用可能にする。この点にも注目だ。

国内各地域で数多くのMaaS実証が行われており、MaaSアプリの開発も進んでいるが、Whimで実現を図るサブスクリプションの導入はMaaSレベル3に相当し、より高度な移動サービスを提供する形となる。

海外先進地から上陸したWhimが国内MaaSにどのような新風を吹き込むか。不動産×MaaSの取り組みとともに注目だ。

■車両開発は他社任せ!Lyft、Uberより先に自動運転タクシー提供か(2020年12月22日付)

米配車サービス大手のLyftとMotionalが2023年から完全自動運転タクシーサービスを開始すると発表した。

Lyftは2017年にレベル5開発プロジェクトを立ち上げ独自開発を進めるほか、Aptivとの協業のもと米ラスベガスなどでサービス実証を積み重ねている。

MotionalはAptivと韓国ヒュンダイが自動運転開発を目的に設立した合弁で、Lyftの配車ネットワークを活用して2023年に米国の複数の都市でドライバーレスの自動運転サービスを展開するという。

自社の配車ネットワークを自動運転開発企業に提供していく手法はある意味効率的だ。ライバルのUberが先ごろ自動運転開発部門ATGの売却を発表したが、今後こういったビジネスを導入することも考えられる。トヨタとの提携関係から、トヨタの自動運転システムがUberのプラットフォーム上で走行することも考えられそうだ。

■トヨタ自動運転車e-Palette、各地での運行へ自治体と既に議論中(2020年12月22日付)

トヨタがAutono-MaaS専用EV(電気自動車)「e-Palette」のオンライン発表会を開催し、社会実装に向け進化した姿を披露した。

今回の発表の目玉は、新たな運行管理システム「AMMS」や「e-TAP」だ。AMMSは「必要な時に、必要な場所へ、必要な台数だけ」e-Paletteを配車するシステムで、刻々と変化する移動ニーズに基づいて運行計画をフレキシブルに変更し、自動で車両を投入・回送するという。

一方、e-TAPは「e-Palette Task Assignment Platform」の略で、車両やスタッフの異常を見える化することで、運行管理センターが複数台を同時に監視することを可能にするという。ともに自動運転移動サービスなどの実用化に必須となるソフトウェア・プラットフォーム領域における進化だ。

また、e-Paletteの大きな特徴の1つとして、他社の自動運転システムを搭載可能な制御インターフェースを備えている点も挙げられる。柔軟に各社の自動運転システムを搭載可能なe-Paletteは、世界各地で実用実証が進む自動運転移動サービスのプラットフォームとして非常に有力だ。

独自の自動運転システムを開発する企業の多くはスタートアップであり、車両の生産やサービス提供に向けたシステム・プラットフォームは他社と協業するケースが多いが、e-Paletteはこうした需要を満たすことができるのだ。

海外企業との提携のもと、海外で一足早くe-Paletteの実用化が実現する可能性は高い。

■【まとめ】自動運転技術は着実に前進 2021年の動向にも期待

12月はドライバーレスの自動運転を実現する取り組みが目立つ印象で、2021年にはこうしたサービスの実装が拡大していくことになりそうだ。

2021年には、日本国内で東京オリンピック・パラリンピックが開催される予定で、改めて最先端の自動運転技術がお披露目される可能性がある。Woven Cityの着工やホンダのレベル3発売なども予定されており、すでに大きな話題となっている。

着実に前進する自動運転技術は、2021年にどのレベルまで到達するのか。期待を大きく膨らませながら新年を迎えたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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