【2020年4月分】自動運転・MaaS・AIの最新ニュースまとめ

消毒機能付き警備ロボ登場、非接触の配送サービスも



新型コロナウイルスの影響が世界経済に影を落とし、収束を見通せない重たい空気が市場を包んでいるが、暗い話に終始していても状況は改善しない。


自動運転分野では、中国百度自動運転タクシーサービスを本格化させ、先行する米ウェイモを懸命に追いかけている。また、ソフトバンクによるDiDiへの追加出資や、スマートシティ構想やコネクテッド分野におけるトヨタグループとNTTグループ各社の提携など、業界は着実に未来に向けて歩を進めている。

自動運転技術をコロナ対策に生かす取り組みも国内外で発表された2020年4月の10大トピックを一つずつ見ていこう。

■ソフトバンク、中国DiDiの自動運転部門へ近く出資か(2020年4月2日付)

ソフトバンクが、配車サービス大手の中国・滴滴出行(Didi Chuxing)から分社化した自動運転開発企業「DiDi Autonomous Driving」に近く出資する予定であることが一部メディアで報じられた。

デジタルメディアのThe Informationによると、関係者筋の話としてソフトバンクが新たに3億ドル(約325億円)を出資するとしている。


ソフトバンクは2016年以来たびたびDiDiに出資しており、2018年には日本法人DiDiモビリティジャパンも共同で設立している。

DiDiは配車サービスプラットフォームを主体に自動運転開発も積極的に進めている。世界各地に多くの利用者を持つプラットフォーマーによる自動運転タクシーの実用化は、ウェイモや百度などとは大きく異なるインパクトを市場に与える可能性があるため、今後の動向に注目したい。

■自動運転関連求人、初の2万件台に 主要転職6サイト、2020年2月末時点(2020年4月3日付)

自動運転ラボが定期的に調査している主要6転職サイトにおける2020年2月末時点の自動運転関連求人数が、初めて2万件の大台に乗った。前月比では8カ月連続増の19.1%増、前年同月比では80.2%増と大幅な伸びを記録しているようだ。

高度なIT技術やAI技術を持つエンジニアをはじめ、モビリティサービス分野での活躍が期待される人材にも注目が集まっている。

新型コロナウイルスの影響が懸念されるところだが、CASE市場の伸びとともに中長期的にはまだまだ求人数も増加しそうだ。

■自動運転車の「安全基準」を徹底解説!国交省、ステッカーデザインも策定(2020年4月3日付)

2020年4月の改正道路運送車両法の施行に伴い保安基準も改正され、自動運転システム(自動運行装置)に求められる要件や自動運転車に貼付するステッカーのデザインなどが発表された。

自動運行装置には、運転者の状態を監視するドライバーモニタリングシステムや、システムからの運転の委譲要求に際しドライバーが反応しない場合に車両を安全に停止するミニマム・リスク・マヌーバーなどの技術を盛り込むことが求められた。

また、高速道路などにおける低速自動運行装置を備える自動車の最高速度は時速60キロに定められたほか、作動状態記録装置の保存期間も6カ月間または2500回分と規定された。

「低速自動運行装置」が何を指すか明確な定義づけがなされていないが、自動運転レベル3を指している可能性が高く、当面は自動運転システムの性能を問わず時速60キロまでに限定されそうだ。

■トヨタコネクティッドとNTTデータ、モビリティサービス領域で提携(2020年4月10日付)

トヨタコネクティッドとNTTデータが、モビリティサービス分野で業務提携を交わした。モビリティサービス・プラットフォームのさらなる機能やサービスの拡張をはじめ、コネクテッドカーの世界展開などに向け、より一層ソフトウエア開発力や運用体制の拡充を図っていく構えだ。

トヨタは「コネクティッド戦略」のもと全車両のコネクテッド化やMaaS戦略を支える情報プラットフォーム「MSPF」の展開を推進しており、トヨタコネクティッドは、このMSPF開発やビッグデータのクラウドセンター運用業務などを担っている。

一方、NTTデータは世界50以上の国と地域でデジタルを活用した新たな市場の創出やサービスの提供に取り組んでおり、今回の提携でシナジー効果を最大化していくとしている。

同年3月には、トヨタとNTTがスマートシティの実現に向け業務資本提携を交わしており、両グループ総力を挙げた新たな社会づくりにも高い期待が寄せられるところだ。

■「自動運転×宅配」やラストワンマイルに挑む日本の企業まとめ(2020年4月11日付)

EC利用の増加で深刻なドライバー不足に悩まされている宅配業界。開発・実用化が進む自動運転配送ロボットが救世主となるか、注目が集まるところだ。

海外では、米NuroやStarship Technologies、中国EC大手の京東集団など実用化域に達している車両・ロボットが続々と登場する中、日本国内における研究開発や取り組みはどのような状況か。

記事では、宅配ロボットやドローン配送、配送システムソリューションなどに分け、国内各社の取り組みに迫っている。宅配ロボット開発は参入企業が少なく、自動運転技術を応用して今から新規参入を図っても、ビジネスチャンスを十分見込めそうな分野だ。

■自動運転の消毒ロボ、遂に日本でも!ZMPが警備ロボに追加機能 新型コロナ感染防止で(2020年4月15日付)

ZMPが同社の自動運転警備ロボ「PATORO(パトロ)」に、追加可能なオプションとして消毒液散布機能を加えた。走行中、任意の場所で消毒剤の噴霧を行うことが可能で、無人の消毒作業でコロナウイルスの感染拡大に一役買う構えだ。

パトロは、コンパクトボディに自動運転機能を備えた警備ロボットで、無人パトロールなどの基本機能をはじめ、犯人追走やスマートフォンによる呼び出し機能、コミュニケーション機能などを備えている。

2019年12月に発表したばかりだが、コロナウイルス感染拡大の状況を考慮し、早くもオプションの新機能として消毒液散布機能を加えた。電動噴霧器を搭載し、屋内外の適切な場所で巡回消毒を無人で行うことができる。

こうしたフットワークの軽さは同社の大きな武器だ。オプションである消毒機能が呼び水となり、自動運転機能に注目が集まることなども考えられそうだ。

■自動運転を機に下克上!?ホンダのCASE、提携状況まとめ(2020年4月16日付)

自動運転レベル3の市場投入を早ければ今夏にも実施するホンダ。自動運転領域では比較的おとなしい印象が強かったが、ここにきてトヨタや日産らをごぼう抜きにすべくアクセルを踏み込んだようだ。

自動車開発においては独自路線を貫いてきたが、自動運転をはじめとしたCASE領域では他社との提携も積極的に進めている様子で、GM・クルーズをはじめソフトバンクやMONET Technologies、SenseTimeらスタートアップなど、協業の輪はどんどん広がっているようだ。

記事では、こうしたホンダの提携状況を中心にとりまとめ、同社の戦略に迫っている。

■自動運転車で配送!トヨタ出資のPony.ai、米カリフォルニア州で導入 新型コロナ対策(2020年4月20日付)

新型コロナウイルスの影響が続く中、中国スタートアップのPony.aiはEC企業の米Yamibuyと提携し、米カリフォルニア州アーバインで自動運転車を活用した無人・非接触型の配送サービスに着手すると発表した。社会課題の解決に向け自動運転技術を活用する取り組みに、これまで以上に注目が集まりそうだ。

同社は2019年11月から3カ月間にわたり、韓国ヒュンダイとともに同エリアでロボタクシーの実用実証を行っている。現在、公衆衛生なども理由に一時中止しており、これを転用する形で商品配送サービスに着手する。

このほか、同州フリーモントでも自動運転車を活用し、生活複合施設の緊急避難所プログラムで住民に食事を届ける取り組みを行っている。

自動運転技術によって人を介さないサービスが可能となる。「密」を避けられるこうした取り組みは、今後世界各地で加速することも考えられそうだ。

■中国初!百度、一般向けに自動運転タクシー無料サービス ネット大手が異業種参入(2020年4月22日付)

中国のインターネット大手・百度(Baidu)が湖南省長沙市で自動運転タクシーの提供を開始すると発表した。不特定多数に向けたサービスとしては同国初とみられ、当面は無料でサービスを提供するようだ。

百度は2019年9月から同市の一部エリアでセーフティドライバー同乗のもと実証を進めており、今回の発表はこれを拡大する形でサービス提供を行うものだ。

中国ではDiDiやWeride、AutoX、Pony.aiなどが同様に自動運転タクシー実用化に向けた動きを加速させている。

先行する米ウェイモはセーフティドライバーなしの商用サービスをすでに一部で開始しており、今後は自動運転システムのODD(運行設計領域)とともに、セーフティドライバーの有無や利用対象者層、有料・無料の別など、商用サービスとしての質に注目が集まりそうだ。

■大手軒並み参加の「自動運転実証」、7月開催を延期 自工会、新型コロナの感染拡大受け(2020年4月24日付)

日本自動車工業会が、東京臨海部で2020年7月に実施予定の自動運転実証の公開を延期すると発表した。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う措置で、延期後の日程は改めて告知する予定としている。

実証実験は、国内外の自動車メーカーや部品メーカー、大学など計28機関参加のもと、東京臨海部や羽田空港地域において、一般道における信号情報や高速道路における合流支援情報など、交通インフラから提供される動的な交通環境情報を活用した協調領域における自動運転技術の検証などを進めている。

期間は2019年10月~2020年度末までを予定しているが、新型コロナウイルスに伴う国の緊急事態宣言を受け、現在は一時中断している。

自工会はこの実証に合わせ自動運転のデモンストレーションなどを計画していた。

新型コロナウイルスの感染・収束状況に左右されざるを得ない状況だが、緊急事態宣言が解除されれば実証そのものを行うことは不可能ではない。

無理を言えるものではないが、実現に向け重要な時期に差し掛かっていることもあり、コロナの早期収束とともに実証の早期再開を切に願いたい。

■【まとめ】停滞する世界経済に対し、自動運転が希望の光に

新型コロナウイルス対策を機に自動運転技術が日の目を浴びるようなニュースが今後続々と出てくるかもしれない。イノベーションを予感させる技術の登場は、停滞する経済において希望の光となる。

5月もコロナの影響が尾を引いている可能性が極めて高いが、自動運転が社会課題の解決とともに経済復興に向けた起爆剤となるよう、明るいニュースの登場を心から願いたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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