空飛ぶタクシーとは?定義・形態・実現時期・開発企業は?

実用化はすぐ先の未来?



アウディがエアバスなどと開発する「空飛ぶタクシー」=出典:アウディプレスリリース

自動運転技術や空飛ぶクルマの開発によって、実用化が現実味を増してきた「空飛ぶクルマ」。未来を描いた一昔前のアニメやSF映画のように、個人の移動手段が陸主体から空主体に代わるのはもはや空想の話ではない。

実用化に際しては、大半が個人や数人単位の手軽な移動・輸送を目的としており、自動運転における実用化と同様、まずタクシーとしての利活用を検討しているケースが多く、「空飛ぶタクシー」や「エアタクシー」、「フライトタクシー」などさまざまな呼称が飛び交っている。


今回はこの空飛ぶタクシーに着目し、各社の開発状況などをまとめてみた。

<記事の更新情報>
・2026年5月8日:現時点での情報にアップデート
・2019年2月1日:記事初稿を公開

■空飛ぶタクシーの形態

「空飛ぶクルマ(空飛ぶタクシー)」と聞くと、大半の人がクルマをベースに車輪や翼・プロペラなどを備え、道路を走ることもできれば空を飛ぶこともできる空陸両用機をイメージするのではないかと思うが、現在のところ空飛ぶクルマに明確な定義はない。

一般的に「電動かつ自動で垂直に離着陸する移動手段(eVTOL:電動垂直離着陸機)」を指す場合やパイロット不在で運行可能なタイプが多いが、クルマをベースに格納式のプロペラを搭載したものや、ドローンなどの無人航空機(UAV)をベースにしたもの、既存の航空機をベースに手軽な個人利用を可能にしたものなどさまざまな形態があり、開発者が何かしらの要素をもって「空飛ぶクルマ」と主張すれば、それが「空飛ぶクルマ」のカテゴリーに入るのが現状だ。

【参考】関連記事としては「eVTOL(電動垂直離着陸機)とは?「空飛ぶクルマ」の類型の一つ」も参照。


多くのスタートアップらの参入により、さまざまな技術や発想に基づいた多種多様な機体が開発されているため年々ジャンル分けが困難になっているが、大まかに3タイプに分けて説明する。

ドローン改良タイプ:最も開発が盛んなタイプ

ドローンを大型化して人を搭乗可能にしたタイプ。既存のドローン技術を応用できるため、このタイプを開発している企業は多い。電動で遠隔操作や移動制御、またはジョイスティックなどで簡単に操作ができるものが多い。ヘリコプターに近いものも、技術的にはこのタイプに含まれる。

タイヤを備えて陸路の走行を可能にしたモデル開発なども進められているが、軽量化を図る上でネックとなるため、空中移動を主としているモデルが多数を占めている。

空陸両用のクルマタイプ:地上走行と飛行を切り替えスムーズな移動を確保

通常は自動車として地上を走行しているが、格納型のプロペラや翼などを備え、空を飛ぶこともできるタイプ。自動車メーカーが関わる空飛ぶクルマ開発に多い。


アウディが2018年11月に発表したプロトタイプは、車体部分となるモジュールと人が搭乗するモジュール、空を飛ぶためのモジュールの3つに分けられ、搭乗モジュールをどちらかと連結させることで走行・飛行を可能にしている。このような分離連結型も開発が進められているようだ。

軽飛行機型:電動エンジン搭載、ハイブリッド的なモデルも

プロペラを備えず、電動エンジンなどを動力に垂直離陸を可能とするタイプ。一見すると小型の軽飛行機のようなタイプが多いが、エンジンの向きを可変することでホバリングなどを可能にしている。

また、翼を格納して地上を走行可能なモデルや、電動エンジンに加えプロペラを備えたハイブリッド的なモデルなども開発されているようだ。

■空飛ぶタクシーの開発企業

Uber(米)

空飛ぶタクシー分野における急先鋒が、ライドシェア大手の米Uber Technologies(ウーバー・テクノロジーズ)だ。同社は2017年に米航空宇宙局(NASA)と提携を結んだほか、米スタートアップKarem Aircraft社など協業を拡大し、取り組みを拡大している。

試験飛行を行う最初の都市を国際的に公募することも発表している。

ボーイング(米)

航空機世界大手の米ボーイング社も空飛ぶタクシーの開発を進めており、自動運転技術や遠隔操舵技術などを搭載した無人試験飛行を成功させたことを発表している。

無人航空開発を手掛ける米オーロラフライトサイエンス社を買収するなど空飛ぶクルマ・タクシーの開発に力を入れている。

【参考】ボーイング社の取り組みについては「米ボーイング、「空飛ぶタクシー」の試験飛行に成功 自動運転技術を搭載」も参照。

Bell Helicopter(米)

ヘリコプター大手の米Bell Helicopter(ベルヘリコプター)は、ラスベガスで2019年1月に開催されたCES2019でeVTOLタイプの航空タクシー「Bell Nexus」を発表した。

最大5人が搭乗可能なビッグサイズで、可動式の6つのローターで垂直離陸や移動を可能にする仕組みだ。オスプレイの開発ノウハウなどが生かされているという。

Kitty Hawk(米)

米カリフォルニア州に本社を構えるスタートアップのKitty Hawk(キティホーク)は、空飛ぶタクシー「Cora」の試験飛行をニュージーランドで開始したことを発表している。

ニュージーランド政府の協力のほか、ニュージーランド航空と航空タクシーサービス提供に向けた提携を交わしており、航空規制の状況を見守りながら開発・設計をさらに進めていく構えだ。実現時期は明らかにしていない。

なお、同社にはグーグル共同創業者のラリー・ペイジ氏も出資しているようだ。

Joby Aviation(米)

米カリフォルニア州を拠点とするスタートアップのJoby Aviation(ジョビー・アビエーション)は、NASAとの共同研究などを経てeVTOLの試作品を製造し、飛行試験も行っている。

トヨタ自動車系列のベンチャーキャピタルファンド「Toyota AI Ventures」や米インテルなどから総額1億ドル(約110億円)を調達したことが発表されているほか、2017年には米軍からも出資を受けているという。

アウディ(独)

独自動車メーカーのアウディは、独政府や航空機メーカーの仏エアバス、自動車デザイン会社の伊イタルデザインなどとともにフライングタクシーの実現を目指す「アーバン・エアモビリティ・プロジェクト」を立ち上げている。早ければ10年以内にフライングタクシーのサービスを提供する構えだ。

Volocopter(独)

ドイツに本拠を構えるスタートアップのVolocopter(ボロコプター)は、2017年にドバイで飛行試験を実施するなど開発する空飛ぶタクシーの完成度は高く、2020年代前半の商用機製造・販売を目指す構えだ。

同社は独ダイムラーや米インテルなどから支援を受けており、2018年には大型の資金調達計画の話なども流れている。

Lilium(独)

空飛ぶタクシー開発に向け2015年に設立された独スタートアップのLilium(リリウム)は、プロペラを備えず電気ジェットエンジンで垂直離陸を可能としたVTOLの開発を進めている。滑走路を使った離陸も可能という。

Vertical Aerospace(英)

空飛ぶタクシーの開発を進める英国のスタートアップ企業Vertical Aerospace(バーティカル・エアロスペース)。ボーイングやエアバスなど大手航空会社からベテラン航空エンジニアを引き抜いて開発を進めており、すでに英国内で試験飛行も実施し、約800キロの飛行に成功している。

【参考】バーティカル・エアロスペースの取り組みについては「空飛ぶタクシー、2022年にサービス提供開始 イギリスのバーティカル・エアロスペース社」も参照。

■空飛ぶタクシーの実現時期

現在は開発各社が飛行試験を進めており、航続距離や有人飛行など徐々にテストの中身を濃いものにしている段階だ。目途として、2023~2025年の実用化・商用化を掲げる企業が多い。

ただ、自動運転車と同様、実現には法改正や新たなルールづくりが必要となるため、世界各地で本格的にサービスが実現されるにはまだ時間がかかりそうだ。もちろん、自動運転レベル4のように、限定された領域・条件下で飛行が許可される可能性は高く、実用化第一号がどのメーカーでどこの国なのか……といった点などは注目の的になるだろう。

空飛ぶクルマや空飛ぶタクシーに関する調査を実施した株式会社AQU先端テクノロジー総研は、「2020年の東京五輪、2024年のパリ五輪、2028年のロサンゼルス五輪という世界的なイベントとともに、段階的に拡大成長してゆく」とする見解を発表している。

日本で空飛ぶクルマの開発を手掛ける「CARTIVATOR(カーティベーター)」も、独自目標として2020年の東京オリンピック開会式における聖火点灯デモを掲げている。こういった大きな舞台でのデモンストレーションの効果は限りなく大きく、また官民ともに大舞台を目指して実用化を図る動きも確かに多そうだ。

また、実証的な意味合いも込め、物流分野で先行する可能性も高い。積載量として人間が搭乗できるレベルの技術を確立できれば、格段に実証が進むものと思われる。

■【まとめ】現時点では実現していない

さまざまなタイプが開発されているが、一番の関心事はやはり実現時期だろう。多くの開発企業が2023~2025年を目途としていたが、現時点で実現はしていない。

限定条件下における先行サービスなど試験的な導入が当然先になるが、意外と早い時期に実用化され、自動運転レベル4(高度運転自動化)の自動車で陸地を走行し、空飛ぶタクシーに乗り換えて空中を移動……など、さまざまな想像を掻き立てられる。モビリティの変革はすぐそこまで近づいているのだ。


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