CARTIVATOR(カーティベーター)が開発する「空飛ぶクルマ」とは? 実現いつ? 誰が運営?

2023年の製品化目指す「SkyDrive」


5分の1スケール試作機と開発メンバー=出典:Cartivatorプレスリリース

空飛ぶクルマの開発が日本でも活気を帯び始めている。国も空飛ぶクルマの実現に向けて官民協議会を立ち上げるなど新たな産業の育成に力を入れていく方針で、今後、技術開発や制度整備などは加速化していくものと思われる。

この空飛ぶクルマの開発競争の中で先鋒に立つのが、若手の技術者有志が立ち上げた「CARTIVATOR(カーティベーター)」だ。2018年夏には株式会社も立ち上げ、2020年代の製品化もしっかりと見据えている。







今回はCARTIVATORの概要や展望について調査し、クルマが空を飛び交う社会の到来に夢を膨らませよう。

  1. 経済産業省、空飛ぶクルマの実現推進 官民で協議会設置へ
  2. 空飛ぶタクシー、2026年に1兆円市場 民間調査「利用したい」46%
  3. 空飛ぶクルマ、2020年代に日本でも 自動運転で免許不要に
  4. EUのエアタクシー、アウディ参画で試験へ
■CARTIVATORの組織概要
若手を中心に業務外有志が結成

若手の社会人を対象としたビジネスコンテスト「維新(これあらた)」での優勝を機に2012年に活動をスタートし、プロジェクトの共同代表を務める中村翼氏ら有志でCARTIVATORを発足したのがはじまり。CARTIVATORの由来は「クルマ(CAR)でワクワクする体験を生み出す(CULTIVATOR)」という想いからきているという。

自動車や航空業界をはじめ、スタートアップ関係の若手会員を中心とした業務外有志が集まっており、「モビリティを通じて次世代に夢(能力の拡張)を提供する」ことをミッションにインフラ不要の自由な移動を実現し、「2050年までに誰もがいつでも空を飛べる時代を創る」ことを目指して空飛ぶクルマの技術開発や事業開発に取り組んでいる。プロトタイプの構築や飛行制御の理論を確立し、将来的には大企業との提携による飛行機の量産化を目指していく方針だ。

2014年に空飛ぶクルマ「SkyDrive」の開発に着手し、5分の1スケール試作機の走行・飛行に成功した。クラウドファンディングでの資金集めや開発合宿などを重ね、2017年9月に「SkyDrive for Olympic」モデルの設計公開に至った。

従来の有志による活動は一般社団法人「CARTIVATOR Resource Management」(所在地:東京都新宿区/代表理事:西田基紀)として行っているが、空飛ぶクルマの実用化に向け開発や設計、製造、販売までを手掛ける株式会社SkyDrive(本社:東京都新宿区/代表取締役:福澤知浩)を2018年8月に設立している。

トヨタやパナソニックなどが支援、スポンサーは40社超に

CARTIVATORはプロボノ活動(=各分野の専門家が知識や経験を生かすボランティア活動)のため、スポンサーからの支援金や部品などにより活動資金がまかなわれているほか、技術提供などの支援も行われている。

これまでにトヨタ自動車をはじめアイシン精機、デンソー、ダイハツ工業、ジェイテクト、豊田通商、日野自動車、NEC、パナソニック、富士通、リクルートテクノロジーズなど大手40社以上が出資などの支援を行っているほか、航空・宇宙分野の研究開発の加速に向け埼玉県なども支援を表明している。

一方、SkyDrive社は、ドローン社会やエアモビリティ社会の実現を目指す「Drone Fund」から3億円の資金を調達したことを2018年11月に発表しており、研究開発を加速させていく構えだ。

■CARTIVATORの空飛ぶクルマ計画
空飛ぶクルマ「SkyDrive」、2023年製品化へ

現在開発を進めている「SkyDrive」の試作機は、世界最小サイズで公道から離陸でき、直感的に操作可能なことを特徴に掲げており、公表されているスペックによると、2人乗りの電動型で、全長3600ミリメートル、全幅は走行時1700ミリメートル、飛行時3100ミリメートル、全高は1100ミリメートルとなっている。

ドライブモードでは地上を3輪タイヤで走り、飛行モードでは四隅のフェンダー(プロペラガード)が変形してプロペラを回して垂直に浮上する。走行速度は時速60キロメートル、飛行速度は時速100キロメートルを目指すこととしている。

また、2017年10月に発表された新デザインは、小さな子どもにもわかりやすい「近未来スタイルのクルマ」として提案されており、浮遊感を感じさせるデザインが特徴となっている。今後、この浮遊感に加えてクルマの基本である安定感を融合させるといった独自の路線で進化させていく方針だ。

2018年秋に無人機飛行試験、2019年春に有人機飛行試験をそれぞれ予定。2020年には独自目標として東京オリンピック開会式における聖火点灯デモを掲げており、メーカーや大学などの研究機関、行政、スポンサー、サービス事業者が一体となったオープンネットワーク体制の構築を進める意向を示している。

その後、2023年に有人機の販売を開始し、2026年に先進国向けモデルの量産、2030年に新興国モデルの量産を開始し、2050年には誰もがいつでもどこでも飛べる時代の到来を目指すこととしている。報道によると、1台2000万円台を想定しているという。

空の移動革命に向けた官民協議会への参加

世界に先駆けた「空飛ぶクルマ」の実現に向け、経済産業省製造産業局と国土交通省航空局を中心に「空の移動革命に向けた官民協議会」が2018年8月に立ち上がり、年内を目途にロードマップを策定することとしている。

この会議にCARTIVATORも参加しており、初回の会合で空の移動の将来像に関して自社の取り組みやビジョンを語っている。

■日本と世界のCARTIVATOR以外の空飛ぶクルマ計画
NFT株式会社:連続起業家夫妻による新規事業に注目

日本人女性起業家のカプリンスキー真紀氏とカプリンスキー・ガイ氏夫妻が立ち上げたばかりのNFT株式会社も今後注目が高まりそうだ。

夫妻はベンチャー事業を次々と立ち上げる連続起業家。過去には、15カ国以上の政府関連プロジェクトのグローバルコンサルティング会社やIoT スタートアップのIQPコーポレーションなどを立ち上げており、IQPは2017年に米GEデジタルに巨額で売却されている。

カプリンスキー夫妻が次に目を付けたのが空飛ぶクルマ市場だ。米シリコンバレーに本社を構え、イスラエルに研究開発拠点を設けたNFTで、多数の航空機やドローン・UAV(無人航空機)・VTOL(垂直離着陸機)の開発実績をもつチームを集結し、陸空両用のeVTOL(電動垂直離着陸無人航空機)の実物大デモ機を開発中という。

日本拠点も2019年に設立予定で、エアモビリティを日本の基幹産業へ発展させ、自動車産業と航空産業をつなぐ架け橋を目指すこととしている。

Ehang:世界初の空飛ぶタクシーが有人飛行に成功

世界初の空飛ぶタクシーとして、1人乗りのマルチローター機「Ehang 184」を2016年に発表した中国のドローンメーカー・Ehang。以後、数千回に及ぶ飛行試験を重ね、2018年1月に米ラスベガスで開催されたCES2018で有人飛行映像を公開している。

航続時間は最長23分で、電源システムの1つが異常動作を起こしても車両は通常の飛行計画を実行し、車両とともに乗客の安全を確保することができるという。また、コンポーネントが誤動作や切断された場合なども、直ちに最寄りのエリアに着陸して安全を確保するシステムが搭載されている。

実用化に向けては、以前にもドバイでの運行計画が持ち上がるなどさまざまな情報が飛び交っていたが、公式には運行開始時期などは未定のようだ。

ANA:エアモビリティ市場に商機

自動車メーカーが完全自動運転車の開発に精を出すように、航空機メーカーも空の移動革命に向け研究を進めている。日本の航空会社・ANAは2016年にドローン事業化プロジェクトを発足し、グループの新たな事業ドメインとして「ドローン」の可能性を追求するため、ドローン事業の事業化に向けた調査や検討、検証を進めている。

商業用ドローンが人口密集地の上空を行き交うためには、有人航空機に準じた管制・運航管理システムや免許制度、各種マニュアル類などの整備が必要になり、総合的なオペレーターとしての大きなビジネス領域が生まれる可能性を念頭に据え、ドローン版管制システムの要件検討や検証、物流分野での検証などを行っているという。

Rolls Royce:ハイブリッドタイプで航続距離800キロ実現

航空機エンジンの製造などを手がける英ロールス・ロイス社も、2018年7月に英国で開催されたファーンボロー国際航空ショーでEVTOLのコンセプト車を発表している。

個人用、商用旅客用、貨物用、軍事用の柔軟な航空機プラットフォームで、ハイブリッド電気エンジンを採用しており、パワーエレクトロニクスが組み込まれた6基の推進・リフトモーターが搭載されているという。

4、5人乗りを想定しており、航続距離は約800キロメートル、巡航速度は時速約400キロという。

アウディやウーバー、アストンマーティンなども空飛ぶクルマ開発へ

このほかにも、独アウディや仏エアバスなどが進める「アーバン・エアモビリティ・プロジェクト」や、ライドシェア大手の米Uber Technologies(ウーバー)が進める「Uber AIR」、米Googleの共同創業者であるラリー・ペイジ氏が出資するスタートアップOpener社の「BlackFly」、英自動車メーカーのアストンマーティンが発表した「Volante Vision Concept」など、空飛ぶクルマ市場を見据えた開発は世界各地で進められている。

■国産の空飛ぶクルマはCARTIVATOR主導の様相

日本国内において陸空両用の空飛ぶクルマの開発に特化しているのはCARTIVATOR(SkyDrive)だけであり、多くの有力企業を味方につけている点なども踏まえると、国産の空飛ぶクルマの誕生は同社にかかっているともいえる。

空飛ぶクルマが現実味を帯びてきたとはいえ、一般的には絵空事のように感じている人もまだまだ多いことだろう。

独自目標に掲げる東京五輪でのお披露目など、PRを兼ねた取り組みにより認知度や社会受容性も一気に変化するものと思われる。東京五輪まで2年を切ったが、世界をあっと驚かせるようなパフォーマンスで空飛ぶクルマ市場をいっそう盛り上げてほしい。







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