トヨタ自動車のIRページにこのほど、2022年の「統合報告書」が掲載された。統合報告書とは、トヨタが目指す未来の実現のために、どのような方針や戦略で経営課題に取り組んでいるかを、ステークホルダーに向けて記載しているものだ。
統合報告書では、トヨタが着工して注目を集めているWoven Cityについて、「ヒトが一番幸せを感じる街」を目指していることが説明されている。どういうことか?
▼統合報告書 2022|トヨタ
https://global.toyota/jp/ir/library/annual/
https://global.toyota/pages/global_toyota/ir/library/annual/2022_001_integrated_jp.pdf
■構想のきっかけは東日本大震災
トヨタが、静岡県裾野市の同社東日本東富士工場の跡地において建設中の実証都市「Woven City(ウーブン・シティ)」は、2020年1月にプロジェクトの概要が発表された。
Woven City構想のきっかけは2011年の東日本大震災。東北で雇用を生む拠点を作りたいという現豊田章男社長の想いのもと、豊田自動車東日本の設立に伴い、日本東富士工場を閉鎖した。
Woven Cityは人が生活する環境下で、自動運転やMaaS、パーソナルモビリティ、ロボット、スマートホーム技術、AI(人工知能)技術などの実証をバーチャルとリアルの世界で行うスマートシティだ。
「ヒト中心の街」「実証実験の街」「未完成の街」のコンセプトのもと、「歩行者専用の道」「歩行者とパーソナルモビリティが共存する道」「自動運転モビリティ専用の道」の3つの道が、縦糸と横糸のように編み込まれる予定だ。
物流はもちろん、エネルギーや食、農業など多岐にわたるテクノロジーを検証し、2022年10月1日には安全祈願祭が行われ、2024年の第1期オープンを目指している。
■「誰かを幸せにすること」を目指す
トヨタグループ創始者である豊田佐吉が、トヨタの原点とも言える自動織機を発明したのは、母親の仕事を楽にしてあげたいという想いからだった。トヨタでは「自分以外の誰かのために」という精神が、この頃から大切に育まれてきた。
Woven Cityが目指すのは、ヒトのためにモビリティが役立てることを増やし、まだこの世に存在していない新たな価値を生み出す仕組みを創出して、誰かを幸せにすることだ。「I am moved」というヒトの心が動いたり感動したりするという要素を大事にし、未来には当たり前になっているような技術やサービスを発明していくという。
ちなみに、Woven Cityの隣接地に建設される水素ステーションにおいて二酸化炭素(CO2)フリーの水素を製造し、燃料電池車はもちろん、Woven Cityにも供給する取り組みをENEOSと進めているようだ。
カーボンニュートラル実現に向け、水素を作り、運び、使うといった一連のサプライチェーン実証も行うようだ。
【参考】関連記事としては「動き出すトヨタのWoven City!2022年は「水素」な1年」も参照。
動き出すトヨタのWoven City!2022年は「水素」な1年 https://t.co/ALqn0Dpyt8 @jidountenlab #トヨタ #WovenCity
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) December 18, 2022
■トヨタの「哲学」に注目を
Woven Cityは、早ければ2024年に第1期オープンが見込まれる。トヨタといえば「技術」に目がいきがちだが、トヨタのコンセプト、トヨタの「哲学」にも注目すべきだ。技術はあくまで思想を実現するための手段とも言えるからだ。
【参考】関連記事としては「トヨタの自動運転戦略(2022年最新版)」も参照。