中国のEVメーカー「NIO」を徹底解剖!独自開発の自動運転技術にも注目

Mobileyeと協業、株価の伸び率はテスラ超え



2021年に発表されたNIOの新車種「ET7」=出典:NIOウェブサイト

中国の新興EVメーカーNIO(上海蔚来汽車)の業績が好調だ。EV(電気自動車)に特化した事業展開により、創業わずか4年足らずで量産車の開発・納車や株式上場を成し遂げた手腕は「中国版テスラ」の異名を持つ。

中国版テスラの実力はどれほどのものなのか。概要や開発技術、サービスなどに迫ってみた。







■NIOの企業概要
NIOは2014年創業に創業したEV開発・製造企業

NIOは2014年11月、実業家・起業家の李斌(英名:ウィリアム・リー)氏らが中国内で設立したEV開発・製造企業。設立当時の社名はNextEVで、2017年にNIOに改名した。会長兼CEOを務めるリー氏は、自動車産業を対象にインターネットサービスを展開するBitautoなどを立ち上げた経歴を持つ。

リー氏は「私たちの目標は、ユーザーにとって楽しいライフスタイルを形作ること」とし、自動車業界におけるプレミアムサービスの意味を再定義することを念頭に事業を進めているようだ。

現在、上海にグローバル本社とR&Dセンター、合肥に中国本社と製造センター、北京にソフトウェアのグローバルR&Dセンターを構えるほか、米カリフォルニア州サンノゼに米国本社とグローバルR&Dセンター、ドイツのミュンヘンにグローバルデザインセンター、英オックスフォードにグローバルR&Dセンターを設立するなどグローバル展開を図っている。

2017年末に量産モデル「ES8」を発売
初の量産モデル「ES8」=出典:NIO公式サイト

2016年に最初のモデルとなるハイスペック2ドアスポーツEV「EP9」を発表し、一躍注目を集める。最高速度300キロ超のいわゆるスーパーカーで、2017年5月にドイツのサーキット・ニュルブルクリンクで当時のレコードとなる最速ラップタイムをたたき出した。EVとしては2021年1月現在なお最速の記録だ。

2017年12月の自社イベントでは、初の量産モデルとなるプレミアムSUVタイプのEV「ES8」の発売を発表し、翌2018年6月から納車を開始した。イスラエルのモービルアイが開発した当時最新の画像処理チップ「EyeQ4」を初採用したことでも注目を浴び、納入台数は6月100台、7月381台、8月1,121台、9月1,766台、10月1,573台、11月3,089台、12月3,318台と着実な伸びを見せた。

2018年9月には、ニューヨーク証券取引所への新規株式公開(IPO)が正式に発表され、注目度は最高潮に達した。同年12月には、量産車第2号となるSUV「ES6」の発売を発表している。

景気低迷やリコールで一転苦境に

とんとん拍子で上場にこぎつけたNIOだが、2019年に入ると事態は一転する。新車特有のプレミアム感が徐々に薄れると同時に、米中貿易紛争や政府のエコカー補助削減などを背景に需要が減退し、納入台数は2019年1月1,805台、2月811台、3月1,373台、4月1,124台、5月1,089台と停滞した。

6月にはES6の納入がスタートしたが、追い打ちをかけるようにES8のバッテリーが発火する事故が発生し、同月にリコールを発表する事態となった。加えて、大型資金調達による自社工場建設の計画も流れることとなった。第2四半期の事業損失は32億人民元(約520億円)に上り、リーCEOは第3四半期末までに世界の従業員を9,900人から約7,800人に削減する方針を打ち出している。

納入台数は6月1,340台、7月837台、8月1,943台、9月2,019台と一時3桁まで落ち込んだ。

モービルアイとの提携やBaaSで再び攻勢に

苦境に立たされたNIOだが、2019年11月にモービルアイと戦略的パートナーシップを結び、モービルアイのレベル4キットに基づいて設計された自動運転システムを製造することを発表した。モービルアイのライドシェア(ライドヘイリング)サービス向けにシステムを量産する内容などが含まれているようで、新たな活路を見出した格好だ。

なお、納車台数は10月2,526台、11月2,528台、12月3,170台で推移している。

2020年に入ると新型コロナウイルスの影響で販売台数は再び陰りを見せるが、2020年2月に合肥市政府と協定を結び、NIOが中国本社を同市内に設立して事業拡大を進めること、及び長期的な成長に向け合肥市がリソースや資金を支援する予定であることなどが発表された。

政府資金のもと、NIOは4月に中国本社と生産工場を合肥に建設する計画を発表している。

2020年8月にはバッテリー供給の新会社を設立

2020年8月には、バッテリーを供給するCATL(寧徳時代)とともに新会社「Wuhan Weineng Battery Asset」を設立し、バッテリーサービスをサブスクリプション化する「BaaS(Battery as a Service)」事業に着手すると発表した。

独自のバッテリー交換テクノロジーの開発など以前から計画していたもので、BaaSによってNIOユーザーは「初期購入価格の低下や柔軟なバッテリーアップグレードオプション、バッテリー性能の保証の恩恵を受けることができる」としている。

2020年の納車台数は1月1,598台、2月707台、3月1,533台、4月3,155台、5月3,436台、6月3,740台、7月3,533台、8月3,965台、9月4,708台、10月5,055台、11月5,291台、12月7,007台となっており、再度上昇機運に包まれているようだ。

なお、2020年7月に第3弾となる量産SUV「EC6」を発売したほか、2021年1月のイベントで新型セダン「ET7」を初公開している。ET7は自動運転用に設計されたエクステリア仕様で、3.9秒で時速100キロに達するパワーと1000キロ超の航続距離を誇るという。発売は2022年となる予定。

■NIOの資金調達状況と株価の推移は?

NIOの資金調達ラウンドには、テンセントをはじめ京東、百度(バイドゥ)などが参加している。とりわけテンセントの比率が高いようだ。

2018年9月の株式公開では、初日の終値は6.6ドルだった。以後しばらく堅調に推移し、2019年2月には一時10ドルを突破したが、販売低迷とともに株価も下落し、6月に2ドル台、9月には1ドル台まで落ち込んだ。

11月ごろから復調気配となり、コロナ禍の2020年前半を過ぎると大きな躍進を見せる。5月の終値は3.98ドルだったが、6月末に7.72ドル、7月末11.94ドル、8月末19.03ドル、9月末21.22ドル、10月末30.58ドル、11月末50.53ドル、12月末48.74ドルと驚異的な伸びを見せている。

同業の米テスラもバブルと言われるほどの伸びを見せているが、2020年1年間の伸び率だけ見ると、テスラ8倍に対しNIOは13倍となっている。

新株発行や地元政府からの資金調達などが功を奏した形で、着実にクオリティやサービスの向上を図っている点が評価された印象だ。

■NIOの技術やサービス
NIOが開発する自動運転システム「NAD」

認識アルゴリズムやローカリゼーション、自社開発のプラットフォームソフトウェアを使用した自動運転システム「NAD」の構築を進めている。NADは、高速道路や都市部、駐車場、バッテリー交換のユースケースを徐々にカバーしていくという。

センシングシステムは「Aquila Super Sensing」と名付けられ、超長距離高解像度LiDARをはじめカメラやミリ波レーダー、超音波センサー、高精度ローカリゼーションユニット、ドライバーモニタリング向けカメラを含め計33台のセンシングユニットを備えている。このシステムはET7に搭載される見込みだ。

自動運転レベルなど具体的な機能には言及されていないが、将来的にレベル3以上にアップデート可能なシステム構成と思われる。

実用化済みのADAS「NIOパイロット」

すでに市販化されている3車種には、「EyeQ4」を搭載した自社開発の「NIOパイロット」を搭載しており、20を超えるドライバー支援機能を提供するほか、無線アップデートによって常に最新の状態を保持できるという。

また、各車にはAIアシスタントシステム「NOMI」も搭載されており、乗員と自動車のコミュニケーションを図っている。

NIO Powerシステム

世界初のスマートパワーエコシステム・電源ソリューションとして展開しているのが「NIO Power」だ。クラウドによってシステムは強化され、バッテリーの充電や交換、さらにはアップグレード可能なバッテリーを備えた電力サービスシステムを提供し、すべてのシナリオに対応する電力サービスをユーザーに提供するという。

充電ネットワークの充実も図っており、バッテリー交換を3分で完了する「NIOパワースワップ」や、アプリで呼ぶことができる車両タイプの「PowerMobile」などのサービス展開にも力を入れているようだ。

アフターサービスも充実

NIOオーナーは、時間や走行距離の制限なく生涯無料の品質保証やロードサイドアシスタンス、コネクテッドサービス(上限あり)を利用できる。こうしたプレミアム感も大きな武器だ。

■【まとめ】カギ握る自社生産体制の構築

NIOの今後の課題は、自社生産体制の構築だ。これまでは安徽江淮汽車(JAC)に製造委託していたが、テスラ同様、自前の生産体制を確立することで業績は飛躍的に増す。

車両製造に関わる許可やJACとの契約などもあるだろうが、自動車メーカーとして独り立ちするには必ず通らねばならない道となる。

テスラは2021年の生産台数目標を100万台超と掲げているが、NIOは果たしてどこまで伸ばすことができるのか。2021年の動向に注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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