完全自動運転が可能な自動運転バスや自動運転タクシーには乗務員がいないため、障害がある人などの交通制約者に対するデザイン上の配慮が一層必要となる。こうした視点での基礎調査が行われ、その報告書が2022年2月23日までに公開された。
■車内レイアウト案などを作成し、交通制約者が評価
この調査を実施したのは、NTTデータ経営研究所。内閣府が主導する「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の事業を受託する形で行われた。
調査の目的は、車いす利用者や視覚・聴覚などに障がいのある人、ベビーカーを使用する人などの交通制約者でも、安心して1人で自動運転バスを利用できるよう、実用化に向けて必要な要件を明らかにすることだ。
NTTデータ経営研究所は調査結果に基づき、交通制約者のニーズなどについての分析や自動運転バスの車内レイアウト案の作成などを行い、交通制約者からの評価を受けた上で、最終的に報告書としてまとめた。
■「車いす固定装置」の導入などを提言
報告書の名称は「交通制約者に優しいバスに係る基礎調査に基づくデザイン実装要件の構想と留意点」だ。
自動運転バスのデザインレイアウト案では、交通制約者の困り事を解決するデザインレイアウトとして、車内で車いすを容易に固定できる「車いす固定装置」を導入することが提言されている。
バスの床に設置された固定具に車いす側に取り付けた留め具を通し、ワンタッチで固定できる仕組みが例として紹介されている。さまざまな車椅子のタイプに対応できる留め具や構造が必要になることも指摘されている。
また、自動運転バスが利用しやすいように改良されている点を周知することや、交通制約者が1人で自動運転バスに乗れるように周辺設備を改善することの重要性にも触れられている。
■社会における「実用化」に向けて
さまざまな人が安心に利用できるようになって初めて、自動運転バスが社会において「実用化」されたと言える。そういった観点で、今回の報告書は非常に価値がある内容だと言えそうだ。
詳しい内容はプレスリリース「交通制約者に優しい自動運転バスのデザインレイアウト案を公開」から確認できる。
【参考】関連記事としては「自動運転車、「ハンドルがない」のにデザインはほぼ変わらず?」も参照。