自動運転を機に下克上!?ホンダのCASE、提携状況まとめ

GMやソフトバンク…スタートアップとも続々タッグ





自動車開発において独自路線を貫いてきた印象が強いホンダ。自動運転領域においてもこれまで他社を驚かせるような発表を行わず、堅実な路線を歩んでいるかのように思われたが、ここにきて「下剋上」を想定させる動きを見せてきた。







他社に先駆ける形で自動運転レベル3の市場投入を見込んでいることが明かされたのだ。これまでに国内の高速道路を100万キロ以上走行してさまざまな交通環境を勘案した膨大なデータを蓄積しており、2020年中の技術確立を目指すとしている。

CASE時代を見据え、同社にどのような変化が起きているのか。今回は、ホンダの提携状況などを中心に解説し、同社の戦略に迫っていこう。

■自動運転領域
米GM、Cruiseと自動運転モビリティ開発

自動運転分野におけるホンダの提携において最も大きいものは、米GM(ゼネラルモーターズ)、及びGM傘下のCruise(クルーズ)との協業だろう。

3社は2018年10月、自動運転技術を活用したモビリティの変革に向け、無人ライドシェアサービス用車両の開発で協業していくことを発表した。ホンダは協業に先立ち、クルーズへ7億5000万ドル(約850億円)出資するほか、今後12年に渡る事業資金約20億ドル(約2200億円)を支出する予定としている。

ホンダとGMはもともと燃料電池の分野などで密な関係にあり、次世代型燃料電池システムの開発や燃料電池システムを生産する合弁会社Fuel Cell System Manufacturingの設立などを共同で行っている。2020年4月には、GMが開発したグローバルEVプラットフォームと独自の「Ultium(アルティウム)」バッテリーをベースにしたホンダ向けの次世代EVの共同開発を発表した。

GM・クルーズ陣営は自動運転タクシーで先行する米Waymoを追いかける最有力候補で、当初予定より遅れたものの2020年1月に自動運転車両「Origin(オリジン)」を発表し、生産体制にも目途が立ったようだ。

新型コロナウイルスの影響により当面の計画は不透明感を増しつつあるが、これは各社とも同じことで最有力であることに変わりはない。今後、このクルーズの技術やサービスに対し、ホンダがどのような形で関わってくるかに注目したい。

SenseTimeの画像認識技術で自動運転高度化へ

ホンダの研究開発子会社である本田技術研究所は2017年12月、香港を拠点とするスタートアップ・SenseTime(センスタイム)と共同研究開発契約を締結したと発表した。

センスタイムは、ディープラーニングを用いた画像認識に高い技術を有しており、特に移動体を認識する技術を得意としている。

この提携により、同社の移動体認識技術とホンダが有する「シーン理解」「リスク予測」「行動計画」といったAIアルゴリズムを融合し、複雑な交通状況の市街地でも走行を可能にする高度な自動運転技術の開発を進め、将来的にはロボティクスにも拡大していくこととしている。

【参考】SenseTimeについては「中国センスタイム、自動運転向けのセンシング技術を紹介」も参照。

■MaaS領域
MONET Technologiesとモビリティサービス推進

国内では、モビリティサービスの構築に向けソフトバンクとトヨタが立ち上げたMONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)と提携を交わしている。ライバルであるトヨタ陣営との提携は異例だが、次世代モビリティ業界のインパクトの象徴とも言える。

ホンダは2019年3月、MaaS事業の価値向上とモビリティサービスユーザーへのサービス向上に向けモネと資本・業務提携に関する契約を締結したと発表した。同年6月には、いすゞ、スズキ、スバル、ダイハツ、マツダの参画に伴い、追加出資を行うことも発表している。

ホンダはこの連携を通じて、モビリティサービスの社会受容性・顧客受容性獲得のための普及活動をはじめ、モビリティサービスの実証実験や関連法令整備に向けた渉外活動などをよりスピーディーに推進し、日本のモビリティサービス産業の振興と交通関連の社会課題の解決を目指すとしている。

ホンダは早くから超小型EVを活用したカーシェアの社会実験などを行っており、2017年には気軽に利用可能なカーシェアの特徴を兼ね備えた会員制のレンタカーサービス「EveryGo(エブリ・ゴー)」を展開している。

2020年1月には、サブスクリプション型の新たな月極定額モビリティサービス「Honda Monthly Owner(ホンダ マンスリー オーナー)」も開始している。

MaaS分野では独自路線が目立つホンダだが、技術説明会「Honda Meeting 2019」では、電動モビリティとエネルギーサービスがコネクテッド技術を通じて繋がり循環する「Honda eMaaS」の構築を目指すと発表しており、今後、他社との協業などが一気に進展する可能性もありそうだ。

■コネクテッド領域
ソフトバンクと5G研究

本田技術研究所とソフトバンクは2017年11月、第5世代移動通信システム「5G」の普及を想定し、自動車を中心としたモビリティとさまざまなモノがつながるコネクテッドカー技術の強化を目的とした共同研究の検討を開始したと発表した。

2018年度にソフトバンクが本田技術研究所の施設内に5Gの実験用基地局を設置し、5G環境下での共同研究を本格化する予定で、具体的には高速ハンドオーバー技術や弱電界・圏外域でのリカバリー技術の研究などを進めていくとしている。

なお、ホンダとソフトバンクは2016年にもソフトバンクグループ傘下のcocoro SBが開発したAI技術「感情エンジン」のモビリティへの活用に向けた共同研究を開始している。

ソフトバンクは、ホンダが提携したGM・クルーズに対し先行する形で出資しており、モネの件も含め、良好な関係にあるようだ。

中国でアリババと提携するほか、スタートアップ買収も

アリババは2019年6月、ホンダの中国法人とスマートAIなどの機能を備えた第3世代「Honda CONNECTシステム」を共同開発し、ホンダが中国市場で販売する車種に自動車用音声AIアシスタント「天猫精霊」を導入することを発表した。

アリババグループの「AI+カー プロジェクト」の一環で、日系自動車メーカーの中で天猫精霊を導入するのはホンダが初めてという。

オンライン音声認識や自然言語処理などのAI技術を搭載しており、音声による管理をはじめ自動車と自宅の相互制御、アリババエコシステムへの接続などが可能になる。

ホンダはまた、2019年10月にデジタル・コネクテッド領域における新価値創造の強化に向け、米スタートアップのDrivemode(ドライブモード)を子会社化したことを発表した。

ドライブモードはスマートフォンを活用したコネクテッドサービスの開発・運営を行っており、ユーザーインターフェースやアプリケーション開発、クラウド技術などに優れているという。

ホンダは同社と2015年から共同開発を進めており、CES2020では、シンプルな画像と音声フィードバックで運転中でも進行方向から視線を外すことなくスマートフォンを操作できるHMI(ヒューマンマシンインターフェース)技術「スマートフォン アズ ブレイン」を披露している。

■電動化領域
日本、米国、中国など各地で調達可能な体制構築

電動化領域では、GMのほか中国勢との取り組みに力を入れているようだ。

中国IT業界の大手Neusoft(ニューソフト)傘下のNeusoft Reach(ニューソフトリーチ)とEVに関する協力関係を結び開発を進めるほか、2019年2月には、中国車載電池大手の寧徳時代新能源科技(CATL)とリチウムイオン電池の共同開発や供給などを進めることが発表されている。

なお、国内ではパナソニックや、GSユアサと合弁で設立したブルーエナジーからリチウムイオン電池を調達するなど、各地で調達可能な体制を構築しているようだ。

このほか、電動二輪車の普及を目的に「電動二輪車用交換式バッテリーコンソーシアム」を川崎重工業、スズキ、ヤマハ発動機とともに2019年4月に創設することも発表している。

■Honda Xcelerator(ホンダ・エクセラレーター)の取り組み
ベンチャーキャピタル4社と協業

ホンダ子会社のHonda R&D Innovations(ホンダイノベーションズ)は2018年12月、欧州や中国に拠点を持つベンチャーキャピタル4社と協業を開始することを発表した。

4社はフランス・パリに本社を構える360 Capital Partners、バルト地方最大の投資会社BaltCapとJBIC IGが設立したJB Nordic Ventures、米国に本社を構えるSOSV、中国の上海・北京を拠点とするYunqi Partners。

オープンイノベーションを加速するホンダの取り組み「Honda Xcelerator(ホンダ・エクセラレーター)」を通じて協業し、世界のアーリーステージのスタートアップとのネットワークを活用しながら新たな協業先を発掘し、オープンイノベーションを加速していくこととしている。

スタートアップの支援強化で最先端技術開発へ

ホンダ・エクセラレーターはホンダとの協業の場作りや資金援助などを通じて、2015年からスタートアップを支援している。

ジェスチャー認識技術開発などを手掛ける米Tactual Labsや、 AR(拡張現実)技術を開発するスイスのWayRay、高精度三次元マップ開発を手掛ける米DeepMap、音声認識技術開発を手掛ける米SoundHoundなど、着実に成果を上げているスタートアップも名を連ねているようだ。

■【まとめ】自動運転を機に下剋上か?新生ホンダに注目

独自路線を歩んできた自動車開発から時代は変わり、これからの自動運転開発においては各市場を見据えた横の提携や、スタートアップの技術吸収なども積極的に進めているようだ。

レベル3の市場導入やGMとの協業次第では、自動運転領域においてトヨタや日産に大きく水をあける可能性もある。ホンダは、新時代における下剋上を狙っているのではないだろうか。

2020年4月には、事業運営体制を変更して研究開発を強化したほか、モビリティサービス事業を担うホンダモビリティソリューションズを設立するなど改革を進めるホンダ。

業界において大きく立ちはだかるトヨタという壁にどのように向かっていくのか。まずはレベル3の実用化に期待と注目が集まるところだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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