自動運転視野のソニーVISION-S、公道実証開始!AImotiveと協力も

CES 2021で開発の進捗を報告



出典:Sony公式YouTube動画

ソニーは2021年1月11日、開発を進める「VISION-S」プロジェクトの進捗状況をオンライン開催された技術見本市「CES 2021」で発表した。

衝撃的なデビューを飾った「CES 2020」での発表から1年。VISION-Sのプロトタイプはどのような進化を遂げたのか。この1年の動向を振り返ってみよう。







■VISION-Sとは?

100年に一度の大変革を迎えた自動車業界においてCASE(C=コネクテッド、A=自動運転、S=シェアリング・サービス、E=電動化)の概念が浸透する中、ソニー独自の観点で未来の自動車の在り方を見つめ直し、一から作製したプロトタイプが「VISION-S」だ。

自動運転機能はあくまで安全性や快適性を高める手段として位置付け、自動車による移動体験をより豊かなものへと変えていく理念が強く込められている。

「CES 2020」で初公開されたが、モックアップ(模型)ベースのコンセプトカーではなく、公道走行が可能なリアリティに溢れたプロトタイプ仕様となっていたため、大きな注目を集めた。

■VISION-Sの進化

「CES 2020」での展示を終えたVISION-Sのプロトタイプは、米ラスベガスからオーストリアのグラーツにある開発拠点へ輸送され、開発パートナーのMagna Steyr(マグナ・シュタイヤー)らとともに公道実証に向けた取り組みに着手した。

2020年7月には、センシングやオーディオ技術のさらなる深化に向け東京に搬送され、8月にはソニー本社ビル敷地内で走行デモンストレーションが行われた。

10月には、日本デザイン振興会が主催するグッドデザイン賞でベスト100に選出されたほか、ドイツのノルトライン・ヴェストファーレン・デザインセンターが主催する国際的デザイン賞のレッドドット・デザイン賞においても、デザインコンセプト部門で「Best of the Best」に輝いた。

人を包み込む「OVAL(楕円形)」をテーマに内外装からUI・UXまで作り込んだデザインと、次世代EVに向けた理念が高い評価を得たようだ。

12月には試作車両が完成し、現在オーストリアにおいて公道走行テストを開始している。走行テストは順次他の地域でも行っていく計画だ。

【参考】グッドデザイン賞受賞については「ソニーの「VISION-S」、グッドデザイン賞で高評価!自動運転レベル2搭載」も参照。

センサーが33個から40個に増加し「OVALセンシング」実現

2020年発表時、VISION-Sに搭載されたセンサーは計33個だったが、この1年でカメラ18個、レーダーや超音波センサー18個、LiDAR4個の計40個に増加し、車体全体を包み込むような「OVALセンシング」を実現している。

高速域に対応できるよう、最大300メートル先をセンシングすることができるほか、自動駐車システムに対応できるよう360度センシングも可能にしている。

新たに車線変更意思決定支援システムとして「LCDAS」も追加

自動運転機能としては、レベル2+相当の運転支援システムを搭載し、将来的にはソフトウェアアップデートによってレベル4(※国の呼称で言うところの「自動運転(限定領域)」)に相当する自動運転システムへの発展を目指す方針は変わらないが、新たに「LCDAS(車線変更意思決定支援システム)」も加わったようだ。

LCDASは、自車に接近する車両や歩行者をセンサーでモニタリングし、目視する前にドライバーに注意を喚起するシステムで、車線変更時には、デジタルサイドミラーシステムが後方からの接近車両に反応し、音とアイコンの明滅によって警告を行うほか、「360 Reality Audio」を併せて用いることで、接近車両との距離を感覚的に捉えることも可能になるという。

ドライバーモニタリングをはじめとした車室内におけるセンシングでは、ToFカメラセンサーが乗員の状態をモニタリングし、表情や仕草を読み取って集中度や疲労度を判断し、必要に応じてアラートを発する。

今後、研究開発を進めているリップリーディング・システムにより、ノイズの多い状況下でもドライバーの発話意図を確実に読み取り、コンテンツ表示やナビ操作へ反映できる技術の確立を目指す。

エンタメ関連では「360 Reality Audio」などに注目

エンターテインメント関連では、新設計のオーディオシステム「360 Reality Audio」や車内幅いっぱいに連なる「パノラミックスクリーン」に加え、自宅のPlayStationと5Gを介して遠隔で連携するリモートプレイを導入する。

UX(ユーザーエクスペリエンス)面では、直感的かつ快適に各種操作を行うことができるよう、タッチスクリーンに加えくつろいだスタイルでも操作可能なジョグダイアルや DualShockなど多彩な入力スタイルを搭載した。

■開発の参画企業に新たにハンガリーのAImotive

VISION-S開発に関わるパートナーは、マグナ・シュタイヤーをはじめボッシュ、コンチネンタル、ヴァレオ、ZFといった大手サプライヤーが顔を並べている。ソニーの取り組みに対する関心の高さの表れといえるだろう。

このほかにもVodafoneやNVIDIA、HERE Technologies、AWS、BlackBerry、Qualcommなどが名を連ねているが、2021年1月に注目すべき1社の参画が発表された。ハンガリーに本拠を構えるAImotiveだ。

同社は自動運転開発を手掛ける2015年創業のスタートアップで、レベル4に対応した自動運転ソフトウェア「aiDrive」やシミュレーション開発ツールの「aiSim」、ハードウェアアクセラレターの「aiWare」などのソリューションを展開している。

ソニーとの協業では、aiDrive の活用によりレベル2+のADAS機能を提供するほか、開発を効率化するためaiSimなども積極的に取り入れていく方針のようだ。ソニーの高度なセンシング技術と結びつくことで、近い将来レベル4を達成する素地となるパートナーシップと言えそうだ。

■【まとめ】2021年もさらなる進化

着実に進化を遂げるVISION-S。2021年も、公道実証を積み重ねることでいっそう完成度を高めていくことはほぼ間違いない。

気になるのは、やはり将来的な製品化だ。東京でお披露目された際、開発担当者は「現時点で製造や販売は考えていない」と回答していた。現時点ではあくまで次世代自動車の在り方を追求する開発プロジェクトという認識なのだろう。

しかし、将来的に車内における新たなエンタメソリューションなどを展開していくことなども想定の内と思われる。VISION-Sで培われた技術が将来どのような形で社会に還元されていくか、今から注目したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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