自動運転&モビリティ業界の2018年資金調達&出資額ランキング 日本含む全世界対象

50億円以上調達した30社、1位はGMクルーズ



2018年も多くのスタートアップが飛躍を遂げた自動運転分野。新規性あふれる技術の早期実現や普及に向け、ベンチャーキャピタルをはじめとする大手資本が惜しげもなく出資を行っている。


そこで今回は、2018年に資金調達が行われた自動運転・モビリティ分野の企業の調達額を調べ、ランキング化した。なお、IPO(新規株式公開)をはじめとする公開株に関しては除外し、50億円以上の調達を達成した企業をピックアップしている。

記事の目次

■資金調達&出資額ランキング
1位 GMクルーズ(米国):3290億円以上

ソフトバンクの10兆円ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」が2018年5月に22億5000万ドル(約2450億円)を、ホンダが2018年3月にまず7億5000万ドル(約840億円)を、米自動車大手GMの自動運転部門「クルーズ」に資金投入することを発表している。

同社は2013年10月に設立し、2016年3月にGMが5億8100万ドル(約640億円)で買収した。GMからの巨額の資金投入によって技術開発を加速し、自動運転レベル3(条件付き運転自動化)の車両の公道での試験走行に早くから取り組んでいることでも知られる。

【参考】関連記事としては「ホンダ、米GMと自動運転開発で提携 無人ライドシェア用車両を開発へ 子会社クルーズに850億円出資」も参照。


2位 Grab(シンガポール):3070億円以上

東南アジアを中心に事業を展開する配車サービス大手のGrab(グラブ)は2018年8月、資金調達ラウンドでトヨタ自動車などから20億ドル(約2250億円)の調達を発表。その後も、オンライン宿泊予約サイトを運営するBooking Holdingsから2億ドル(約225億円)、韓国の現代自動車と起亜自動車から2億5000万ドル(約280億円)、タイのカシコン銀行から5000万ドル(約55億円)の出資がそれぞれ発表されているほか、金額は不明だがマイクロソフトも戦略的提携とともに出資することなどが判明している。


同社は2018年末までに計30億ドル(約3400億円)以上の資金を集める計画を立てている。

3位 Jingdong Logistics(中国):2800億円以上

中国のネット通販大手のJDドットコム(京東集団 :ジンドン)系列でスマート物流システム開発を手掛けるJDロジスティクスが2018年2月、総額25億ドル(約2800億円)の資金調達に成功した。資金調達ラウンドにはテンセントやセコイア・キャピタル・チャイナなどが参加している。

同社は2017年7月設立。物流倉庫の無人化を目指し、商品のピッキングからトラックへの積み込みまでをロボットが担うシステムの開発などを手掛けている。

4位 Quanergy Systems(米国):2250億円以上

3D-LiDAR開発を手掛けるQuanergy Systems社は2018年10月、シリーズC資金調達ラウンドで評価額20億ドル(約2250億円)を超える資金を確保したと発表した。

同社は2012年設立。ソリッドステート式3D-LiDARにフェーズドアレイ方式を採用した3D-LiDARの開発を行っており、様々な特許を取得するなど技術開発の高さが評価されている。

5位 満幇集団(中国):2135億円以上

トラック配車アプリ大手の満幇集団(フル・トラック・アライアンス)は2018年4月、ソフトバンク・ビジョン・ファンドと中国政府系の国新科創基金が主導するシリーズEラウンドで19億ドル(約2135億円)を調達した。

さらに2018年秋以降に10億ドル(約1130億円)規模の資金調達を実施する見込みで、ソフトバンクや中国のテンセントと交渉中とされている。

6位 SenseTime(中国):1370億円以上

AI(人工知能)スタートアップのSenseTime(センスタイム)が2018年上半期に立て続けに資金調達を行い、総額1370億円を調達した。4月にアリババグループが主導するCラウンドで6億ドル(約673億円)を調達すると、5月にはシリーズC+ラウンドで6億2000万ドル(約697億円)を追加した。

同社は2014年に設立。ディープラーニング技術を得意とし、画像認識技術を競う国際大会「ILSVRC2015」で1位を獲るなど優れた技術を誇る。2016年には日本法人も設立している。

7位 Momenta(中国):1130億円以上

自動運転スタートアップのMomentaは2018年10月、投資家や政府系基金団体から10億ドル(約1130億円)を資金調達したと発表した。

同社は2016年創業。ディープラーニング(深層学習)のアルゴリズムを構築し、自動運転車の「頭脳」となる自動運転システムを開発しており、自動運転レベル4(高度運転自動化)以上の自動運転技術の搭載に取り組んでいる。

7位 Local Motors(米国):1130億円以上

3Dプリンターによる自動車製造を手掛けるスタートアップのLocal Motors(ローカルモーターズ)は2018年1月までに、10憶ドル(約1130憶円)の資金調達に成功したことが報じられている。

同社は2007年設立。2015年に世界初の3Dプリント自動車を開発後、EVの「Strati」や自動運転バス「Olli」など開発している。主要部品に3Dプリンターを用いることで、金型費を50%、工程にかかる生産時間を最大90%まで削減できるという。

9位 ofo(中国):973億円以上

シェアサイクル世界大手のofo(小黄車)は2018年3月、アリババグループがリードする投資ラウンドで8億6600万円(約970億円)の資金調達を実施したことを発表した。

ofoは2014年創業。これまでに少なくとも世界21カ国・250都市で1000万台の自転車でシェアサイクルを展開している。2018年9月までに新たに数億ドル規模の調達を目指すことが報じられている。その一方で財政がひっ迫しているとする報道もあり、同業との競争激化が要因として挙げられている。

10位 Faraday Future(米国/中国):900億円以上

中国発のEV(電気自動車)スタートアップで米カリフォルニア州に本拠を構えるFaraday Future(ファラデー・フューチャー)は2018年6月、香港の恒大集団系列から総額20億ドル(約2250億円)の資金調達を発表した。2018年中に8億ドル(約900億円)、2020年までに残りの12億ドル(約1350億円)を支払う内容だったが、8億ドル出資後に両者の意見が真っ二つに分かれ、ファラデーは合意内容破棄を香港国際仲裁センターに申し立てたようだ。

ファラデーが「8億ドル出資後、残りの12億ドルのうち5億ドルを前倒しして出資する取り決めだった」と主張する一方、恒大集団は「8億ドル出資後、それを使い切ったファラデーが7億ドルを前倒しして支払うよう求めてきた」としている。

同社は2014年設立。2016年のCESでEVコンセプトカーを発表し、「テスラ・キラー」と呼ばれるほど注目を集めた。その後、財政面の課題がたびたび指摘されており、資金繰りの悪化を新たな資金調達で乗り切る経営が続いているようだ。

11位 Lyft(米国):674億円以上

ライドシェア大手のLyft(リフト)は2018年6月、シリーズIラウンドで6億ドル(674億円)の資金調達を実施したと発表した。

企業評価額は1.7兆円に上り、近くIPO(新規株式公開)を実施する方針で、上場後の時価総額は2兆円規模になるとの報道もある。

12位 小鵬汽車(中国):650億円以上

広州に拠点を置くEVスタートアップの小鵬汽車は2018年8月、シリーズB+ラウンドで40億元(約650億円)の資金調達を発表した。

同社は2014年創業。アリババから出資を受けており、「新テスラ・キラー」として注目を浴びている。9月には、2019年末までに300億元(約4800億円)を調達する計画を明らかにしており、生産体制の拡大を図る方針だ。

13位 Uber Technologies(米国):560億円以上

ライドシェア大手のUber Technologies(ウーバー・テクノロジーズ)は2018年8月、トヨタ自動車と自動運転技術を活用したライドシェアサービスの開発促進および市場への投入を目指し協業を拡大することを発表。合わせて、トヨタがウーバーへ5億ドル(約560億円)を出資することが発表された。

同社には、2017年にもソフトバンクグループが80億ドル(約9600億円)の巨額出資を行っており、筆頭株主になっている。

14位 Byton(中国):560億円以上

EV開発スタートアップのByton(バイトン)は2018年6月、シリーズBの資金調達ラウンドで、FAWグループ(第一汽車集団)などから5億ドル(約560億円)を調達したことが報じられている。

同社はBMW出身のエンジニアが2017年に立ち上げたEVメーカーで、2019年に自動運転レベル3、2020年に自動運転レベル4の実現を掲げている。

15位 Bird(米国):470億円以上

電動スクーターシェアを手掛けるスタートアップのBird(バード)は、2018年2月に1500万ドル(約17億円)、3月に1億ドル(約113億円)、そして7月には3億ドル(約340億円)の資金調達をそれぞれ発表している。

UberやLyftで役員を務めた経歴を持つ人物が2017年に創業したばかりの企業で、スクーターを活用したラストワンマイルの移動サービスの全米展開を進めていく構えだ。

16位 LeapMotor(中国):405億円以上

EVやコネクテッドカー、自動運転車の開発を手掛ける自動車メーカーLeapMotor(零跑)が2018年11月、資金調達Aラウンドで25億元(約405億円)を調達する見込みであることが報じられている。

同社は2015年創業で、自動運転やEV開発技術が高く評価されている。将来的には、カーシェアや配車サービスなどへの参入も計画しているという。

17位 Lime(米国):377億円以上

自転車シェアリングサービスを手掛けるLime(ライム)は2018年7月、グーグルの持ち株会社アルファベットやウーバーなどから3億3500万ドル(約377億円)の資金を調達したことを発表した。

資金調達に際し、ウーバーと業務提携を結ぶことも発表されており、ライムが提供する電動スクーター「Lime-S」をウーバーとの共同ブランドにするほか、ウーバーのアプリでライムを利用できるようにする予定という。

18位 Getaround(米国):330億円以上

カーシェア事業を手掛けるGetaround(ゲッタラウンド)は2018年7月、ソフトバンクグループから3億ドル(約330億円)の出資を得たことが発表されている。

同社は2009年創業。自家用車をレンタル希望者に貸し出すサービスを提供しており、オーナーが「Getaround Connect」と呼ばれるデバイスを車内に設置することで、借りる側がスマートフォンのアプリでドアロックを解除することができるサービスなどを手掛けている。

2017年にはトヨタ自動車からも4500万ドル(約50億ドル)の出資を受けている。

19位 GoGoVan(香港):280億円以上

ラストワンマイル配送を手掛ける物流スタートアップのGoGoVan(高高客貨車)は2018年7月、中国の InnoVision Capital(華新投資)がリードする資金調達ラウンドで2億5000万ドル(約280億円)の調達を発表した。

同社は2013年設立。物流シェア事業を香港や韓国、東南アジア、オーストラリアなどで展開している。

20位 Banma(中国):260億円以上

アリババグループと上海汽車集団の合弁会社である自動車スタートアップのBanma Technologiesは2018年11月、コネクテッドカー事業の本格運用を開始することを発表し、この中で、資金調達ラウンドで16億元(約260億円)以上を調達したことを公表している。

同社は2015年創業。2017年にスマート給油やインテリジェントパーキングなどのサービスを開始したほか、自動車ハードウエアのすべての仕様に対応する標準ソフトウェアプラットフォームの構築なども進めている。

21位 DataRobot(米国):253億円以上

機械学習自動化プラットフォームを手掛けるDataRobotは2018年10月、インテルなどが参加するシリーズDラウンドで1億ドル(約113億円)の資金を集め、総額2億2500万ドル(約253億円)の資金調達を完了したと発表した。

同社は2012年設立。機械学習モデルの構築と運用プロセスを自動化する技術開発を手掛けている。

22位 Pony.ai(中国/米国):240億円以上

自動運転スタートアップのPony.ai(小馬智行、ポニー・エーアイ)は2018年7月、A1資金調達ラウンドで1億200万ドル(約115億円)相当を調達し、シリーズA総額で2億1400万ドル(約240億円)に達したことを発表した。

同社は2016年創業で、米カリフォルニア州と中国広東省に拠点を置いている。完全自動運転車の開発を手掛けており、資金調達により開発体制を強化し、2019年末に自動運転レベル4(高度運転自動化)相当の開発車両の商用化を目指し、配車サービスを始める計画という。

23位 Roadstar.ai(中国):144億円以上

自動運転開発を手掛けるスタートアップのRoadstar.ai(ロードスター・エーアイ)は2018年5月、シリーズAラウンドで1億2800万ドル(約144億円)を調達したことを発表した。

2017年設立の同社は深センと米シリコンバレーに2つの研究開発センターを開設しており、自動運転レベル4(高度運転自動化)を実現するテクノロジー・キット「Aries(アリエス)」を公開している。

24位 JapanTaxi(日本):112億円以上

配車アプリ「全国タクシー」の運営などを手掛けるJapanTaxi(ジャパンタクシー)は2018年2月、トヨタ自動車とタクシー事業者向けサービスの共同開発などを検討する基本合意に締結し、関係強化に向け約75億円の出資を受けることを発表した。

また、7月にはNTTドコモと資本業務提携を交わし、22億5000万円の出資を受けたほか、9月には韓国最大のモビリティプラットフォームを運営するカカオモビリティと資本業務提携を交わし、15億円の資金調達を行ったことを発表している。

25位 Aurora Innovation(米国):101億円以上

自動運転ソフトウェアの開発などを手掛けるAurora Innovation(オーロラ・イノベーション)は2018年2月、シリーズAラウンドで9000万ドル(約101億円)の調達に成功した。

同社は、EV大手のテスラとグーグルの元社員がタッグを組んで2016年に創業。2018年1月に独フォルクスワーゲン(VW)、韓国ヒュンダイ(現代自動車)と戦略的提携契約を結んでおり、同社の技術を提供している。一部報道によると、同年8月までにフォルクスワーゲンから戦略的買収の話が持ち上がったが、オーロラは独立性の保持などを理由に断ったようだ。

26位 WayRay(スイス):90億円以上

ホログラフィーを用いたAR(拡張現実)技術を開発するスタートアップのWayRayは2018年9月、ポルシェや現代自動車などから8000万ドル(約90億円)の資金調達を行ったことを発表した。

同社は2012年創業。視認性の高いヘッドアップディスプレイシステムの開発を手掛けており、2018年6月に中国上海で開催されたCESアジア2018では、ホンダと共同開発した最新のヘッドアップディスプレイシステムを発表している。

27位 Valens Semiconductor(イスラエル):71億円以上

通信分野などで半導体開発を手掛けるValens Semiconductorが2018年11月、6300万ドル(約71億円)の資金調達を実施したことが報じられている。

今回の資金調達により、より高性能なコンピューティングやスマートな設計、PCIエクスプレスによる伝送などに取り組み、自動運転に向け技術開発を強化するという。

28位 Ridecell(米国):52億円以上

ライドシェア事業者向けのプラットフォーム開発などを手掛けるRidecellは2018年5月、BMWやデンソーなどが参加するシリーズB投資ラウンドで2800万ドル(約32億円)を調達した。11月には6000万ドルまで拡大することを発表し、4580万ドル(約52億円)まで調達したことが判明しているようだ。

29位 Aeva(米国):50億円以上

LiDARを中心とした次世代センサー開発を手掛けるスタートアップのAevaは2018年10月までに、シリーズAラウンドで4500万ドル(約50億円)を資金調達した。

同社は、アップル社で自動運転プロジェクト「タイタン(Titan)」に関わっていたSoroush Salehian氏とMina Rezk氏が2017年に創業した会社。今回調達した資金は、これまで開発した技術の性能向上などに充てられるとみられる。

29位 WHILL(日本):50億円以上

電動車いすなどのパーソナルモビリティの開発・販売を手がけるWHILLは2018年9月までに、約50億円の資金調達を完了したと発表した。

これまでに日本をはじめ北米・欧州の各国で事業展開しており、今回調達した資金で世界各国への進出や販売強化を進める。将来的には自動運転や追従走行機能などを搭載した製品の開発も進める。

■(参考)資金調達ラウンドとは?

資金調達の場面でよく登場する、資金調達ラウンドや投資ラウンド、シリーズAラウンドなどの言葉。スタートアップの資金調達に付きもののため、かんたんに解説しておく。

投資ラウンドは、ベンチャーキャピタルがスタートアップやベンチャー企業に対し投資をする「段階」のことで、対象企業の事業の段階に応じてシリーズが組まれる。

一般的に、起業前の段階における投資ラウンドを「シード」、起業直後の段階は「アーリー」、そして事業を本格的に始める段階段階を「シリーズA」、事業が軌道に乗り始めた段階を「シリーズB」、経営が安定し始めた段階を「シリーズC」と呼ぶ。このようにシリーズとして区別することで、その企業の事業段階を明確に示すことができる。

■圧倒的に多い米国・中国企業

調査から抜け落ちてしまった企業もあるだろうが、傾向としてはやはり米国・中国企業が圧倒的に多く、シリコンバレーや深センのように起業しやすい環境や注目を受けやすい環境が揃っているのは、スタートアップにとって心強いものだろう。

2019年はモビリティ関連企業の上場ラッシュになることも予想される。米ウーバーは早ければ2019年1〜3月ごろに上場し、米リフトは2018年12月に米証券取引委員会に新IPO実施に向けた準備書類を提出済み。中国の Didi Chuxing(滴滴出行)も香港市場に上場するという噂が流れている。

ウーバーの上場時の時価総額は、2012年のフェイスブック(812億ドル)を超える1200億ドル(約13兆円)規模になるという試算も出ており、実現すればビッグニュースになるとともにライドシェア業界に大きな影響を与えることになるだろう。

また、GMクルーズが上場を検討していることも6月に報じられている。こちらも実現すればマンモス級のIPOとなり、市場が活気づくことは間違いない。

日本国内にもオープンソースの自動運転OS「Autoware」を開発するティアフォーなど、世界に通用する高い開発能力を備えた企業もある。こうした企業の上場の可能性にも今後は注目が集まる。

【参考】ウーバー上場については「ライドシェア最大手ウーバー、2019年1〜3月にも上場か Facebook超えも」も参照。


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