VW、中国の富裕層狙った「空飛ぶクルマ」の試作機発表

名称は「V.MO」、大都市間の移動向け



出典:VWプレスリリース

ドイツ自動車メーカー大手のフォルクスワーゲン(VW)の中国グループはこのほど、空飛ぶクルマのプロトタイプとなる「V.MO」を発表した。これが同社にとって初の空飛ぶクルマとなるようだ。

公表されている動画や写真を見てみると、車両はヘリコプターのような見た目をしている。本体に車輪は付いておらず、あくまでも飛行専用という形になりそうだ。


同社はV.MOを、ビジネスやレジャーで大都市間を移動するエリートのためのプライベートeVTOL(電動垂直離着陸機)として打ち出しており、2023年夏までには、改良した最新のプロトタイプをリリースし、さらに高度な試験飛行を実施する予定だという。

▼動画は以下のVWのプレスリリースから確認できる
https://www.volkswagen-newsroom.com/en/press-releases/meet-the-vmo-volkswagen-group-china-unveils-state-of-the-art-passenger-drone-prototype-15116

■気になるスペックは?

V.MOは全長11.2m、全幅10.6mとなっている。4人乗りを想定しており、最大移動距離200キロとなっている。

同機には、垂直方向に離着陸するための8つのローターと、水平飛行をするための2つのプロペラが装備されている。操作は自動操縦となっており、乗客が目的地を選択するだけで車両システムが安全に誘導するという。


VW中国グループのプロジェクトマネージャー兼プロダクトオーナーのZhou Jin氏は「パイロット免許がなくても、誰もが飛行機を操縦できるようになる世界に向かっている」とコメントしている。なお、ユーザーの要望に応じてパイロットも操縦できる機体も開発するという。

ちなみに、V.MOは黒と金色でデザインされていることから別名「フライングタイガー」とも呼ばれている。

■中国の富裕層向けに販売へ

V.MOのターゲットは中国の富裕層で、VIP向けのエアタクシーサービスなどでの使用が想定されている。

VW中国グループのStephan WöllensteinCEO は、「このプロジェクトは、中国の若い専門家チームがゼロから始めた先駆的なもの。V.MOの発売は、都市型空の旅に向けた私たちのエキサイティングな旅における多くの驚くべきマイルストーンの最初の一歩であり、私たちの『中国から、中国のために』というミッションの完璧な例となる」とコメントを出している。


V.MOは中国国内で運用することを強調しているが、ゆくゆくは世界で発売する可能性もあいそうだ。

■事業拡大へ中国企業とタッグ

VW中国グループは空の移動市場参入に向け、中国の航空メーカーSunwardや英国のデザインコンサルタント会社Tangerineと協力してV.MOを開発してきた。

ちなみにSunwardは航空製品の開発・販売・サービスを専門としており、ライトスポーツ航空機(LSA)業界では、単発2人乗りLSAであるSunward SA60Lで市場をリードする存在だ。

また、VW中国グループは2020年、アーバンエアモビリティ(UAM)などの次世代モビリティを探求する「バーティカルモビリティプロジェクト」を立ち上げており、このプロジェクトはSunwardの子会社である Hunan Sunward Technology などの中国企業が支援している。

空飛ぶクルマは中国においても急成長を遂げており、事業拡大へ中国企業との協力は大きな役割を果たしそうだ。

【参考】関連記事としては「空飛ぶクルマ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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