レベル3は「条件付自動運転車」!国が呼称決定、誤解防止で

海外でも誤認問題が表面化



出典:国土交通省

国土交通省はこのほど、先進安全自動車(ASV)に関わる主要な技術の概要や自動運転関連用語の概説をはじめ、自動運転レベル3以上の車両の呼称を公表した。

呼称に強制力はないが、誤解や過信を防ぐ上で呼び名の統一は必要不可欠となる。今回は、国土交通省の発表内容とともに、自動運転関連の呼称に関して考察していく。







■自動運転車両の呼称
レベル3は条件付、レベル5は完全を付記

呼称の策定はASV検討会が以前から進めており、今回新たにレベル3が「条件付自動運転車(限定領域)」、レベル4が「自動運転車(限定領域)」、レベル5が「完全自動運転車」と整理された。

定義上「自動運転車」はレベル3以上の車両が該当することになり、その上でレベル3は「条件付」、レベル5は「完全」という言葉が付記される。なお、レベル3〜5はそれぞれ以下のように定義されている。

  • レベル3:特定の走行環境条件を満たす限定領域において自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態。ただし、自動運行装置の作動中、自動運行装置が正常に作動しないおそれがある場合においては、運転操作を促す警報が発せられるので、適切に応答しなければならない
  • レベル4:特定の走行環境条件を満たす限定された領域において、自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態
  • レベル5:自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態

こうした自動運転レベルに関する呼称は、市場で販売される自動車についてユーザーがその機能や限界などを正しく理解し、適切な運転操作を行うよう促すことを意図して設定している。その対象範囲は、自動車メーカーが消費者に対し、具体的な車種についてテレビCMや新聞広告などの宣伝や広報を行う際に使用することを想定している。

背景には、各メーカーが使用する言葉・表現をユーザーが過信・誤解することに起因する事故の発生がある。分かりやすい例が「自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)」だ。「自動でブレーキが作動し、衝突前に車両を停止させる機能」と間違った認識を持ち、実際に事故を起こす例が一時散見された。

自動車公正取引協議会が2018年5月発行の公取協ニュースで発表した「運転支援・自動運転機能の表示等に関する消費者・ディーラー向けの調査」結果によると、「自動ブレーキ」に対し「自動でブレーキが作動・減速するが、必ず停止するものではない」と正しく機能を理解している人は全体の47.5%にとどまった。約半数が間違った認識を持っていたのだ。

【参考】自動運転レベルについては「自動運転レベルとは?定義や違いは?徹底まとめ」も参照。

過去にはADASも「自動運転技術」と表記?

自動車メーカー側には、消費者を誤解させる意図はない。ただ、技術をアピールする上で人目を引きやすい言葉を選んだり、将来の自動運転技術につながる意味を込めたりしたことなどが悪い方向に出てしまったと言える。

以前は、衝突被害軽減ブレーキやレーンキープアシスト機能など、さまざまなADAS機能も「自動運転技術」として表示されることが多く、作動条件や具体的な機能は小さく付記されるにとどまっていた。

日産は2016年、同社のADAS「プロパイロット」発表時、「同一車線自動運転技術」と銘打っていた。「高速道路の単一車線での自動運転技術で、渋滞走行と長時間の巡航走行の2つのシーンでアクセル、ブレーキ、ステアリングのすべてを自動的に制御し、ドライバーの負担を軽減する」としている。

ADASも自動運転につながる関連技術であることに間違いはなく、作動要件などもしっかり付記しているが、やはり誤認する人はいるのだ。

テスラのオートパイロット過信事故で波紋

実際、2016年には、米国でテスラ車のオーナーが同社のADAS「オートパイロット」を過信した死亡事故を起こし、大きな話題となった。テスラは特に宣伝文句が過剰になりがちで、誤認を誘発しやすいようだ。

国土交通省は当時、米国での事故発生を受けて「テスラのオートパイロット機能を含め、現在実用化されている『自動運転』機能は、運転者が責任を持って安全運転を行うことを前提とした『運転支援技術』であり、運転者に代わって車が責任を持って安全運転を行う完全な自動運転ではない」と異例の発表を行っている。

【参考】テスラ車の事故については「テスラ自動運転車の交通事故・死亡事故まとめ 原因や責任は?」も参照。

こうした誤認を防止するには、各メーカーをはじめとする業界が、使用する用語について一定のルールを設け、行政やメディアを含め誤認を防止していく取り組みが必要となる。

国土交通省・ASV検討会は2018年11月までに、レベル1~2の車両を説明する際に使用する用語を「運転支援車」とすることとし、メーカーや販売店などにも協力を要請し合意に至った。

自動車公正取引協議会も2018年11月、「自動運転機能の表示に関する規約運用の考え方」を見直し、「自動ブレーキ」という用語をテレビCMやウェブなどでは使用せず、「自動(被害軽減)ブレーキ」「被害軽減ブレーキ」などの用語を用いることとしたほか、「自動運転(技術)」という用語についても、レベル2の段階で使用しないよう変更した。

2019年に発表された日産の「プロパイロット2.0」では、「世界初の先進運転支援技術」と表記され、説明においても「自動運転技術」という言葉は一切使用されないなど、新しいルールに準拠した表現がなされている。

【参考】誤認防止に向けた国土交通省の取り組みについては「「自動運転」の使用、レベル3以上のみ 国とメーカーが方針 ドライバーの誤解防止へ」も参照。

海外でも誤認問題が表面化

こうした誤認防止の取り組みは、海外でも同様に行われているようだ。ドイツ政府は2016年、テスラの「オートパイロット」に対し、誤解を生じさせる可能性があるとして使用を控えるよう要請を出した。

テスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)は「航空業界で使用されている用語にちなんで命名した」とし、「航空業界では『自動操縦』であってもパイロットによる監視が当たり前」であることを理由に名称変更を拒んでいる。なお、当時テスラが市場調査会社委託のもとオーナーを対象に実施した調査によると、オーナーの7%がオートパイロットを自動運転と誤認識していたようだ。

2020年には、ドイツの地方裁判所がテスラの広告に対し、オートパイロットなど消費者を誤認させる可能性がある表現を用いないよう命じている。

【参考】テスラのオートパイロット表記問題については「世界で議論を呼ぶ「自動運転」表記、テスラ広告には禁止命令」も参照。

■【まとめ】時代や技術の進化とともに呼称も変化

新しい技術に対する呼称は、言葉が持つ本質的な定義をベースに世論を反映しながら決定・変更されていくことが多い。ADASの「自動運転技術」呼称がこの数年のうちに認められなくなったのは、本来の「自動運転技術」が目に見える形になったからとも言える。時とともに、技術の進化とともに呼称は変わっていくのだ。

将来、レベル4技術が一定程度普及したころには、「レベル3は自動運転と呼ぶべきではない」とする論調が支配的になる可能性も考えられそうだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
登壇情報









関連記事