アリババ出資の自動運転タクシー、中国で2人はね重体

車両は百度(バイドゥ)製



出典:X

中国で自動運転車による重大事故が発生した。IT大手アリババ系でシェアモビリティ事業を展開するHello(旧:Hellobike)が運行する自動運転タクシー(ロボタクシー)が、歩行者2人をはねた。被害者は男女1人ずつで、集中治療室(ICU)に移送された。

今回の事故で使用されていた自動運転車両は、IT大手Baidu(百度)製の「Apollo RT6」だった。アリババもBaiduも、中国の自動運転開発を率いる有力企業だ。事故はなぜ起きたのか。


■自動運転車が歩行者をひく事故

2025年12月6日午前9時頃、中国の湖南省東部に位置する株洲で自動運転車が歩行者2名をひいた。横断歩道を通過後に走行中の事故であったようだ。

SNSに投稿された動画を見ると、ヘルメットを着用した男性とみられる人物が車両の下敷きになっているようだ。またもう1人の女性とみられる人物は、胸のあたりに手をやりながら路上脇に倒れ込んでいる。被害者2人は病院に搬送されICUで治療中だが、負傷の程度などは明らかになっていない。


事故を起こした車両には「Hello Autonomous Driving」というロゴが付いていたが、救急隊が応急処理をしている時点ではすでに車体にカバーが掛けられていた。

【参考】関連記事としては「自動運転車の事故、日本・海外の事例まとめ」も参照。


【最新版】自動運転車の事故、日本・海外の事例まとめ

■Hello側は事故を認める

現地メディアの報道によると、Helloのカスタマーサービス担当者は、事故に関する情報を受け取っていることを認めているという。そしてこの事故についての調査に積極的に協力しているとコメントしているようだ。

Helloは元々は自転車シェアリングサービスを展開していたが、最近はクルマのライドシェアサービスにも事業を拡大している。同社は、アリババグループの関連会社であるアントグループが投資していることでも知られている。


Helloのロボタクシーは株洲で規制当局の承認を受けた後、2025年8月に一般道でのテスト運行をスタートした。現在は市内の認可された道路で約20〜30台が運行されているようだ。同社がテスト運行を行っているのは株洲と江蘇省にある溧陽の2都市であるが、この事故を受けて株洲でのサービス提供は停止された。

■Baiduの自動運転車両の概要

出典:百度プレスリリース

今回事故を起こした自動運転車両は、BaiduのApollo RT6だ。RT6はバイドゥの自動運転事業「Apollo Project」での第6世代自動運転車だ。量産対応モデルとなり、2024年5月に正式にデビューした。

一般的な自動運転車の価格が数千万円する中で、RT6はバッテリー交換方式を採用することで、1台あたりの価格を3万ドル(約465万円)未満に抑えていることでも話題になった。

なおHelloは株洲で事故を起こす数日前に、同社初のレベル4自動運転車を2026年6月に量産開始し、小規模での出荷を開始する計画であることも発表している。

■Baiduは中東でもロボタクシー展開

Baiduは自社でもロボタクシーサービス「Apollo Go」を行っている。2020年頃からサービス提供を開始し、完全無人運転に移行した。現在、中国の10都市以上でサービスを展開している。

2025年3月には、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイでApollo Goを開始することを発表した。ドバイの道路交通局(RTA)と戦略的パートナーシップ協定を締結したことにより実現する。この協定の一環として、Apollo Goでは2025年末までにドバイ都市部に100台の完全自動運転車を配備し、ロボタクシーサービスを行う。さらに2028年までには、車両数を1,000台以上に拡大する計画もあるようだ。

Apollo Goはさらに、UAEを拠点とする自動運転モビリティ企業「Autogo」と戦略的パートナーシップを締結し、アブダビで最大規模の完全自動運転車両の配備を目指すことも発表した。まずは試験的に数十台の自動運転車がアブダビの特定地域に導入される。その後段階的に規模を拡大していき、2026年までにロボタクシーの本格的な商業運行を行う予定になっている。

■中国での事故報告義務は?

中国での自動運転車による事故はあまり報じられることがなく、事故件数などは全く明らかになっていない。ただしBaiduの自動運転車が走行中に、乗客を乗せたまま工事用の溝に落ちたという事故もSNSで拡散されたこともあった。

中国と並びロボタクシーの導入が進む米国では、運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)が自動運転車やADAS(高度運転支援システム)が関わる事故報告を発生から24時間以内に行うよう、開発企業に義務付けている。そのためかなり正確な事故率などが企業ごとに発表されている。

発展目覚ましい中国の自動運転開発であるが、事故やトラブルも包み隠さず公表し改善策を明らかにしていくことで、市民の信頼も向上していくのではないだろうか。

【参考】関連記事としては「中国の自動運転タクシーは、「工事中の穴」に落ちます」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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