eVTOL(電動垂直離着陸機)とは?「空飛ぶクルマ」の類型の一つ

直訳すると「電動垂直離着陸機」



出典:トヨタ自動車プレスリリース

eVTOLとは「electric Vertical Take-Off and Landing」の略で、「イーブイトール」と読む。直訳すると「電動垂直離着陸機」で、文字通り地面から垂直に離着陸可能な機体のことを示す。

eVTOLは「空飛ぶクルマ」の類型の一つとされており、開発が活発に行われるようになっている。空飛ぶクルマと聞くと遠い未来の夢の乗り物だと思っている人も多いだろうが、実証実験も既に盛んに行われ、少しずつではあるが実用化にも現実味が帯び始めている。


<記事の更新情報>
・2024年6月17日:市場規模のレポートや関連記事を追加
・2020年3月8日:記事初稿を公開

■eVTOLの市場規模は?

グローバル調査会社のマーケッツアンドマーケッツが2019年3月に発表した予測によれば、eVTOLの市場規模は、2025年には1億6000万ドル、2030年には4億1000万ドルまで拡大するという。

また日本の矢野経済研究所は、2050年の空飛ぶクルマ世界市場規模は180兆円を超えると予測している。機体導入や飛行ルートなどのインフラ整備が進むにつれ、世界中で加速的な成長が続くと想定しているという。

出典:矢野経済研究所

eVTOLを含む空飛ぶクルマの実用化に向け、日本では2018年に「空の移動革命に向けた官民協議会」が初開催された。同年12月には2023年の事業開始と、2030年の本格導入へ向けたロードマップを取りまとめ、官民一体となって実現に向けた取り組みを進めている。


■日本のベンチャーも参入

空飛ぶクルマの実現に向けて国内でeVTOLを開発しているベンチャー企業として注目を集めているのが、株式会社SkyDrive(スカイドライブ)やテトラ・アビエーション株式会社などだ。

SkyDrive社は有志団体「CARTIVATOR」(カーティベーター)が2018年に立ち上げた会社で、2018年12月には無人での屋外飛行試験を成功させ、2019年12月からは有人飛行試験も開始している。2020年の夏にはデモフライトの実施、2023年には空飛ぶクルマの販売を目指している。

2018年に設立されたテトラ・アビエーション株式会社は、1人乗り用の空飛ぶクルマ「teTra」を開発している。2020年2月に行われた1人乗り航空機の国際大会「GoFly」の決勝では、同大会で唯一の受賞者として世界にその名を知らしめた。

テトラ・アビエーション社は2019年に「Drone Fund」や「インキュベイトファンド」など大手企業からの資金調達に成功し、米半導体大手NVIDIA(エヌビディア)のAI(人工知能)スタートアップ支援プログラムのパートナー企業にも選出されている。


そのほか最近では、日本航空(JAL)と住友商事が米Bell TextronとeVTOLを活用したエアモビリティ分野で業務提携を発表したほか、トヨタが米Joby AviationとeVTOLの開発で協業することを発表したことも話題になった。

■eVTOLの実用化で生活が豊かに?

eVTOLの進化によって空飛ぶクルマが広く一般化すると、人々の暮らしはどう豊かになるのだろうか。

車移動でネックとなる渋滞から解放されれば移動時間を短縮できる——。人口減でより労働力が不足していっても、デリバリー分野で活躍してくれる——。災害や事故時の救助や物資の補給で大いに役立ってくれる——。少し考えただけでも、さまざまな可能性が思い浮かぶ。

空飛ぶクルマの登場はもはやそう遠い未来ではない。さらなる技術革新に期待したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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