【2023年7月の自動運転ラボ10大ニュース】Uberの配車プラットフォームに開発勢が殺到?

T2は三菱地所と新たなタッグ



2023年も下半期に突入した。海外では、プラットフォーマーのUberや遠隔運転技術を武器にしたカーシェア事業などに動きがあり、次世代モビリティ導入に向けた新たな展開が始まったようだ。


その一方、自動運転を嫌う勢力の活動も改めてピックアップされている。自動運転技術の社会実装が広がるにつれ、こうした活動も今しばらくは拡大するのかもしれない。

2023年7月の10大ニュースを振り返り、自動運転の「今」に触れていこう。

■「遠隔運転」でレンタカーを完全無人配達!米でサービス開始(2023年7月6日付)

レンタカーやカーシェア事業を手掛ける米Halo.Carが、遠隔操縦で車両を指定場所まで配送するサービスをラスベガスで開始した。

同社のCEO(最高経営責任者)はUberで自動運転開発に携わっていたエンジニアで、遠隔操縦技術を核とした新しいレンタカー・カーシェア事業の実用化を進めている。こうしたサービスカーが車内無人で移動可能になれば、利用者はステーションに出向くことなくサービスを利用したり、乗り捨て・ワンウェイ方式で利用したりするなど、利便性が大きく増す。


誰もが手動運転可能なシェアカーを自動運転化するハードルは高いが、同社は純粋な「遠隔操縦」技術を活用することで無人運転を可能にした点がポイントだ。遠隔地に設置された拠点には、車載センサーの映像を映し出す大画面やハンドル・ペダル類が設置されており、これをオペレーターが操作することでリアルタイムの遠隔操縦を行う仕組みだ。

遠隔地に絶対的な人員が必要となるが、現地スタッフなしで柔軟なサービスを提供することができる。自動運転と並行し、こうした技術の導入も今後進展していく可能性がありそうだ。

■自動運転ビジネス、異なる財閥間でタッグの動き 実益優先か?(2023年7月10日付)

自動運転トラックの開発など次世代物流システムの構築を進めるT2を介し、旧三井系と旧三菱系の財閥がタッグを組んでいる。

T2は三井物産出資のもと設立されたスタートアップで、このほど次世代基幹物流施設の開発を進めるディベロッパーの三菱地所と資本業務提携を交わした。旧財閥に明確な括りは存在しないが、三井系と三菱系が手を組んだ格好だ。

自動運転実装期に差し掛かり、サービスやインフラ整備面などさまざまな業種の企業が自動運転業界との関わりを深めている。かつてのライバル企業ががっちりと握手するような事例も今後続々と飛び出してくるのかもしれない。

■自動運転車の事故、米国で月平均13件 最多はGoogle子会社(2023年7月13日付)

米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)が発表した最新のレポートによると、米国では自動運転車が1カ月平均13.1件、レベル2のADASが同41.9件の衝突事故を起こしているようだ。

発生場所は自動運転、レベル2ともにカリフォルニア州が最も多く、メーカー別では自動運転がWaymo、レベル2はテスラがそれぞれ最多となっている。

事故の人的被害としては、自動運転車に死亡例はなく、重傷者が発生した事故が1件報告されている。一方、レベル2では死亡事故が22件発生している。それぞれの母数が異なるため単純な件数比較はできないが、オーナー主体のレベル2のほうが重大事故になりやすいものと思われる。

NHTSAはレベル2以上のシステムに関連する事故の報告を義務付けているが、こうした情報は業界全体における安全対策などに非常に有用だ。ハンズオフが可能なレベル2以上のシステムには、ドライバーの誤認など特有の危険がつきまとう。業界を挙げて対策を講じ、そして社会全体で啓蒙していくためにも、事故情報をしっかりと収集・分析できる体制が求められるところだ。

■自動運転を無能化!ボンネットに三角コーン、反対派が抗議活動(2023年7月14日付)

自動運転車のボンネットに「三角コーン」を設置し、車両の自律走行を不能にする自動運転反対派の抗議活動が報じられている。活動は主にカリフォルニア州で行われており、WaymoとCruiseがやり玉にあげられているようだ。

有人の手動運転車も、ボンネットに三角コーンを置かれれば安全走行ができないのは言うまでもないことだが、完全無人の自動運転車であればなおさらだ。センサーが異常を検知し、走行不能と判断を下さざるを得ない状態となる。対応するには、スタッフが現場に駆け付けなければならない。

現在社会実装されている自動運転システムは、まだまだ未成熟な技術だ。周囲に危険や不安を及ぼす可能性も否定できず、賛否両論はいましばらく続くものと思われる。

技術の進歩とともに否定派は徐々にその数を減らしていくものと思われるが、システムがどの水準まで達すればこうした悪質な嫌がらせ行為はなくなるのか。今しばらく時間を要するのかもしれない。

■日立が快挙!全米初の「完全自動運転都市鉄道」を実現(2023年7月17日付)

日立グループで鉄道システム事業を手掛ける日立レールが、米国初となる完全自動運転都市鉄道システム「スカイライン」の第1期区間をハワイ州ホノルルで完成し、旅客サービスを開始した。第1期区間は約17.7キロで、二段階に分け今後数年間に渡ってさらに建設を進めていく。

同社によると、日立レールは現在世界で運行されている無人鉄道車両製品の30%以上を製造しているという。ホノルルのほか、デンマークのコペンハーゲンやペルーのリマ、イタリアのローマやミラノ、サウジアラビアのリヤド、台湾の台北などでも活躍している。

日立グループとしては、モビリティ事業を手掛ける日立Astemoを筆頭に自動運転関連技術の開発などにも積極的だ。

ハードとなるインフラからソフトまで幅広いソリューション開発が可能な日立グループ。今後、自動運転分野でどのように存在感を発揮していくか、要注目だ。

■Uber、いよいよ「自動運転化」を本格化!ライドシェア&配達で(2023年7月17日付)

米Uber Technologiesが、自動配送ロボットを最大2,000台導入する契約を交わしたようだ。関連会社の米スタートアップServe Roboticsのロボットで、Uber Eatsにおけるデリバリーを担う。

Uberはこれまでに、MotinalやWaymo、Nuroと自動運転実証・サービスを実施しているほか、トヨタAurora Innovationともパートナーシップを結んでおり、早ければ2024年にもAurora Innovationの自動運転システム搭載車両がUberのプラットフォームに導入される。

人の移動とモノの輸送を担う世界最大規模のUberのプラットフォームは、自動運転との相性が良い。自動運転環境が整ったサービスエリアから今後どんどん実証・導入が進んでいく可能性が高い。米国外におけるパートナーシップも今後注目の的となりそうだ。

■米連邦航空局、「空陸両方」の空飛ぶクルマに特別耐空証明書(2023年7月18日付)

米Alef Aeronauticsが、米連邦航空局(FAA)から「特別耐空証明書」を取得したようだ。同社は陸上走行と空の飛行の両方を可能にする正真正銘の「空飛ぶクルマ」の開発を手掛けており、空陸両用モデルの本格実証がまもなく始まりそうだ。

世界で開発が進められている空飛ぶクルマの多くは、垂直離着陸が可能なeVTOLで、陸上走行を考慮したモデルは少数派だ。空陸両用モデルも、垂直離着陸が可能なモデルと滑走路が必要なモデルが存在するなど、いくつかのパターンに分類できる。

「クルマ」と名が付くからには空陸両用を意識したいところだが、現在世界各地で実証が進められているモデルはほぼ空専用なのが現状だ。

Alef Aeronauticsのモデルが本格実証のフェーズに達すれば、空飛ぶクルマに対するイメージも徐々に変わってくる可能性がある。同分野の開発動向が今後どのように推移していくか、引き続き注目していきたいところだ。

自動運転タクシー、世界GDPを年26兆ドル上乗せ 2030年試算(2023年7月20日付)

米ARK Investの調査によると、自動運転タクシーの登場により2030年までに世界全体の年間GDPが26兆ドル(約3,600兆円)高まるという。

自動運転タクシーによる収益と移動時間の短縮に伴う生産性の向上が年間30兆ドルの効果を生み出す一方、ガソリン車の販売台数やメンテナンス費用の減少などが同4兆ドルのマイナス要因となり、差し引き26兆ドルの効果が生まれるという。

2030年時点でそこまでの効果が出るかは不明だが、自動運転サービスが真に普及した時代においては人やモノの移動に革命が起こっている可能性がある。

自動運転技術がさまざまな分野にどのような波及効果をもたらしていくか、また人の公道をどのように変化させていくか、要注目だ。

■自動運転、アメリカ中国も「中東」でセールス強化 オイルマネーに照準(2023年7月20日付)

自動運転サービスの世界展開を目指す動きが活発化し始めている。中でも、中東に熱い視線が送られているようだ。

中東はオイルマネーが豊富で、かつ王族など国のトップが支配的に政治を行っている国が多い。既存道路の整備状況はまちまちだが、スマート国家を目指す動きも出ており、自動運転技術の導入に関心を寄せる国も少なくない。

しかし、自国内に自動車メーカーや自動運転開発を本格的に手掛けている企業はわずかだ。このため、米中をはじめとした海外の有力企業が中東に熱い視線を送っているのだ。

今のところ中国WeRideと米Cruiseが先陣を切る形で契約を交わしているが、これに続く企業が今後続々と現れる可能性もある。こうした第三国でのビジネス展開も自動運転時代の覇権争いに影響してくるのかもしれない。

■トヨタの自動運転シャトル、「初の定期運行」は新アリーナ濃厚か(2023年7月24日付)

メガウェブ跡地の再開発プロジェクトとなる「TOKYO A-ARENAプロジェクト」の起工式が執り行われた。アルバルク東京の拠点としてスポーツ振興を図るとともに、未来型モビリティサービスに向けた挑戦の場としても期待が寄せられる。

プロジェクトにおいて、トヨタは重点テーマの1つに「未来型モビリティサービス」を掲げている。モビリティテクノロジーを活用しながら各企業のサービスや技術と連携し、アリーナにおける体験をより楽しいものへと変えていくという。

当然、多目的サービスを提供可能な自動運転車「e-Palette」の導入にも期待が寄せられるところだ。観客の送迎や物販をはじめ、さまざまなサービス展開を模索する場として有用だ。

このTOKYO A-ARENAとWoven Cityはともに2025年開業予定だ。トヨタの自動運転サービスが本格実装される第一候補として注目したい。

■【まとめ】自動運転時代のプラットフォーマーが新境地へ

遠隔操縦によるHalo.Carのサービスは、実用性や利便性などの観点から今後注目度が大きく高まる可能性がありそうだ。

また、Uberの配車プラットフォームをめぐる動きも活発化している印象だ。自動運転実装を機に、こうしたプラットフォーマーが世界各地で新境地を開いていくことになりそうだ。

国内では、新たな自動運転開発スタートアップのT2が意気盛んだ。ティアフォーを筆頭に、Turingなど新たな開発企業が国内でもしっかりと歩みを進めていることに注目したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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