三菱UFJ、車中決済で「自動運転市場」に参入か DMPと合弁

次世代の新たな事業創出を目指す



高精度3次元地図やダイナミックマップの作製を手がけるダイナミックマップ基盤(本社:東京都中央区/代表取締役社長CEO:吉村修一)=DMP=と、三菱UFJ銀行(本店:東京都千代田区/取締役頭取執行役員:半沢淳一)が、合弁会社を設立した。


社名は「DMP Axyz」で、DMPの高精度3次元空間データと金融ソリューションを組み合わせた次世代の新たな事業の創出を目的としている。設立は2022年10月31日付。持株比率は、DMPが95.1%、三菱UFJ銀行が4.9%となっている。

■第1号案件は除雪支援システムの事業化

DMP Axyzは、DMPが整備・保有する高精度3次元空間データをベースに、三菱UFJ銀行が提供するファイナンス・決済などを組み合わせた、パッケージ商品の企画や開発、販売を行っていくという。

DMPや三菱UFJ銀行以外のさまざまなパートナー企業とも連携し、カーボンニュートラルや少子高齢化など、社会課題を解決する技術やサービスを創出するようだ。

第1号案件では、DMPが整備している高精度3次元地図をベースに開発している、除雪支援システムの事業化に取り組むようだ。熟練の作業員に依存していた作業を、データに基づいて安全で効率の良い除雪ができるようになるという。三菱UFJ銀行の取引先ネットワークやファイナンス機能を活用し、事業として幅広く利用されることを目指す。


■自動運転車向け車内決済も視野?

そのほか、「車両の正確な走行距離情報などに応じた決済機能」の開発なども検討が進められているという。もしかすると、自動運転車の車内での決済を意識しているのかもしれない。

完全自動運転車では、ドライバーの運転をしていた時間がそのまま「可処分時間」となり、ドライバーだった人がサービスの利用に時間を多く割くことができるようになる。サービスを利用する機会の増加はそのまま車中決済の機会の増加につながるため、車中決済は今後の成長領域だと考えられている。

DMPは自動運転社会の到来を見越して高精度3次元空間データの整備を行っているため、三菱UFJ銀行が自動運転車内で決済サービスを見越してDMPと合弁会社を設立した可能性は十分にありそうだ。

■自動運転社会を見据えたDMPのビジネス
出典:ダイナミックマップ基盤・公式サイト

DMPについても、改めて説明しておこう。DMPは2016年、国内自動車メーカーや測量・位置情報などを扱う企業など、国内トップレベルの企業15社が出資して企画会社として設立された。その後、2017年に計17社出資のもと、事業会社化された。


これまで高速道路や自動車専用道路の高精度3次元地図の整備に注力してきた。2021年9月の時点で、国内高速道路や自動車専用道路の上下線、計3万1,910キロをマップ化済みだ。さらなる自動運転社会を見据え、2024年度には、一般道路を含めた約13万キロまで、整備路線の拡大を目指している。

国内においては、ハンズオフ運転を実現している日産の「ProPILOT 2.0」や、アイズオフを実現しているホンダレベル3システム「Honda SENSING Elite」に採用されている。全国各地の公道実証においても、同社のマップ作製技術は活用されている。

2019年に同業の米Ushr(アッシャー)を買収しており、データフォーマットの統一を図りながら、海外展開を進めていく方針のようだ。

■今後も不思議に感じるような組み合わせが・・・

「地図×金融」のタッグは珍しい。しかし、自動運転社会が到来することを見通せば、これからも一見すると不思議に感じるような組み合わせが増えても不思議はない。

その理由は、自動運転車の車内ではさまざまなサービスが展開されるようになることが予想され、「サービス」という切り口ではさまざまな業種の企業に門戸が広く開かれているからだ。

こうした視点を持って、いち早く自動運転市場に目をつけた企業は、大きなビジネスチャンスを掴むことができるかもしれない。今回のDMPと三菱UFJ銀行のトピックからは、こうしたことを感じる。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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