「奇跡の一本松」のある岩手県陸前高田市の高田松原津波復興祈念公園で、東日本大震災の伝承活動に貢献する自動運転サービスの運行が行われる。この運行は陸前高田市の委託を受け2023年2月1日〜3月5日に実施され、2025年の本格運行開始を目指しているという。
■「奇跡の一本松」がある復興祈念公園
高田松原津波復興祈念公園は「東日本大震災からの復興の象徴となる国営追悼・祈念施設」だ。震災前、高田松原は7万本の松が植えられた国の名勝だった。震災の津波で7万本のほとんどが流され、唯一1本だけ耐え残った松が「奇跡の一本松」と呼ばれている。
奇跡の一本松は2012年5月に枯死が確認されたものの、復興のシンボルとして保存整備されるプロジェクトが立ち上がり、同公園内にモニュメントとして残されている。園内には、震災の脅威を伝える震災遺構「気仙中学校」や「陸前高田ユースホステル」なども点在している。
■ティアフォーなど5社が参加
高田松原津波復興祈念公園は東西約7キロの距離があり、130ヘクタールの広い敷地内に東日本大震災の関連施設が点在している。徒歩で施設内全てを見学するのが困難なため、自動運転車両が導入される。自動運転車両にはパークガイドが同乗して紹介するという。
本運行では、2022年9月に実施された前回の実証実験のルートに加え、震災遺構である旧道の駅「タピック45」と下宿定住促進住宅にもルートが拡大される。
参加する企業は、測量技術を武器に自動運転分野で活躍するアイサンテクノロジー、総合建設コンサルタントの復建調査設計、自動運転開発を手掛けるティアフォー、損害保険ジャパン、KDDIの5社だ。
5社は10人乗りのEV(電気自動車)バスの遠隔監視による自動運転を実施し、公園内の走行環境を確認したりサービス面における課題を抽出したりする。利用者への受容性調査も行う。陸前高田市の震災伝承活動はもちろん、将来的には陸前高田市内の公共交通にも自動運転車を展開していきたいようだ。
EVバスにはティアフォーの自動運転OS「Autoware」が採用されており、アイサンテクノロジーがあらかじめ計測した高精度3次元地図を用いて走行する。なお自動運転ドライバーの派遣と自動走行運営は、一般社団法人陸前高田グリーンスローモビリティが担う。
■2025年の本格運行開始に向けて
2011年の東日本大震災から12年が経とうとしている。2025年の本格運行開始に向け、2023年2〜3月にかけての取り組みが順調に進むことを期待したい。
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