「自動運転×宅配」やラストワンマイルに挑む日本の企業まとめ

宅配ロボやドローン開発、物流最適化ソリューションも





自動運転レベル3の解禁によってにわかに活気づいてきた自動運転業界。ただ、多くの消費者の関心を誘うには今しばらく時間がかかりそうで、さらなる技術の進展や低価格化を図りいち早く需要を喚起したいところだ。







その一方、溢れかえらんばかりの需要で自動運転技術の実用化を待望している業界もある。物流においてラストワンマイルを担う宅配だ。近年のEC利用の増加で宅配需要が伸び続けており、業界ではドライバー不足が深刻化している。

最近では、新型コロナウイルスの影響によって外出規制に伴うEC利用やデリバリー需要が増加しており、ドライバーの負担は極限状態に達している感がうかがえる。

こうした課題を解決する一つの手立てが、自動運転技術を搭載した宅配ロボットの導入だ。ドライバー不足の解消とともに感染症対策の一環を担う技術としても注目が集まり、中国や米国などで自動運転車両を活用する動きが高まっているようだ。

世界的に実用化に向けた取り組みが加速している宅配ロボットだが、日本国内での開発状況はどうなっているのか。今回は、宅配ロボットを開発する国内企業をはじめ、AIやIoTといった最新技術でラストワンマイルの課題解決に取り組む企業をピックアップし、紹介していこう。

【参考】自動運転を活用したコロナ対策については「自動運転デリバリー、新型コロナが規制緩和の引き金に?」も参照。米国における自動運転を活用したコロナ対策については「新型コロナ、中国に続き米フロリダ州でも自動運転車両が活躍」も参照。

■宅配ロボット

自動運転技術を活用するものとして目玉となるのはやはり宅配・配送ロボットだろう。海外では開発が盛んだが、国内では意外と自社開発を手掛けている企業は少ない。海外製品を持ち込んで実証を行う事例も多く、今からでも新規参入の余地が十分にありそうな開発領域だ。

導入を検討する事業者においては選択肢が少ない結果となるが、ZMPが商用化に向けた取り組みを加速しており、国内第一人者としての地位を築き上げようとしている。

ZMP:国内宅配ロボット開発のパイオニア 商用プログラムも用意

国内宅配ロボット開発分野をリードするロボットベンチャーのZMPは、自動運転宅配ロボット「DeliRo(デリロ/旧CarriRo Deli)」の商用プログラムを2020年5月に開始する予定だ。

DeliRoは同社の自動運転ソフトウェア「IZAC」を搭載し、カメラやレーザーセンサーで周囲の環境を360度認識しながら最大時速6キロで自動走行することができる。

全長962×全幅664×高さ1089ミリで、運ぶ荷物の大きさや形状に応じてロッカーの数を1ボックス、4ボックス、8ボックスから選択することができる。最大積載量は50キロとなっている。フロント面は顔をモチーフとした作りになっており、目と音声によるコミュニケーション機能で利用者や周囲の人をサポートすることも可能だ。

また、配達中のロボットの場所や周囲の様子を監視することが可能な遠隔監視システムや、ブロックチェーン技術により強力に暗号化された状態で注文完了や商品積込完了、配送完了、受取完了といった各ステップを記録できるという。

すでに慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスをはじめ国内外で実証実験・実証走行を行っており、経験も豊富だ。

ロボットのほかユーザー用アプリや店舗用アプリ、ITサービスをパッケージ化して提供しており、5月開始予定の商用サービスは、運用費用が1台あたり月10万円~、初期費用500万円~となっており、マップ作成やルート設定、現地チューニング、実証実験などもサービスに含んでいる。

Hakobot:宅配ロボット専門の新進気鋭のベンチャー

自動配送ロボットの開発に向け2018年5月に設立されたHakobotは、実業家の堀江貴文氏をアドバイザーに迎え、着々と開発を進めているようだ。

2018年11月、堀江氏が主催するイベント「ホリエモン祭 in 名古屋」で自動配送ロボットの初号機を初披露したほか、三笠製作所との業務提携も発表している。

ロボットは全長730×全幅569×高さ703ミリの小型タイプで、車体最上部にLiDARを搭載している。

2019年11月に長崎県壱岐市で開催されたSDGsをテーマにしたフェス「SDGs WEEKEND IKI COLORs」で公開実証実験を行い、自動走行ロボットを使ってメインステージの演目の告知やリマインドを行ったようだ。

楽天:ドローンと宅配ロボットで無人配送サービス確立へ

国内EC大手の楽天は、将来を見据えた物流改革の一環として2016年からドローンを活用した配送、2018年からは地上配送ロボットを活用した無人配送に取り組んでいる。

同社は2016年5月、ドローンを活用した一般消費者向けの配送サービス「そら楽(そららく)」を開始した。取り組み第一弾として自律制御システム研究所が開発した機体を使用し、ゴルフ場コース内でプレイヤーが注文した軽食や飲料を配送する実証を行っている。

2019年2月には中国のEC大手・京東集団と提携を交わし、京東のドローンや地上配送ロボットを組み合わせることで無人配送サービス提供に向けた取り組みを強化していくことを発表した。

京東の配送ロボットは、縦171.5×幅75×高さ160センチで最大積載量50キロ、最大走行時速15キロのスペックで、同年5月にはこのロボットを使った配送実験が千葉大学構内で行われている。

同年7月からはスーパー大手・西友とともに、横須賀沖の離島「猿島」の一般利用者を対象にドローン商用配送サービスを約3カ月間にわたり実施したほか、9月からは、ドローン配送拠点に隣接した「うみかぜ公園」で自動走行ロボットによる配送にも着手している。

【参考】楽天の取り組みについては「楽天の自動運転・MaaS・配送事業まとめ ライドシェア企業へ出資も」も参照。

ヤマト運輸:ロボネコヤマト実証 次の一手は?

ヤマト運輸は2017年4月、ディー・エヌ・エーとともに国家戦略特区に指定されている神奈川県藤沢市において自動運転社会を見据えた「ロボネコヤマト」プロジェクトの実用実験に着手した。

車内に保管ボックスを設置した専用EV車両を使用したオンデマンド配送サービス「ロボネコデリバリー」と、買物代行サービス「ロボネコストア」を近隣住民に提供する試みで、車両は有人運転で走行したが、将来の無人配送を意識して荷物の発送・受取りにドライバーが関与しない手法を採用した。

翌2018年4月には、アイサンテクノロジーの協力のもと自動運転車両を用いた配送実証実験も行っている。

以後、ロボネコヤマトに関する取り組みは発表されていないが、宅配大手として自動運転技術やロボット技術に対する関心は高いものと思われる。新たなプロジェクトや実証などに期待したい。

■ドローン物流

ドローンを活用した物流の取り組みも大きく前進しており、国内では宅配ロボットよりも開発や実証が盛んな印象だ。楽天のほか、航空大手やスタートアップらが活躍している分野だ。

PRODRONE:自治体と提携し長距離物流実証実験に着手

産業用ドローンの製造販売を手掛けるプロドローンは、レーザー測量や警備、広域探索、農薬散布といった様々なタスクを担うドローンを開発している。

重量物の運搬も可能で、2018年8月には、ゼンリンとともに長野県伊那市で河川上空を航路とする新たなドローン物流システムの構築に向けた実証を開始すると発表した。また、2019年9月には、KDDIとともに三重県志摩市、愛知県蒲郡市、静岡県御前崎市の各市とドローン長距離物流実証実験に関する協定を締結するなど、物流分野への応用に期待が持たれている。

自律制御システム研究所(ACSL):日本郵便や楽天、ANAなどと連携

商業用ドローンの製造販売や、自律制御技術を用いた無人化・IoT化に係るソリューションサービスの提供を手掛けるACSLは2016年11月、楽天とNTTドコモとともに都市部におけるLTEを活用したドローン配送システムの実証実験を成功させた。

2018年10月には、日本郵便のドローンを用いた郵便局間輸送の実証において機体提供・業務サポートなどを行っており、2020年3月には、東京都の奥多摩郵便局を拠点に中山間地における郵便物の配送実験も行っている。

また、2019年8月には、ANAホールディングスと長崎県五島市が取り組むドローンを用いた有人島間物流網構築実証にも参加するなど、各社と連携した取り組みを加速させている印象だ。

【参考】自律制御システム研究所については「非GPS環境下の自律飛行、より高度で複雑な環境でも!空飛ぶクルマにつながる技術」も参照。

TerraDrone:運航管理システムでドローン物流を支援

ドローンを用いたレーザー・写真測量事業を軸に、ドローンの運行管理システムやデータ利用を加速する総合プラットフォームといったソフトウェア開発を手掛けるテラドローンは2019年8月、三菱地所の協力のもと、東京丸の内の高層ビル街における警備・防災・物流領域での活用を視野に入れたドローンの飛行実証実験を行った。

2020年1月には、日本航空と兵庫県養父市と小型固定翼ドローンの実証実験を行うことも発表しており、同社は運航管理システム「Terra UTM」を提供する。

【参考】TerraDroneの取り組みについては「見た目は風の谷のメーヴェ!JAL、兵庫県養父市でドローン輸送実証」も参照。

■配送システムソリューション

配送ルートを最適化するソリューションなどの開発も盛んで、日立や富士通、NECといった大手をはじめ、高いAI技術を持つスタートアップなども積極的に参戦している分野だ。

オプティマインド:クラウドサービス「Loogia」で配送効率化

ラストワンマイルのルート最適化AIを活用したサービス開発を手掛けるオプティマインド。AIによって簡単に最適なルートを作成することができ、配送業務の効率化に大きく寄与するクラウドサービス「Loogia(ルージア)」は、日本郵便をはじめ導入する企業が相次いでいるようだ。

Loogiaでは、どの車両がどの訪問先をどのような順で回るかなどの配車・配送計画をAIによって計算し、最適なルートを提供する。配送先の時間指定をはじめ、一方通行やUターン禁止、有料道路の選択といったラストワンマイルならではの道路事情など、30項目以上の制約を考慮した上で最適な配送ルートを導き出すことができる。

また、配送実績をGPSから収集してAIが学習することで、走行速度や駐車位置など最新の配送情報やベテランのノウハウをルートに反映し、さらにスムーズな配送を実現するという。

他社との提携も進んでおり、2020年3月にはあいおいニッセイ同和損害保険と自動運転社会を見据えた安全で最適な走行ルートの実現に向けた共創取組を開始すると発表している。

また、モビリティ業務最適化クラウド「Cariot(キャリオット)」を手掛けるフレクトとの提携も発表されており、LoogiaとCariotを連携させることでサービスの質をいっそう高めるとしている。

【参考】オプティマインドとフレクトの連携については「輸配送ルート最適化を支援!オプティマインドとフレクトが連携、自動運転領域でも期待の技術」も参照。

ライナロジクス:ゼンリンデータコムと資本業務提携 サービス強化へ

2000年の創業時から自動配車システムを手掛けてきたライナロジクスは、2018年にクラウド型配車システム「LYANCLOUD(ライナクラウド)」をリリースした。

最適な配送計画をAIで作成しクラウドで共有できる配送システムで、必要な車両台数から配送順、予定の到着時刻まで自動算出する。時間指定や車格制限、地理的条件などの配送先の制約条件や、積載量、稼働時間といった車両の制約条件などもすべて守った上で、最適な配車計画を導き出すことが可能だ。

2020年4月には、ゼンリンデータコムとの業務資本提携を発表した。両社は以前からモビリティプラットフォーム事業において協力関係にあり、今回の提携によって研究・開発レベルから地図データ、アプリケーション、プラットフォームの連携に至るまでいっそう強化を図ってサービスを磨き上げていくこととしている。

構造計画研究所:幅広い物流ソリューションを提供

建物の構造設計からソフトウェア開発、定量化計測と集計・分析サービスなど幅広く手掛ける構造計画研究所は、長年培ってきた数理技術や現場ノウハウを武器にモノの調達から生産、在庫管理、輸送に至る各場面で物流ソリューションを提供している。

配送分野では、貨物をトラックやコンテナに積み付けるための積載効率の高いプランを作成する最適積み付けシステム「i-Caps」や、多様で複雑な制約を考慮した効率の良い配送計画を素早く簡単に策定できるプランニングシステム「ALPS Route」、輸配送の現場作業をサポートするさまざまな機能を備えた、スマートフォンでも利用可能な動態管理システム「GEAR」などをリリースしている。

■その他
CBcloud:配送マッチングアプリ「PickGo」を展開

配送マッチングプラットフォーム「PickGo(ピックゴー)」を手掛ける2013年設立のベンチャー。荷物を送りたい人とフリーランスドライバーなど届けたい人をマッチングするサービスで、ラストワンマイルにおけるドライバーの働き方に変革をもたらしている。

ライドシェア同様、働きたいときに自分のペースで働くことができるほか、個人事業主のプロドライバーなども空き時間を有効活用できそうだ。

【参考】CBcloudについては「JR東日本CVCと物流ベンチャーのCBcloud、MaaS領域で提携」も参照。

ドコマップジャパン:運送業者間で車両をマッチング

空車情報ポータルサイト「docomap JAPAN」の運営などを手掛けるドコマップジャパンは、日本全国の空車車両を可視化・データ化することで、運送業者同士の車両手配を可能にしている。

GPS専用端末を搭載するだけで車両の位置を管理・共有することができ、効率的な配車業務を実現するという。

不在配送ゼロ化AIプロジェクト:スマートメーターで在宅・不在を予測

企業ではないが、東京大学と日本データサイエンス研究所、NextDriveによる独創的な取り組みも注目を集めている。

三者は、通信機能を備えた電力計「スマートメーター」から取得される各家庭の電力消費データを用い、AIによって将来の在不在を予測する配送ルーティングエンジンを開発した。

各戸に設置されたスマートメーターから取得される電力データをAIが学習し、配送時刻における在宅予測に基づいて、在宅戸から優先的に配送するルートを自動生成するシステムで、2018年に東京大学構内で実施した配送実験では、配送成功率が98%に上ったほか、配達に伴う移動距離も5%短縮されたという。

■【まとめ】宅配ロボットの進化は実証が鍵 小売や宅配事業者も積極参加を

宅配ロボットを開発する国内企業は思いのほか少なく、ZMPやHakobotに続く企業がなかなか現れないのが現状のようだ。人の移動サービス向けに開発が進められている自動運転技術を転用できそうな気がするが、なぜか宅配ロボットの自社開発を目指す取り組みは広がらない。もったいない気分だ。

一方、配送ルートの効率化やマッチングサービスなどは参入企業が増えている印象で、すぐに導入可能で効果も表れやすい点などが支持を集めているようだ。

宅配ロボットや宅配ドローンなどの開発においては、実証実験が大きな鍵を握る。そして、より実態に即した実証を行うためにはパートナー企業が必須となる。

スーパーマーケットなどの小売業をはじめ、宅配事業者などもこれを機に宅配ロボットの導入を本格検討し、実証を進めてみてはどうだろうか。

【参考】実証実験の必要性については「【全4回特集・目次】自動運転の進化、鍵は実証実験!〜その最前線に迫る〜」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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