
世界で開発が進む「空飛ぶクルマ」。ただし最近は実用化に向けての勢いがなくなっている感がある。
そんな中、英国の空飛ぶクルマ開発企業Vertical Aerospace(バーティカル・エアロスペース)は9,000万ドル(約140億円)の公募増資が完了したことを2025年1月24日に発表した。これにより調達した資金で、eVTOL(電動垂直離着陸機)の開発を継続していく。
自動運転ラボとしては、空飛ぶクルマを含む先進的な取り組みを行うスタートアップやベンチャー企業を応援しているが、実用化や商用展開が進まず、市場からは「オワコンなのでは?」という声も出てきてしまっている空飛ぶクルマ。Vertical Aerospaceには勝算があるのか。
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■総額9,000万ドルを調達した目的は?
Verical Aerospaceは2021年12月に米ニューヨーク株式市場にSPAC上場したが、2023年以降株価は低迷していた。今回の公募増資において、1,500万株の単元株取引を1株6ドルで売り出し、9,000万ドルを調達した。当初の調達目標は7,500万ドルであった。
【参考】ちなみにVerical Aerospaceの株価は2024年11月上旬は4ドル程度だったが、12月末に15ドル台まで急騰、その後、現在は5ドルを割り込む水準で取引されている。かなり荒い値動きと言える。

なお9,000万ドルという調達額には、新規投資家からの6,000万ドル以上の資金と、2024年12月に締結された投資契約に基づく米国の投資会社からの2,500万ドルが含まれている。
今回調達した資金により、Verical Aerospaceの空飛ぶクルマの最新機種「VX4」の開発を継続する。そのほか、テストおよび認証能力の拡大に伴う支出や、企業の運転資金にも充てるという。そして2028年に型式認証を取得することを目指す。
同社のプレスリリースによると、2025年の運営目標として下記が挙げられている。商用化まではまだ年数がかかるものの、2024年11月に発表した2030年末までに空飛ぶクルマ市場でリーダーシップを取るための戦略「Flightpath 2030」が加速されることが期待されている。
- フルスケールの操縦士付き翼保持および遷移飛行を実施
- 3番目のフルスケールVX4のプロトタイプを構築し、飛行させる
- 実際の使用例を示すフルスケールの操縦士付き飛行を実施する
- CAA(英国民間航空局)から飛行条件の特権を含む、追加のDOA(設計組織承認)特権を取得する
- 長距離部品を購入し、認証用の航空機生産を開始する
- 運営モデルを強化し、実行に焦点を当てたアプローチにシフトする
■空飛ぶクルマは本当に「オワコン」なのか?
Vertical Aerospaceは日本の丸紅と提携しており、2025年4月から開催される「大阪・関西万博」の空飛ぶクルマ運航事業者として選定されている。当初、同万博ではお客を乗せて商用運航を行う予定であったが断念し、デモ飛行を実施するにとどまることが決定した。
【参考】関連記事としては「万博の空飛ぶクルマ、結局は「乗客席からっぽ」で飛行か」も参照。
また2024年に開催されたパリ五輪でも、独Volocopterが5つのルートで有人運航サービスを計画していたが、こちらもとん挫し、デモフライトに切り替えている。
そういったこともあり、空飛ぶクルマは「オワコン」との意見もある。ただしまだ実用化していないため、可能性は未知数だ。Verical Aerospaceがどういった形で商用化を実現するのか、引き続き追っていきたい。
【参考】関連記事としては「トヨタ、「ほぼオワコン」ムードの空飛ぶクルマに730億円追加出資」も参照。