【2022年6月の自動運転ラボ10大ニュース】レベル4市販車発売計画が明らかに

百度合弁がレベル4コンセプトカー発表



2022年6月は、自動運転時代がものすごいスピードで迫ってくるようなニュースが飛び交った。中国百度(バイドゥ)の合弁がレベル4搭載車両のコンセプトカーを発表し、2023年にも納車を開始するという。







レベル3の公道走行における国際基準も大幅な緩和が合意に達し、実用域に見合う性能を発揮できるようになりそうだ。

着々と社会実装が進む自動運転技術。2022年6月の10大ニュースを振り返っていこう。

■自動運転業界、「ルミナーに転職」相次ぐ AppleTeslaから(2022年6月1日付)

LiDAR開発を手掛ける米Luminar Technologiesに優秀なエンジニアが続々と集まっているようだ。近々では、Appleの自動運転車開発プロジェクトでマネージャーを務めていたCJ Moore氏の加入が発表されたようだ。

これまでに、トヨタやボルボ・カーズ、モービルアイ、ダイムラートラックス、上海汽車(SAIC)など多くの企業と提携し、開発力強化とともにLiDAR市場におけるシェアを獲得してきた。

日産が2022年4月に発表した最新の「グラウンド・トゥルース・パーセプション(Ground truth perception)技術」においても、Luminar Technologies製品が採用されるなど、業界における地位や信頼性はとどまることなく高まり続けている印象だ。

自動運転技術の実用化とともにLiDAR各社の競争は激しさを増し、大手サプライヤーも開発と量産化を本格化させている。今後、各社の業績は徐々に明暗が分かれていくことになる。Luminarが勝ち組となってより存在感を高めていくことになるのか、引き続き注目したい。

■米当局、自動運転の「開放路線」を修正か 初の許可停止(2022年6月2日付)

カリフォルニア州の道路管理局(DMV)が、自動運転開発を進める中国Pony.aiの公道走行ライセンスを停止した。

同社は、同州におけるセーフティドライバー付き、及びドライバーレスの各ライセンスを所有していたが、実証中の事故によりドライバーレスライセンスはすでに停止されており、今回新たにセーフティドライバー付きのライセンスも停止された。

DMVによると、登録しているセーフティドライバー71人のうち、3人の運転記録が問題視されたようだ。

同州では、2022年5月時点でセーフティドライバー付き47社、ドライバーレス7社がそれぞれ公道走行ライセンスを取得している。公道実証の聖地と言えるほど自動運転開発が盛んな同州だが、本格実用化のフェーズに到達したことを受け、規則の運用を厳格化した可能性もありそうだ。

■パーク24、空飛ぶクルマの「空港」設置へ 関西で新事業(2022年6月3日付)

パーク24、あいおいニッセイ同和損害保険、兼松、離着陸インフラの設計・整備を手がける英Skyportsの4社が業務提携を交わし、空飛ぶクルマの離着陸場開発を共同で進めるとともに、時間貸駐車場やカーシェアリング、空飛ぶクルマが融合した事業の検討に着手すると発表した。

パーク24が管理する駐車場の中からバーティポートに適した場所を検討し、空飛ぶクルマ用の離着陸拠点や専用の充電施設などを整備していく。大阪・関西エリアを中心に事業性評価を含む共同調査を実施していく方針だ。

また、利用者のファーストマイルやラストマイルの移動手段として、パーク24が展開するカーシェアサービスの活用についても検討を進めていく。

空飛ぶクルマの実用化に先立ってインフラやMaaS面における事業化を進め、早期社会実装に向けた環境整備を進めるとともに主導権を握る構えのようだ。

空飛ぶクルマの実用化が予定されている2025年開催の大阪・関西万博と連動する動きが今後出てくるかもしれず、引き続き各社の動向に注目したい。

■世界初「自動運転レベル4市販車」、中国・百度が発売へ(2022年6月16日付)

中国百度(バイドゥ)と浙江吉利控股集団(Geely)の合弁・集度汽車(Jidu Auto)が初のコンセプトカー「ROBO-01」を発表した。レベル4搭載のEV(電気自動車)で、2022年秋に量産モデルを発表し、予約販売・生産を進め2023年中にも納品を開始する計画のようだ。

Apolloの自動運転システムやJiduが独自開発した「SOAキャビンドライビングインテグレーション」などのテクノロジーをベースに冗長性のある高度な自動運転を実現し、高速道路や都市、駐車場でレベル4を実現可能としている。

NVIDIAのOrin Xチップを2つ搭載し、LiDAR2基、ミリ波レーダー5基、超音波レーダーとカメラをそれぞれ12基の計31基の外部センサーを搭載する。一部報道によると、価格は3万ドル(約400万円)を超える見通しという。

秋の広州モーターショーでは、2番目の量産モデルを発表することも明かしている。ロボットカー時代の本格的な幕開けとなるか、今後の動向に要注目だ。

■自動運転車の事故、Waymoが62件で最多 米当局が公表(2022年6月20日付)

NHTSA(米運輸省道路交通安全局)が、自動運転システムやレベル2ADAS(先進運転支援システム)のインシデントレポートを公表した。2021年7月以降に発生した衝突件数は、自動運転ではWaymoが62件、レベル2ではテスラが273件で最多となっているようだ。

NHTSAは2021年6月に自動運転システムとレベル2ADAS搭載車両を対象にシステム作動時における特定の衝突事案を報告するようメーカーやオペレーターに義務づけており、この1年の状況を取りまとめた。

レポートによると、衝突件数は多い順に、自動運転がWaymo、Transdev、Cruise、GM、Zoox、レベル2がテスラ、ホンダ、スバル、フォード、トヨタとなっている。一方、州別ではカリフォルニア州が自動運転、レベル2とも群を抜いて多い結果となっている。

あくまで件数ベースのため、上位となった各メーカーのシステムの信頼性に直結するわけではないが、こうした事案を取りまとめる社会的意義は大きいものと思われる。情報共有・公表により各メーカーの意識向上や技能向上を図るとともに、利用者サイドが自動運転やADASに対する正しい認識を深めるきっかけにもなる。

一定の基準のもと、こうした取り組みが日本をはじめ国際的に広がっていくことが望まれる。

■ステランティス、2024年にレベル3自動運転車を展開へ(2022年6月21日付)

14の自動車ブランドを抱えるステランティスが、2024年にもレベル3の市場化を開始することが判明した。LiDARを供給するサプライヤー大手の仏Valeoが明かした格好だ。

Valeoによると、ステランティスはValeoの第3世代LiDARを採用し、複数ブランドに2024年から搭載を初めてレベル3の認可を受ける計画としている。なお、Valeoの第3世代LiDARは、第2世代の約50倍の解像度を誇り、150メートル先の物体を識別可能という。

ホンダを筆頭に、メルセデス・ベンツやBMW、ボルボ・カーズなどが相次いでレベル3の市場化を推し進めているが、また1つ巨大グループがレベル3市場への参入を正式に目指す格好となった。

レベル3の市場化が世界的に加速する中、トヨタや日産などの日本勢の動向にも今後注目したいところだ。

■米テキサス州、自動運転トラックの「メッカ」に(2022年6月23日付)

米テキサス州で、自動運転トラックの走行実証が相次いでいるようだ。自動運転車が公道走行するための要件は各州が個別に定めており、厳格に規制する州もあれば公道実証を奨励している州もある。テキサス州は後者にあたり、開発企業が集まりやすい環境となっているほか、貨物物流のマーケットが大きいことなども要因となっているようだ。

ロイター通信によると、テキサス州の自動運転法は、公道実証に対し特別な登録やデータ共有、保険要件などを課していないという。

同州で実証を行う企業は、記事では米Aurora Innovationや中国系のTuSimpleを挙げているが、このほかにも米Kodiak Roboticsや米Embark Trucks、米Waymoなども同州で実証を行っている。また、スウェーデンのEinrideも米国本社を州都オースティンに構えることが報じられている。

安全を危惧する声も挙がっているようだが、開発や社会実装を促進し、安全な交通社会の早期実現を目指す動きも当然重要だ。社会受容性を高め、地域で自動運転の普及を応援できるような体制の構築が望ましいのは言うまでもないだろう。

■トヨタの「自動運転レベル2」、1年余りでVer4.0に進化!(2022年6月24日付)

ハンズオフ運転を可能とするトヨタのADAS「Advanced Drive」がアップデートを重ね、登場から1年余りでVer4.0に達した。日進月歩の進化を遂げているようだ。

これまでに、Advanced Driveが使用可能となるまでの時間短縮や車線変更支援を提供できる場面の追加、一部区間における速度制限の緩和、合流車両に道をゆずる条件変更など、少しずつ機能拡張や安全性能の向上を図っている。

進化を遂げているのは、ソフトウェアだけではない。2021年4月から10月に生産された「Toyota Teammate Advanced Drive」 搭載モデルを対象に、今後予定のソフトウェアアップデートに向け車の側方・後方にLiDARを取り付けるハードウェアアップデートを行っているのだ。

上記はもともと搭載予定だったLiDARを後付けした格好だが、ハードウェアであるセンサーを取り換えることが可能となれば、ソフトウェアアップデートと合わせて大幅な機能向上を図ることが可能になる。近い将来、レベル3に進化も?……と勘繰りたくなるほどだ。

トヨタは自動運転やADASの研究開発を目的に、Advanced Drive搭載車などを対象に特定の道路走行時などにおける車載カメラの走行環境画像収集も開始している。今後どのような形で最新技術を実装していくのか、要注目だ。

■フェラーリCEO「自動運転化しない」宣言(2022年6月25日付)

高級スポーツ車の代名詞的存在であるフェラーリのベネディット・ヴィーニャCEO(最高経営責任者)が、自動運転の開発を行わない方針であることを明かしたようだ。

自社主催イベントの席上、自動運転に関する記者の質問にヴィーニャCEOが回答した。高級スポーツ車のだいご味である運転する楽しさや操る楽しさをスポイルしてしまうことを危惧しているようだ。ランボルギーニなども同様の方針を示しており、開発はADASにとどめるようだ。

ただ、自動運転技術は必ずしも自動化を強制するものではない。手動運転のバックグラウンドでひっそりと作動し続け、事故など万が一の状況を予測した際に表に出てきて自動車を制御するようなシステムも可能になるはずだ。こうしたシステムが確立した際、改めて各社がどのような戦略を打ち出すのか注目したいところだ。

【参考】詳しくは「フェラーリCEO「自動運転化しない」宣言」を参照。

■自動運転、国連が上限時速130キロに緩和!車線変更も容認(2022年6月27日付)

国連の自動車基準調和世界フォーラム(WP.29)で、自動運転に関する新たな議論が進んだようだ。国土交通省によると、自動車線維持システム(ALKS)の国際基準の改正などとともに、高速道路における自動運転レベル3の速度上限が時速130キロ以下に引き上げられ、車線変更も可能になった。

国連協定では、2020年6月、高速道路における車線変更なし(車線維持)での時速60キロ以下のレベル3走行を乗用車に限って認めることに合意した。その後、2021年11月にはすべての乗用車やバス、トラックに対象を拡大している。

今回の会合では、より高度な自動運転の実現に向け、上限速度を60キロから130キロに一気に引き上げたほか、車線変更機能の追加についても合意がなされたようだ。

この規則改正により、高速道路におけるレベル3は大きく自由度を増すことになる。従来の「渋滞中」などのシステム作動要件の緩和が可能になり、通常の高速道路利用におけるレベル3利用の道が拓けたものと思われる。

レベル3搭載車種が増加を始めたばかりだが、今後はシステム作動条件となるODD(運行設計領域)の設定にも大きな注目が集まることになりそうだ。

■【まとめ】自動運転の社会実装スピードが加速

レベル3の上限速度が時速130キロに引き上げられ、レベル4市販車が2023年にも登場する――。自動運転の社会実装スピードが一気に加速したかのようなトピックだ。

レベル3の市場化が進む中、渋滞時以外の実用域におけるレベル3を真っ先に達成する企業はどこか。レベル4市販車はどれほどの性能を発揮するものなのか。興味が尽きないところだ。

2022年7月もこれらに負けないビッグニュースが飛び出すのか、要注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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