【国内版】2022年の「自動運転」10大ニュース!レベル4解禁へ

新興企業に存在感、大手の参入も加速



出典:ソフトバンクグループ公式ライブ中継

4月に改正道路交通法が可決され、レベル4や自動走行ロボット解禁までの道筋が明確なものとなった2022年。2023年の法施行を前に各社が取り組みをいっそう加速する1年となった。

自動運転業界ではこの1年でどのような動きがあったのか。国内10大ニュースを振り返っていこう。


■ホリエモンが取締役の配送ロボ企業、2026年のバイアウトを予定(2022年1月4日付)

自動配送ロボットの開発を手掛ける国内スタートアップのHakobotが大きく動き出した。2026年のバイアウト(事業売却)を1つの目標にマイルストーンを設定し、資金調達や実証を加速している。

同社は2021年夏にプロダクト開発を完了し、走行ユニット「Hakobase」の実証を北海道などで進めている。Hakobaseは4輪駆動4輪操舵で高い走破性を備え、4つのモノラルカメラで自動運転を行う。荷室は用途に応じて取り付け可能なセパレート設計となっている。

計画では、2022年までに屋内用モデルのテスト販売や屋外用モデルの開発・実証を進め、2023年以降に屋外モデルの販売なども本格化していく。販売代理店との連携や量産体制を確立し、2026年には400台以上のロボットを販売するなど27億円の売り上げを目標に据えている。

国内企業としては珍しくバイアウトまでを計画に含めたプロジェクトとなっているが、サービス実装が本格化する2023年度以降、実際にどのような形で企業価値を高めていくのか、同社の躍進に期待したい。



■警察庁調査、自動運転の市場化意向「定路線サービス」が最多(2022年4月14日付)

開発事業者を対象とした警察庁のヒアリング調査によると、レベル4の市場化形態として「定路線運行の移動サービス」を予定している事業者が最多であることが分かった。

警察庁は、遠隔監視のみの無人自動運転サービス、いわゆるレベル4における開発動向などについて事業者ヒアリングを実施し、その調査結果などをまとめた。

予定している市場化形態については、回答が多い順に定路線運行の移動サービス、物流サービス、定路線運行以外の移動サービス、自家用車となった。

サービス提供開始時期については、「未定」などが最多となり、次いで「2023~2025年度」、「2021~2022年度」、「2026~2030年度」の順となっている。

まだ手探り感が残るヒアリング内容だが、レベル4が解禁される2023年度以降、こうした意向は徐々に明確になっていくものと思われる。2023年度、初動としてどういった企業がどのような取り組みに着手するのか、要注目だ。

■国内初!自動配送ロボで遠隔監視型の公道走行許可 パナソニックが取得(2022年4月21日付)

パナソニックホールディングスが、国内で初めて完全遠隔監視・操作(フルリモート型)による自動配送ロボットの公道走行許可に関わる審査に合格した。公道実証時、ロボットを近くで見守る保安要員の配置が不要になり、実サービスに一歩近づいた形だ。

同社は神奈川県藤沢市などで1,200キロ超の走行実証を重ね、現在茨城県つくば市でもサービス実証を行っている。自動搬送ロボット「X – Area Robo」や遠隔管制システム「X – Area Remote」、サービスサポートシステム「X – Area Connect」で構成されるサービスプラットフォーム「X – Area」を構築し、エリアモビリティ向けソリューションの社会実装を加速させていく構えだ。

自動配送ロボットの公道走行は、2023年4月までに施行される改正道路交通法で解禁される。国内各地でどのような形でサービス実証が進められていくか、要注目だ。

■高速道での自動運転「上限120キロ以上」 NEXCO東日本が構想(2022年5月4日付)

東日本高速道路(NEXCO東日本)が次世代高速道路の構想において、自動運転車両限定で規制速度の上限を120キロに緩和する施策などを検討していることが分かった。計108項目に及ぶ具体施策や31項目の重点プロジェクトを抽出し、10年、20年後にあるべき高速道路の機能やサービスに関するビジョンを描いている。

2030年ごろには、高速道路における自動運転・運送システムの実用化やCASEに代表される自動車の普及、後続車無人隊列走行システムの実用化などが進み、2040年ごろにはこれらの動きがさらに拡大し、モビリティ間の接続の重要性がよりいっそう高まることを想定し、こうした社会に対応できる高速道路の在り方について検討を進めている。

施策案では、自動運転車の規制速度引き上げによる高速性の向上や専用レーン化などによる高速かつ安全な走行空間の確保をはじめ、自動運転料金の設定、運行管理データ提供システム、Highway MaaSの導入、AI(人工知能)自動異常検知、自動運転専用駐車マス整備、移動空間のUX(ユーザーエクスペリエンス)向上、バレーパーキングの導入など、さまざまな観点から検討を進めているようだ。

各案がどのような形でブラッシュアップされ、そして実現していくのか。高速道路の進化に期待したい。

■ソフトバンク、自動運転の米新興May Mobilityと提携(2022年7月6日付)

ソフトバンクが、自動運転スタートアップの米May Mobilityと業務提携を交わした。両社の強みを組み合わせ、日本における自動運転サービスの早期社会実装に貢献していく構えだ。

May Mobilityは2017年創業で、自動運転シャトルを中心にこれまで米国と日本の公道で32万人以上の乗車を積み重ねている。トヨタからも出資を受けており、レクサス車やAutono-MaaS車両「シエナ」をベースにした自動運転車の開発・サービス化などを進めている。

このほか、MONET Technologiesや東京海上日動、豊田通商ともパートナーシップを構築するなど日本との関わりを深めている印象で、すでに日本法人「May Mobility Japan」も立ち上げている。

ソフトバンクグループとしては、仏NAVYA ARMAの導入実績が抜きん出ているが、子会社BOLDLYが2022年にエストニアのAuve Tech製の自動運転シャトル「MiCa」を導入するなど、モビリティの多様化を進めている印象だ。

MONET Technologiesとしてはトヨタの「e-Palette」も存在する。 自動運転サービスの実用化が大きく加速するだろう2023年、各モビリティをどのように使い分け導入を図っていくのか、要注目だ。

レベル5自動運転の「国産EV」を世界へ!TURINGが10億円調達(2022年7月19日付)

制限のない完全自動運転車となるレベル5開発を目指すスタートアップが国内に誕生した。2021年設立のTURINGは、テスラ越えを目標に自動運転開発と完成車メーカーへの参入を目指している。

同社の中心人物は、将棋プログラムPonanzaの開発者山本一成氏(CEO)と、カーネギーメロン大学などで自動運転研究を進めてきた青木俊介氏(CTO)の2人。完全自動運転に向けたカギをAIに託し、大望とも野望ともとれる目標へまい進する。

現在のAIは、完全自動運転に必要とされる人間と同レベルの総合的認識能力の域にまだ達していないが、「AIの能力は指数的に向上し続けており、悲観的に見積もっても2030年には完全自動運転は十分に実現可能」と考え、2030年に1万台のEV生産達成と完全自動運転EVの実現、上場を目標に掲げている。

すでに千葉県や北海道などで公道実証を進めており、AI自動運転による国内初の総走行距離1,480キロに及ぶ北海道一周も達成している。2023年はさらなる飛躍の年となりそうだ。

■トヨタWoven City、「バーチャル版」も作成へ(2022年8月17日付)

トヨタが静岡県裾野市で建設中の実証都市「Woven City」で、デジタルツイン技術を活用したバーチャルバージョンによって、さまざまなシミュレーションや改善をより効果的に行っていく方針であることがわかった。

ウーブンプラネットホールディングスのジェームス・カフナーCEOが「トヨタイムズ」の中で語っている。膨大な走行実証を重ねる必要がある自動運転開発において、仮想空間で効率的に実証を行うことができるシミュレーション技術は欠かせないものとなりつつある。

Woven Cityそのものが高精度にバーチャル化されれば、現実空間と仮想空間の両方を駆使して自動運転をはじめとするさまざまな実証を効果的かつ効率的に実施することが可能になる。

Woven Cityは早ければ2024年にも第一段階の実証が始まる見込みだが、徐々に全貌が顕わになり始めたWoven City。2023年にはどこまで建設が進むのか、また新たなパートナー企業が参画するのかなど、動向に注目だ。

【参考】詳しくは「トヨタWoven City、「バーチャル版」も作成へ」を参照。

自動運転レベル4解禁、路線バスの「赤字地獄」に転機到来(2022年11月5日付)

自動運転レベル4が2023年度までに解禁される運びとなり、赤字前提の公共交通に転機が訪れそうだ。記事では、レベル4サービス導入による効果について解説している。

バスやタクシーなどの移動サービスは慢性的なドライバー不足が課題となっており、かつコストに占める人件費率が非常に高く経営を圧迫している。地方の路線バスの大半は赤字運営が当然の状況だ。

しかし、無人走行が可能な自動運転技術を導入することで、ドライバー不足の解消やコスト低減を図ることが可能になる。事業に継続性が生まれ、サービスの質の向上などを図ることもできる。

国は2025年度までに40カ所以上で自動運転サービスを実現する目標を掲げており、2023年度以降各地の取り組みが一気に加速することが想定される。

ティアフォーや先進モビリティ、BOLDLYといった先行勢のほか、どういった開発・運営事業者が台頭してくるのか注目だ。また、付随するサービスや新たな自動運転サービスの登場などにも期待したいところだ。

■三菱UFJ、車中決済で「自動運転市場」に参入か DMPと合弁(2022年11月7日付)

ダイナミックマップ基盤と三菱UFJ銀行が、高精度3次元データと金融ソリューションを組み合わせた次世代の新規事業創出に向け、合弁「DMP Axyz」を設立した。

第一号案件として、ダイナミックマップ基盤の高精度3次元地図データを基に開発する除雪支援システムの事業化に取り組むなど、事業化の具体化はすでに進んでいるようだ。

このほか、車両の正確な走行距離情報に応じた決済機能の開発など、高精度3次元地図と金融に関するノウハウを掛け合わせた新たな金融サービスについても検討を進めていき、さまざまなパートナー企業と連携しながら新たな技術・サービスの創出に取り組んでいる方針としている。

自動運転時代には、さまざまな派生サービスが誕生し、それに伴って車内決済の機会も増加していくことが見込まれる。金融関連事業者の参入は今後も続きそうだ。

■孫氏が宣言「私はArmに没頭する」 自動運転で爆発的成長へ(2022年11月11日付)

ソフトバンクグループの2023年3月期第2四半期の決算説明会で、孫正義会長自らが英Arm事業に注力していく意向を表明した。

世界経済の低迷によりソフトバンク・ビジョン・ファンド事業が苦戦を強いられる中、Armを攻めの一手に据え、世界の半導体、ひいてはAI市場をけん引していく構えだ。

半導体の開発・設計を手掛けるArmは、スマートフォンやパソコン分野などで大きなシェアを誇る。車載・自動運転分野でも採用が進んでおり、躍進の余地はまだまだ残されている。

孫会長自らがどこまでArm事業に関わっていくのか、また上場計画をどのタイミングで再浮上させるのかなど、2023年の動向に引き続き注目だ。

■【まとめ】レベル4元年に向け各社の取り組みがいっそう加速

自動運転サービスが大きく動き出すだろう2023年に向け、着実に各社の取り組みが勢いを増している印象だ。

レベル4元年となる2023年までのカウントダウンはもう始まっている。いち早くサービス実装を果たすのはどの企業か。また、各社はどのような戦略でアプローチしていくのか。2023年も各社の取り組みから目が離せない年となりそうだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




関連記事