フェラーリCEO「自動運転化しない」宣言

あくまで「運転の楽しさ」追求



ベネディット・ヴィーニャCEO=出典:フェラーリ公式サイト

各自動車メーカーが競うように自動運転車の開発を進める中、イタリアの超高級車メーカー・フェラーリのCEO(最高経営責任者)が語った自動運転に関する内容に注目が集まっている。

CEOのベネディット・ヴィーニャ氏は2022年6月上旬に行われたイベントで、「完全自動運転のフェラーリを見ることができるか?」という記者からの質問に対し、フェラーリは自動運転の開発は行わない方針であることを表明した。


「No customer is going to spend money for the computer in the car to enjoy the drive」(ドライブすることを楽しむために、車載コンピューターにお金を使う顧客はいない)と述べ、フェラーリの顧客は自動運転化を求めていない、と強調した。

■フェラーリに乗ったAI専門家たちの感想

フェラーリと自動運転については、あるエピソードがある。米メディアの報道をもとにそのエピソードを紹介しよう。次の通りだ。

AI(人工知能)の専門家たちが「フェラーリは自動運転技術を導入するべき」と提案しようとした。それを受けヴィーニャCEOは専門家たちをサーキットでフェラーリに乗せた。フェラーリでの走行を終えたAIの専門家たちは「我々のプレゼンは無駄だ」と口にしたという。

どういうことかというと、AIの専門家たちは「フェラーリは人が運転してこそ楽しめる車」だと悟った、ということだ。「フェラーリと自動運転化は相容れないこと・・・」。ヴィーニャCEOはAIの専門家たちにそのことを分からせようとして、フェラーリに乗せたのだろう。


フェラーリも運転支援システムの開発は続けているが、人が運転に一切関与しない水準の技術がフェラーリに搭載される可能性は当面はなさそうだ。

■ランボルギーニも消極的、一方でメルセデスは・・・

超高級スポーツカーメーカーのランボルギーニも、自動運転車の開発に消極的だと言われている。運転の楽しさを「至福」レベルまで高めることを追求してきた超高級スポーツカーメーカー。あえて自動運転化を進めないことで付加価値が保っていこうとしていると言える。

一方、独メルセデス・ベンツのように自動運転技術の開発に積極的な高級車メーカーがあることも知っておきたい。2022年5月に、自動運転レベル3(条件付き運転自動化)の有料オプション「DRIVE PILOT」の注文受付を開始することを発表している。

高級車メーカーによって異なる自動運転に対するアプローチ。興味深い。


【参考】関連記事としては「自動運転、高級車メーカーのアプローチ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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