自動運転タクシーはテクノロジーの歴史上、最もGDP(国内総生産)に影響を与えるかもしれないという調査結果が発表された。
投資運用会社の米ARK Investが発表した調査結果によれば、自動運転タクシー市場は2030年までに、世界全体のGDPを年間26兆ドル(約3,600兆円)を押し上げる見込みだという。
■自動運転で年間GDPが26兆ドルプラス
ARK Investによると、自動運転タクシーによる収益と、移動時間の短縮に伴う生産性の向上により、2030年までに世界のGDPが年間で30兆ドル増加する見込みだ。
一方で、自動運転車を取り入れることによる交通事故の減少やガソリン車の販売台数減少、燃料費やメンテナンス費用の減少により、GDPを年間4兆ドル押し下げる可能性があるという。
この差し引きにより結果として、自動運転車は年間で26兆ドルを世界のGDPに上乗せすることになるという計算のようだ。これは、2030年までに世界のGDPを年間で2〜3%上昇させることに相当する数字だ。
また調査では、アメリカの自動車所有者は年間420時間以上を運転に費やしており、労働時間にすると10週間分にも相当することを指摘。今後、自動運転タクシーの普及により運転から解放されることで、その時間を仕事や遊び、インターネット、映画鑑賞などに充てることができ、そのことがGDPにプラスの影響を与えるとしている。
ちなみに以下は過去の革新的テクノロジーの年間GDPに与えるインパクトを比較した図だ。
■自動運転によるマイナスの影響は?
先ほど、自動運転タクシーの普及はGDPを年間4兆ドル押し下げる可能性があることに触れたが、この点についてARK Investがもう少し詳しく説明しているので、触れておく。
自動運転車は事故の減少につながることが予想され、クルマの修理回数や負傷者の入院日数が減る。それにより保険料率が下がり、GDPは年間1兆ドル(約140兆円)減少する。さらに自動運転タクシーが運用される都市部では、個人向けの自動車販売台数が低下し、GDPに対しては年間最大で1兆8,000億ドル(約250兆円)の打撃になるという。
しかし、事故の減少は死者や負傷者が減るという、金額では表せない大きなプラスの影響をもたらし、死傷者が減る分、GDPにもプラスの要因があることも記しておきたい。
■「安心面」の課題も解決すれば…
米Google系WaymoやGM傘下のCruiseは、すでに米国で自動運転タクシーを商用化しているが、急停止し交通を妨げるなど、まだまだトラブルは多い。しかし、安全面、そして「安心面」の課題を解決し、サービス利用者や市民の信頼を得れば、普及はかなりの速度感で進んでいく可能性が高い。
場合によっては、ARK Investの予想をはるかに超えるGDPの上乗せが起こっても不思議ではない。
【参考】関連記事としては「自動運転車の市場調査・レポート一覧」も参照。