【2023年12月の自動運転ラボ10大ニュース】日本政府のライドシェア方針にがっかり……

自動運転サービス発表の米ウーバー株急騰



2023年もいよいよ師走を迎えた。モビリティ関連ではここにきてライドシェア議論が再燃し、政府が一定の指針を示した。最終的にどのような結末を迎えるのか、今から注目だ。







自動運転関連では中国に動きがあり、政府が自動運転サービス向けのガイドラインを策定・発表した。乱立する自動運転開発を監視下に置きつつ、その開発を加速させる狙いと思われる。

さっそく12月の10大ニュースを1つずつ振り返っていこう。

■シャープ、自動運転市場に参入 車載視野に衛星アンテナを開発(2023年12月2日付)

シャープが自動運転分野に本格進出するようだ。自動車やドローン、船舶などに搭載可能なLEO(低軌道)・MEO(中軌道)衛星通信向け地上局用フラットパネルアンテナの開発に着手したと発表した。

山間部などモバイル通信が困難なエリアでは衛星通信が活用される。シャープによると、従来使用されてきたGEO(静止軌道)衛星よりも、LEO・MEOのように地球に近い軌道から電波を送ることで高品質かつ高速大容量の通信が可能となるため、その有用性に注目が集まっているという。

船舶などへの搭載が可能なほか、将来的には幅広い帯域で使用できるKa・Ku帯デュアルバンド対応やさらなる小型化を実現し、ドローンや自動車などへの搭載も目指す。天候や道路状況などの情報をリアルタイムで必要とする自動運転車への活用など、モビリティ分野での用途開発に取り組むこととしている。

■ライドシェア、日本人の大半「乗らず嫌い」 利用経験あると賛成35%→84%に(2023年12月4日付)

MM総研が実施したライドシェアに関する社会受容性調査をピックアップした記事だ。営利型ライドシェアサービスの導入に対し、ライドシェア経験者と未経験者の間で賛否に大きな開きが見られたようだ。

ライドシェア未経験者は「賛成」「どちらかといえば賛成」が約35%、「反対」「どちらかといえば反対」が約65%となった一方、経験者は同約84%、約16%と賛否の比率がはっきりと分かれた。海外でライドシェアを経験した人の多くは、その利便性を高く評価しているようだ。

タクシーに比べ安全性に疑問符が付くのも否めないが、犯罪率などはお国柄に左右される部分も大きく、またライドシェアは無秩序に一般ドライバーが運送サービスを提供できるものでもない。

短絡的に否定せず、日本に適したライドシェアの仕組みを一から構築していくのも一考の余地があるのではないだろうか。

■支持率急降下の岸田首相、切り札は「自動運転メガネ」化(2023年12月4日付)

不祥事やスキャンダルが相次ぐ岸田政権。支持率は低迷を極め、行き詰まり感を拭えぬまま年を越すことになりそうだ。

ここまで来たら、開き直って独自色濃厚な政策を打ち出してみてはどうだろうか――といった主旨の記事で、「増税メガネ」に代わる新たなメガネとして「自動運転メガネ」をかけてみては……と提案している。

自動運転技術は前政権までに一定水準の開発レベルに達し、実用化を推進するフェーズに突入している。岸田首相はこの流れをしっかりと汲み、デジタル田園都市国家構想のもと自動運転サービス実現を促進している。

この際、大幅な規制緩和を断行し、国内のみならず世界各国のスタートアップが日本に集結して社会実装を目指すくらいのことをやってみても良いのでないだろうか。支持率に直結せずとも、後に評価される政策で存在感を示すのも一考だ。

トヨタ、自動運転技術で「車両自ら移動する生産ライン」確立へ(2023年12月6日付)

自動運転技術が製造現場でも活躍する日が訪れることになりそうだ。トヨタが自動運転技術で製品自ら動く生産ラインの実現を目指す求人を行っている。

車両の企画・開発・設計から生産準備・量産工程をスルーでみて、クルマと製造工程を一体化させて生産・品質保証・物流を変革することをミッションに掲げている。クルマと設備両方の開発を担うという。

製造・生産現場はいち早く機械やコンピュータによる自動化が進んだ分野だが、AI(人工知能)や自動運転技術によってさらに柔軟性のある自動化を図ることができそうだ。

あくまで求人ベースの情報のため詳細は不明だが、トヨタはどのような絵を描いているのだろうか。生産性の向上のみならず、新たな事業領域となるだけに注目の将来技術となりそうだ。

空飛ぶクルマ最大手のSkyDrive、赤字額が40億円突破 第5期決算(2023年12月7日付)

空飛ぶクルマを開発するSkyDriveの第5期決算が公告された。当期純損失は前期から赤字額を増やし、40億4,004万円となった。まだまだ開発フェーズ真っ只中の同社。2025年の万博に向け、赤字を気にすることなく開発を加速させてほしいところだ。

2023年に入ってから商用モデル「SKYDRIVE(旧名称;SD-05)」のプレオーダー契約が相次いでおり、製品化・商用化に向けた取り組みが着実に進展していることを感じさせる。製造面でもスズキと手を組み、製造子会社がスズキグループの工場を活用して2024年春ごろに製造に着手するという。

万博というマイルストーンに向け、2024年は飛行実証を目にする機会が大きく増える可能性が高い。引き続き同社の取り組みに注目だ。

■Uberが株価50%急騰!自動運転タクシーの展開発表が起点 最高値更新へ(2023年12月13日付)

米Uber Technologiesの株価がここにきて最高値を更新する勢いで急伸している。その背景には、Waymoとの協業があるのでは?――といった内容の記事だ。

2019年にニューヨーク市場に上場されたウーバー株は、初日の終値41ドルを記録した後しばらく停滞し、2021年2月に一時60ドル台に乗せた後は再び値を下げていた。2023年に入ってからは上昇基調にあり、20ドル台まで落ちていた株価は夏ごろに40ドル台まで回復し、一息ついていた。

しかし、10月下旬ごろから突如急伸しはじめ、1カ月半の間に60ドル台まで上昇したのだ。10月下旬には、パートナーシップを結ぶWaymoの自動運転タクシーがウーバーアプリで配車可能になったニュースが発表されている。このニュースに端を発したのでは?――とする見方だ。

実際はさまざまな要因が関係しているものと思われるが、ウーバー×Waymoが明るい話題であることは言うまでもない。赤字が続きがちなプラットフォーム事業だが、そろそろ損益分岐点を超え黒字が定着してもおかしくはない。

今後どのような動きを見せるのか、要注目だ。

■ライドシェア「タクシー会社による雇用が条件」 政府方針、骨抜きの解禁か(2023年12月14日付)

ライドシェア解禁に向けた議論が再燃する中、政府は2024年度導入に向けた新たな方針を打ち出した。推進論者、反対論者双方の注目を集めた議論だが、その結果は「骨抜き案」と呼ぶにふさわしい内容となったようだ。

タクシー配車アプリによって客観指標化されたデータに基づき、タクシーが不足する地域や時期、時間帯の特定を行い、その範囲内でタクシー事業者のもと一般ドライバー・自家用車によるライドシェアが可能になる内容だ。一般ドライバーは、タクシー会社の管理下になければサービスを提供することができない。

タクシー事業者以外がライドシェア事業を行うことについても継続議論が進められているが、この内容であれば事実上タクシー事業者サイドに軍配が上がった格好だ。

タクシーが不足する分を補うケースに限り、安全面を考慮しタクシー管理下で一般ドライバーが運行を行う。……であれば、タクシードライバーと車両に課している従来の要件を緩和する方向でも良かったのでは?――という気もする。

おそらくさまざまな意見が寄せられることになるだろうが、2024年度までに新制度をどのように具体化していくか、その動向に注目したい。

■Google、GMの苦境に乗じ自動運転タクシー事業を拡大 夜間の空港にも配備(2023年12月16日付)

苦境に立たされているCruiseを尻目に、グーグル系Waymoは着々と事業を進めているようだ。記事では、アリゾナ州フェニックス市内の国際空港で夜間運行を始めたことに触れている。

Waymoは2018年末の自動運転タクシーサービス開始以来、同サービスにおいてしばらくの間大きな動きを見せなかったが、Cruiseがサービス面で始動した2022年に拡大路線に踏み出した。

カリフォルニア州サンフランシスコを皮切りに、ロセンザルスやオースティンなども視野に収め、サービス実証を重ねている。サービス発祥の地であるフェニックスでは、運行エリアを4倍まで拡大した。

2023年10月にCruise車が起こした人身事故が重大インシデントとして大きく取り上げられ、Cruiseは自動運転サービス中止を余儀なくされた。自動運転に対する風当たりが強くなり、Waymoもその影響を受けるのではないか――と危惧されていたが、どこ吹く風だったようだ。

現状、米国では再びWaymo一強状態となっているが、Cruiseの復活やMotionalをはじめとした3番手集団の台頭も考えられる。業界のリーダーとして、各社の開発をまだまだ牽引してほしいところだ。

■中国政府、自動運転バスの車内音声「リアルタイム共有」を義務化(2023年12月19日付)

中国政府がサービス用途の自動運転に対する安全ガイドラインを発表した。自動運転車によるバスやタクシー、貨物輸送などを対象に、事業者車両、人員配置、稼働状況の情報管理などについて定めた内容だ。

バスは運転手または運行安全担当者を配置しなければならない。完全自動運転車によるタクシーは地区都市人民政府の同意を得なければならず、遠隔に配置する安全担当者と車両の比率は1:3以上でなければならない――など、明確なルールが定められている。

また、自動運転車は車両の運行状況情報を記録・保存・送信する機能を備え、主要な運行状況情報を自動運転交通事業者と運行エリアを管轄する関連当局にリアルタイムで送信する必要があるとしている。

当局の通信回線がパンクしないか心配になるが、ある意味日本以上に厳しいルールを策定した印象だ。政府としては、自動運転の社会実装を推進しつつも、完全管理下に置きたいのだろう。

中国の交通運輸部によると、同国ではすでに100社以上が自動運転車両の実証を行っているという。名の売れた有力スタートアップにとどまらない開発の裾野の広さに驚きだ。

■インド道路相「自動運転は解禁しない」 ドライバーの雇用保護を優先(2023年12月20日付)

インドの道路交通大臣が、国内で自動運転車を解禁しない方針を明らかにしたようだ。国家としての判断と一致するかは不明だが、担当大臣の発言だけに影響は避けられそうもないだろう。

大臣は、無人化技術によってドライバーの失業率が上がることを懸念し、以前から同様の発言を繰り返している。

ドイツの道路交通は、自家用車をはじめ2輪車、3輪車、牛に至るまで、さまざまなモビリティや生き物が行き交う。ゴーイングマイウェイなドライバーや歩行者も多く、日本から見ればカオスな世界と言っても過言ではない。

交通ルールが機能していなければ、そもそも自動運転の実装はままならないところだが、政策的には道路交通改革のきっかけとして自動運転を活用するのが理想に思える。自動運転導入を契機にインフラを整備し、国民の意識改革を促して全体の安全性を高めていく手法だ。

少ないながらも、インドにもGiscle Systemsのように自動運転開発を手掛けるスタートアップが存在する。長い目で見て、自動運転と雇用を両立する政策を打ち出してほしいものだ。

■【まとめ】消極的ライドシェア案は将来への布石?

やはり政府が示したライドシェア解禁案のインパクトが大きい。不足しがちなタクシー供給を補うための方策としては理解できるが、この内容であればライドシェアである必要はなかったのではないか。それとも、これが将来の拡大に向けた布石となるのか……。

兎にも角にも、2024年は、自動運転をはじめこうしたモビリティサービスの話題であふれる1年となりそうだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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