2022年「空飛ぶクルマ」10大ニュース!国内ベンチャーも躍進

バーティポートなどの「インフラ」に商機



出典:SkyDriveプレスリリース

次世代エアモビリティとして世界各所で開発が進められている空飛ぶクルマ。徐々に市場化が始まり、予約販売契約を結ぶ例も続々と出始めている。

2022年中は、国内、及び国外でどのような進展があったのか。10大ニュースを振り返りながらこの1年の動きを追っていこう。


■空飛ぶクルマ向けの「空港」、英国で世界初オープン(2022年5月5日付)

エアポート開発を手掛ける英Urban-Air Portが、ドローンや空飛ぶクルマ向けのエアポート「Air-One」を英コベントリーに開設した。

エアポート開発を手掛ける企業は少なくないが、同社は空飛ぶクルマ向けのエアポート=バーティポートの開発に特化した数少ない企業の1つで、今後5年間で200拠点以上を設ける計画を立てている。日本関連では、ブルーイノベーションがバーティポートの早期実用化に向けポートの共同開発と国内実証を行う覚書を交わしている。

空飛ぶクルマの社会実装に向けては、バーティポートをはじめとしたインフラ関連の要件確立なども必須であり、機体の開発とともに関係各所で協議が進められている。

空飛ぶクルマの離着陸場となるだけに、こうしたインフラ関連の動向にも要注目だ。



■空飛ぶクルマ開発のテトラ、4.5億円新規調達(2022年6月25日付)

国内有力スタートアップのテトラ・アビエーションが計4.5億円の資金調達を完了したと発表した。シードラウンドが終了し、企業評価額は約38億円、累計調達額は6.7億円に上り、現在はシリーズAに向けて調整中という。

2018年設立の同社は、ボーイングが後援するエアモビリティの開発コンテスト「GoFly」に出場し、全824チームの中で唯一の受賞チームとなり、一躍脚光を浴びた。

また、日本企業として初めてeVTOLの試験飛行許可を米国連邦航空局(FAA)から取得するなど、海外スタートアップに引けをとらない技術と開発体制で空飛ぶクルマの開発を進めている。

すでにeVTOL「Mk-5」の個人向け予約販売を行っており、2022年度中の納入開始を目指している。日米において一般公開のもと有人飛行を含めた飛行試験を実施し、米国でのアマチュアビルド市場における認証を取得する計画という。

2023年も世界を舞台にした活躍とさらなる飛躍に期待したい。

■「車のハンドル」で操縦する空飛ぶクルマ、中国で話題に(2022年7月20日付)

中国EVメーカーXpeng Motors傘下で空飛ぶクルマの開発を手掛けるHT Aeroの開発機体がちょっとした話題となっているようだ。見た目はよくあるドローンタイプのモデルだが、操縦桿が自動車用のハンドルのような形をしているのだ。

画像や映像を見てもらうと分かるが、想像以上に「自動車のハンドル」仕様となっている。将来、陸上走行が可能な文字通りの「空飛ぶクルマ」開発につなげる布石だろうか……などと勘繰りたくなる。

自動運転車においても、市販車をベースとしないオリジナルモデルの多くは、ハンドルやペダルといった従来の手動制御装置を備えず、遠隔操作やゲームコントローラーのような制御装置を採用している。

次世代モビリティの開発においてはもはや既成概念は通用しない。効果的かつ効率的な手法をどん欲に採用していった結果、画期的な装置やモビリティが誕生するのだろう。

■VW、中国の富裕層狙った「空飛ぶクルマ」の試作機発表(2022年8月15日付)

フォルクスワーゲン(VW)グループチャイナが、eVTOLのプロトタイプ「V.MO」を発表した。中国法人は2020年にeVTOLの開発プロジェクトを立ち上げ、集中的な研究を続けてきた。2023年に最初のリフトオフを計画しているという。

プロトタイプのコンセプトは、既存の自動運転ソリューションとバッテリー技術に基づいており、垂直揚力用の8つのローターと水平飛行用の2つのプロペラで垂直離着陸や飛行を行う。最大4人の乗客を乗せ、200キロを移動できるという。

中国から強力な政治的支援を受けていることから、VWとしても中国発の技術となったようだ。

空飛ぶクルマ開発に本格着手する自動車メーカーが徐々に増えており、開発や製造過程における協業などが今後ますます加速する可能性がある。

国内では、トヨタが米Joby Aviationと協業を進めるほか、ホンダがeVTOLの独自開発に着手している。

■JALなど3社、東京都内で「空飛ぶクルマ」の運航実証実施へ(2022年8月15日付)

日本航空と三菱地所、兼松の3社が、東京都の事業のもと3カ年にわたり空飛ぶクルマの社会実装に向けた実証を都内で行うと発表した。

2022年度は、東京都内において、空飛ぶクルマの高密度・高頻度な運航を可能にする空飛ぶクルマ用離着陸場の設置場所や実装にあたっての課題整理などを進めるとともに、想定路線における売上や運航コスト、将来の事業拡張性を試算し、東京都における市場規模や事業持続性の検証を行っていく。

2023年度は2カ所のヘリポート設置を検討し、ヘリコプターを活用した遊覧飛行やヘリポート間の移動・チャーター便を提供するなどの運航実証を進める。

2024年度は、空飛ぶクルマ用離着陸場の設置・運用事業を展開する英Skyportsの協力のもと専用離着陸場の設置を検討し、当該ポートでの空飛ぶクルマの運航実証や地上オペレーションの検証を行う。

国内では、2025年開催予定の大阪・関西万博が大きな指標となっているが、東京都も指をくわえて待っているわけではなく、着々と実用化に向けた事業を進めているようだ。

■米航空大手、空飛ぶクルマに1,000万ドルの事前支払い(2022年8月18日付)

米Archer Aviationが、ユナイテッド航空から航空機100機分の保証金1,000万ドル(約13億円)を受け取ったと発表した。両社は2021年に最大200機の売買に合意しており、今回はそのうちの100機分におけるデポジットだ。

両社は、ニューアークのリバティー国際空港からマンハッタンヘリポートまでを結ぶルートを最初のエアタクシーサービスとする計画を掲げている。ニューヨーク大都市圏とその周辺の既存航空インフラを最初の証券に見据えるなど、サービス具体化に向けた検討を進めているようだ。

Archerは、設計が規制に準拠し市場に投入できるかどうかを判断するために必要な前提条件となる予備設計審査(PDR)を完了し、現在開発と商品化に向けた次の段階に進んでいるという。

一方、ユナイテッド航空は2022年9月、ブラジルの航空機メーカーエンブラエルの子会社Eve Urban Air Mobilityに1,500万ドルを出資し、4人乗りのeVTOL200機と追加オプション200機に渡る条件付きの売買契約を締結したことも発表している。

空の輸送経験豊富な航空会社が空飛ぶクルマ領域に本腰を入れ始めており、量産化とともに社会実装が一気に進む可能性がありそうだ。

■Google創業者の空飛ぶクルマ企業、突然の閉鎖宣言!次の展開は?(2022年9月23日付)

空飛ぶクルマ開発を進めてきた米Kittyhawkが、事業停止を決定したようだ。同社自らがSNS「LinkedIn」に投稿し、判明した。

同社は、Google XやUdacityの創設者として知られるセバスチャン・スラン氏が2010年に設立したスタートアップで、グーグル元CEOのラリー・ペイジ氏が出資するなど業界では有力視されていた1社だ。

同社製eVTOL「Cora」は、2018年に乗客を運ぶ遠隔操縦航空機として世界で初めてアメリカ連邦航空局(FAA)の認証基準を確立したほか、2019年にはCoraの社会実装に向けボーイングと合弁「Wisk」を設立している。

おそらく、開発に軸を置いていたKittyhawkを解散し、商用化に向けWiskの事業に一本化していくものと思われる。ボーイングという絶大なパートナーとともに今後どのような動きを見せていくのか、引き続き注目だ。

■スペイン警察、中国EHangの空飛ぶクルマ導入!試験をパス(2022年10月5日付)

中国のEHangと提携するスペイン国家警察が、同社製eVTOL「EH216」の初飛行を行い、試験運用を開始したようだ。

両者は2021年10月に空飛ぶクルマ導入に向けた検討を開始しており、2022年10月までに全てのテストフライトに合格し正式に導入することが決まった。

スペイン国家警察は、核や放射線、細菌など化学的リスクのある汚染地域へのアクセスをはじめ、機敏で効率的な空中移動を必要とする警察サービスなどへの導入を進めていく構えだ。

海外の公的機関が導入したという事実は、同社の信頼性を高めることにつながる。今後、同社のeVTOLの導入を検討する動きがさらに活発になりそうだ。

EHang は空飛ぶクルマ分野で世界をリードする1社で、すでに100機を軽く超える販売実績を有する。日本でも、岡山倉敷水島航空宇宙産業クラスター研究会がEH216を購入しているほか、AirXが国内におけるプレセールス契約を結び、2025年開催予定の大阪・関西万博での運航を目指している。

■日の丸ベンチャーの空飛ぶクルマ、一気に100機も売れた!?(2022年12月2日付)

SkyDriveが、インフラ開発を手掛けるベトナムのPacific Groupと覚書を交わし、最大100機のプレオーダーに合意したと発表した。エアモビリティに活路を見出し、深刻な交通渋滞の解消を図っていく構えだ。

Pacific Groupは、SkyDriveが開発を進める商用eVTOL「SkyDrive式SD-05型」を10機、追加オプションとして90機オーダーした。SD-05はパイロット含め2人乗りで、パイロットの操縦をコンピュータ制御でアシストして安定した飛行を実現する。

同機は、2025年開催予定の大阪・関西万博における飛行実現をロードマップの一角に据えている。型式証明取得に向けた取り組みも進んでおり、耐空性審査要領第II部を基に型式証明審査の適用基準を構築している。2025年までに型式証明取得を目指す格好だ。

大きな節目となる2025年に向け、国内、そして海外展開も具体化し始めた同社の今後の動向に引き続き注目だ。

■空飛ぶクルマ、米Alefが「廉価版」を約500万円で発売予定(2022年12月10日付)

米スタートアップのAlef Aeronauticsが、空飛ぶクルマの廉価版「Model Z」を販売予定だと発表したようだ。その価格は驚きの3万5,000ドル(約480万円)という。

同社が開発を進めるモデルは、クルマとしての陸上走行とeVTOLとしての飛行を両立した、文字通りの「空飛ぶクルマ」だ。空飛ぶクルマにはいくつかのタイプがあるが、陸上走行と垂直離着陸を両立させたモデルは意外と少ない。廉価版のスペックは不明だが、こうした空飛ぶクルマが500万円を下回るのは破格と言える。

なお、同社の通常モデル「Model A」は30万ドル(約4,100万円)で、現在予約受付中だ。2025年末に納入見込みのようだ。

量産・普及が進んだ将来、空飛ぶクルマの相場は果たしていくらになるのか。興味が尽きないところだ。

■【まとめ】大型契約続々 インフラ整備に向けた取り組みも進展

航空会社などと大型契約を結ぶ有力海外勢が続々と登場しており、すでにIPOの動きも出ている。本格的な社会実装を前にこうした動きが先行するのは、自動運転分野とある意味同一だ。

国内勢も、テトラ・アビエーションやSkyDriveを筆頭に温度が上がっている印象で、2023年のさらなる活躍に期待が膨らむところだ。

また、実用化に向けバーティポートに求められる要件も固まり始め、インフラ開発・整備も大きく進展していくことが予想される。

2023年はどのような動きがあるのか、引き続き注目していきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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