2022年「MaaS」10大ニュース!海外展開に向けた動きも

経産省は「MaaSコーディネーター」創出へ



出典:大阪メトロ・プレスリリース

国内各地で実証・実装が進むMaaS(Mobility as a Service)。先行地域においてはサービスそのものは一定程度定着し、次のフェーズへ向かう段階に差し掛かってきているようだ。

2022年中は、各地でどのようなMaaSが誕生し、どのような取り組みが進められたのか。10大ニュースで1つずつ振り返っていこう。







■日本工営、インドネシアでMaaS支援 ビッグデータ解析などで協力(2022年4月9日付)

日本工営が、インドネシアで電子決済サービスを手掛けるJakarta Lingko Indonesia(ジャクリンコ)とMaaS分野で覚書を締結した。ジャクリンコはジャカルタ州政府が進めるMaaSプロジェクトを主導しており、日本工営はビッグデータの解析などの面で協力していくようだ。

日本工営は2019年に開通したジャカルタ都市高速鉄道建設事業などを手掛けてきたが、こうしたハードインフラを生かすにはソフトサービスが必要不可欠――との考えからMaaSを含むソフト分野の研究開発も進めている。

国内では、秋田県上小阿仁村や福井県永平寺町、沖縄県北谷町などの自動運転プロジェクトなどにも携わっており、さまざまな実証でノウハウを蓄積している印象だ。

ハードづくりの経験・実績とさまざまな実証で培ったソフト面の知見を組み合わせたビジネスは、こうした海外展開にマッチしやすい。スマート化を視野に道路交通を整備する海外都市も多く、新たなビジネス形態としてソフト面での展開にも要注目だ。

■経産省、「MaaSコーディネーター」創出へ(2022年4月11日付)

経済産業省や国土交通省が取り組むスマートモビリティチャレンジで、モビリティデータの利活用を最適化するMaaSコーディネーターの創出を目指す方針であることが分かった。

課題解決へのさまざまなアプローチを持続的に行っていくバックエンドの仕組みとして、地域における人的資源や車両などを、データを有効活用しながら全体最適的にオペレーションしていく役割だ。

MaaSでは多くの事業者が連携しているが、その多くはプラットフォームを介する形で機械的な連携にとどまっている。運営の効率化や利用者増加などに向け、全体を把握・統括し、最適化を図っていく役割は今後重要性を増すこととなってくる。

各地で実証・実装が進むMaaSだが、進化の余地はまだまだ多く残されている。MaaSコーディネーターのような立ち位置で専門的に関わる人材需要が今後増すことになりそうだ。

【参考】詳しくは「経産省、「MaaSコーディネーター」創出へ」を参照。

■ANAのUniversal MaaS、台湾へ「輸出」 覚書を締結(2022年6月3日付)

全日本空輸が、台湾の交通部運輸研究所と高雄市交通局とMaaS分野における連携検討を行う覚書を締結した。誰もが利用可能な「Universal MaaS」と、高雄市などが開発したMaaS「MeNGo」の連携可能性などについて検討を進めていく方針だ。

Universal MaaSは、障がいのある方など移動にためらいのある方々にもスムーズで快適な移動の提供を目指す取り組みで、2018年にANAグループ社員の発案からスタートした。車いすユーザー向けの移動支援サービスとして、利用する交通事業者に一括してサポート手配する取り組みや視覚障がい者向けのバリアフリー地図など、パートナー企業とともにさまざまな実証を進めている。

今回の連携検討では、こうした考え方や取り組みに台湾側が同調し、Universal MaaSとの連携を模索していく格好だ。

地域性の強いMaaSだが、プラットフォームのグローバル化は今後加速していく可能性が高い。フィンランドのMaaS Globalのアプリ「Whim」は日本を含む各国で導入が進んでいる。

日本政府は交通ソフトインフラの海外展開を推進しており、今後、MaaSやAI(人工知能)オンデマンド交通の海外展開が進んでいくことも考えられそうだ。

【参考】詳しくは「ANAのUniversal MaaS、台湾へ「輸出」 覚書を締結」を参照。

■日本初?MaaSに「デジタル地域通貨」を絡める実証実験!(2022年6月6日付)

三菱総合研究所が、阪急阪神ホールディングスとともにデジタル地域通貨を活用した都市型MaaSの実証を行ったようだ。

実証では、以前から取り組んでいる兵庫県西宮市をまるごと楽しむアプリ「maruGOT(まるごっと)にしのみや」を活用し、モニター利用者へ実証限定ポイントサービスを提供する。このサービス実装に、三菱総合研究所が開発した地域課題解決型デジタル地域通貨サービス「Region Ring」の機能「ポイントによるインセンティブ付与機能(地域ポイント機能)」を活用した。

店舗や施設などで二次元バーコードを用いてポイントの付与や利用を行うほか、アプリ上でポイントをバスデジタル1日乗車券へ引き換えることなどもできるという。

MaaSでは各種乗車券や提携施設・店のサービスをデジタルチケット化する取り組みが進んでいるが、こうした地域限定のポイントサービスなどで日常的な利用をいっそう促進できる。

アイデア次第でMaaSはまだまだ進化する。プラットフォーム側におけるサービス開発や機能強化も今後どんどん進んでいきそうだ。

■危機感抱く大阪メトロ、生き残りへ「都市型MaaS」展開(2022年6月6日付)

大阪が抱える交通課題や社会的要請などの各種課題解決に向け、大阪市高速電気軌道は2025年度に向けた中期経営計画の中に都市型MaaS構想を推進していく方針を盛り込んだ。

都市型MaaS構想は、「既存交通の改善・進化」「移動手段の統合」「生活サービスの拡充」「Webサービスの提供」「デジタル化の推進(DX)」の5層で構成される。

最新技術によるストレスフリーな移動や移動のパーソナル化、フィジカル空間での生活・都市機能の整備、サイバー空間での生活を豊かにするサービスなどを実現し、事業の持続的成長と大阪の活性化を両立させていく構えだ。

その過程では、鉄道や路線バス、オンデマンドバスを含めた総合運行管理センターの確立や、自動運転車の車内安全管理を含めた遠隔監視を行う「遠隔操作システム」の確立なども進めていく。

同社は関西圏の鉄道各社と手を結び、「関西MaaSアプリ(仮称)」の構築なども進めている。エリアが一体となった取り組みを推進する旗振り役として、さらなる事業化に期待したいところだ。

■自動運転、我が街でも!国のMaaS実証事業、「先進地域」決まる(2022年7月20日付)

経済産業省などが公募していた「無人自動運転等のCASE対応に向けた実証・支援事業(地域新MaaS創出推進事業)」の委託先が決定した。北海道江差町など全国11事業者で、MaaSや自動運転技術などを活用した先進的な取り組みを行っていく。

愛知県名古屋市では、名古屋鉄道がAIオンデマンド交通を導入した「エキ・シロ MaaS」の実証を行うほか、商店街での低速自動運転サービスの技術検証などを進めていく。

愛媛県伊予市では、BOLDLYが自動運転バス「NAVYA ARMAの運行とともに、ヘルスケアテクノロジーズが提供するヘルスケアアプリ「HELPO(へルポ)」などを組み合わせた実証を行っていく。

沖縄県北谷町では、ユーデックがレベル4自動運転サービスの社会実装に向けた体制構築をはじめ、観光客の公共交通利用変容を促す各種取り組みを実施する。

MaaSの概念も徐々に浸透し、2023年にはレベル4自動運転が解禁される。これらの取り組みはますます加速していくことになりそうだ。

トヨタのMaaSアプリ「my route」、展開拡大!九州・沖縄含め10県で(2022年10月7日付)

トヨタが国内各地で展開するMaaSアプリ「my route」の対象エリアが10県に達した。単一のMaaSで多くのエリア展開を図る好例だ。

国内では多くのMaaSが展開されているが、その大半は自治体や鉄道事業者、バス事業者などが主導し、各自の事業エリア内で運営を行っている。

一方、my routeは国内では唯一の自動車メーカーが主導するMaaSで、固有の事業エリアをもたないため、各エリアの交通事業者などが参画すれば対応エリアをどんどん拡大していくことができるのが魅力だ。

モビリティサービスに力を入れるトヨタにとって、MaaSは移動と異業種を結び付けた新たな事業展開を模索する上でも重要な存在となる。

2023年中にmy routeがどこまで対応エリアを拡大していくのか、またMaaSから派生する形で新たなモビリティサービスが誕生するのかなど、さまざまな観点から注目したい。

■東京都が本気だ!「観光型MaaS」に最大4,000万円助成(2022年11月11日付)

東京都と公益財団法人東京観光財団が、多摩地域における観光型MaaSの導入と拡充に向け「観光型MaaS導入・拡充支援助成金」の募集を開始した。

多摩地域では、2021年度から「西多摩地域観光型MaaS」導入支援プロジェクトの実証が進められている。エリア内の回遊性向上に一定程度の効果があり、また、利用者層は当該エリアの観光客層と類似していることなどが分かったという。

一方、自走に向けた採算性の確保に向け、利用者数増加が重要で、運行コストの観点からデマンド交通の有料化を検討する必要性があるなどの課題も浮き彫りとなったようだ。

国内最大の人口集積地である東京都。23区内の取り組みにスポットが当たりがちだが、多摩地域だけでも人口400万人超を抱え、観光需要も多い。

サービスの質を向上させるとともに、持続性のあるビジネス化に向けどのように収益を確保していくかなど、さまざまな観点から注目したい。

■国内初は「関西」!鉄道会社7社、MaaSで仲良く手を組んだ(2022年11月15日付)

大阪市高速電気軌道など鉄道7社が2023年夏ごろを目途に「関西MaaSアプリ(仮称)」を共同構築し、広域型MaaSとして関西一円を網羅したサービスを展開する。複数の鉄道事業者によるMaaSシステムやMaaSアプリの共同構築は国内初という。

新たなMaaSを構築するのは、大阪市高速電気軌道、近鉄グループホールディングス、京阪ホールディングス、南海電気鉄道、西日本旅客鉄道、阪急電鉄、阪神電気鉄道の7社。各社は2025年開催予定の大阪・関西万博に向け2019年に「関西MaaS検討会」を組織し、検討を進めてきた。

リリース第1弾では、主に関西地域におけるマルチモーダルな経路検索やチケットストア、観光施設紹介などのサービスを提供する予定で、その後も逐次バージョンアップを図っていく。

移動の核となる鉄道各社が広範囲に及ぶ連携を図る好例となりそうだ。特に、東京や大阪などの大都市では複数の鉄道事業者が複雑に混在しているため、こうした連携の効果は非常に高いものと思われる。

今後、他の交通事業者の参画や異業種連携などがどのように進んでいくのか、要注目だ。

■沖縄、自動運転解禁&MaaS実装に「ぴったりサイズ」!?(2022年11月22日付)

沖縄県でMaaSの実証や実装が盛んに進められている。JAL MaaSや沖縄MaaS、八重山MaaS、トヨタのMaaSアプリ「my route」を使用した沖縄スマートシフトプロジェクトなど、さまざまな取り組みが次々と実施されている印象だ。

沖縄本島は比較的コンパクトで、島内全域を網羅する形でMaaSを実装しやすく、かつ観光需要も高い。MaaS実装にはもってこいのエリアと言える。離島も多いため、船舶や航空機を交えたMaaSの可能性を探るなど応用の幅も広い。

こうした「島」はODD(運行設計領域)を設定しやすいため、自動運転サービスの実装にも優位となる。自動運転サービスを交えたMaaSは、沖縄が第1号となる可能性もありそうだ。

■【まとめ】海外展開や自動運転サービスの導入にも期待

各地のMaaSは、試験導入という第1フェーズを脱し、ビジネス展開やサービス向上などに向けた取り組みを強めている印象だ。

また、日本工営のようにMaaS関連事業の海外展開を推し進める例も出始めている。日本で急成長中のMaaS関連技術がグローバル路線でも新たなビジネスへと発展していくのか、要注目だ。

2023年は、解禁される自動運転レベル4をMaaSの中に組み込んでいく本格的な実証が始まる可能性がある。こうした点にも期待し、さらなるMaaSの進化を追っていきたいところだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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