日立製作所は、鉄道システム事業におけるグループ会社である日立レールが、米ハワイ州ホノルルで米国初の完全自動運転都市鉄道システムの運行を開始したことをこのほど発表した。
「スカイライン」と名付けられたこの鉄道システムは、第1期区間が完成し、2023年6月30日から乗客を乗せて運行しているという。
■米国初の完全自動運転都市鉄道システム
今回運行をスタートした新路線は、米国で運行を開始する主要な都市鉄道システムとしては、1993年以来の路線になる。ホノルル高速鉄道輸送機構とホノルル交通局により運用される。車両は1編成あたり4両で構成され、計20編成が運行、1編成あたりの定員は約800人となっている。
第1期区間は、9つの駅を結ぶ約17.7キロのルートとなる。全区間が完成すると、ダニエル・K・イノウエ国際空港などへも開通し、市内の混雑した通りや高速道路における推定1日4万台の自家用車の移動が鉄道に移行すると試算されているようだ。
この路線は完全に電動化されており、島内の渋滞の緩和のほか、CO2排出量の削減にも寄与する。
日立レールは、乗客や車両、システム全体の安全を保証する最先端技術を取り入れ、車両の設計・製造や鉄道システムの設計・製造、・試験及び安全認証、システムの運用及び保守などを担当した。24時間年中無休でスタッフが配置された制御室で、全ての列車の動きと線路のポイントを管理するという。
■自動運転開発に積極的に取り組む日立
日立は自動車や配送ロボットの自動運転化にも力を入れており、自動運転車いすや医療機器搬送カート、生産システム連動物流カートなどを開発している。
日立グループの日立インダストリアルプロダクツは、小型無人搬送ロボット「Racrew(ラックル)」の開発を手掛けており、多数の納入実績がある。
2023年3月には、日立レールがインドでの鉄道建設計画向けにデジタル信号システムを受注したことを発表した。同社が最先端の無線式列車制御システム(CBTC)と自動列車運転装置(ATO)を納入することにより、無人運転が可能になるという。
なお2021年1月に日立Astemoを設立し、自動運転やADAS(先進運転支援システム)の開発に取り組んでいる。同年5月に、日立Astemoは自動運転やADASでの走行において、快適な車両空間を実現する高精度な軌道計画技術を開発したことを発表した。
また2023年5月には、狭路での協調行動を可能とする自動運転技術を開発したことを発表した。LiDARなどによるセンシングによる三次元情報を統合し、車両周辺の走行環境を立体的に認識し、検知した対向車両などの挙動から進行意図を理解して経路予測を行う。それにより対向車両と協調した、狭路でのスムーズなすれ違い自動運転を可能とする技術だ。
【参考】関連記事としては「日立が解決!狭い道路での自動運転、「対向車の意図」を理解」も参照。
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— 自動運転ラボ (@jidountenlab) May 19, 2023
■鉄道の自動化でも存在感
多方面での自動化に取り組む日立グループだが、日本からの観光客も多いハワイでの鉄道の自動化という今回の実績により、さらに存在感を増していくことが予想される。
【参考】関連記事としては「日立が解決!狭い道路での自動運転、「対向車の意図」を理解」も参照。