日立が解決!狭い道路での自動運転、「対向車の意図」を理解

日立Astemoが技術の開発に成功



相手車両の行動を認識しながら段階を踏んで相手車両との協調行動を実施する様子=出典:日立Astemoプレスリリース

日立Astemo株式会社(本社:東京都千代田区/プレジデント&CEO:ブリス・コッホ)は2023年5月19日までに、狭路(※狭い道路)での協調行動を可能とする自動運転技術を開発したことを発表した。

この技術は、対向車両の挙動などから進行意図を理解して経路予測を行うことで、対向車両と協調した狭路でのスムーズなすれ違い自動運転を可能とするものだという。


「対向車両の挙動」を認識しながら協調行動を行うことができる技術というのが、これまであまりなかった仕組みであり、興味深い。

■対向車と協調してすれ違う技術

日立Astemoはこれまで、一般道での自動運転で歩行者などの行動変化を予測し、安全で自然な減速を行うことで、衝突を防止する基本技術の開発を行ってきた。

また2019年10月には、基本技術を進化させ、人間が行う運転のように、他の移動体の挙動や物陰からの飛び出しなど、自動運転制御ユニットが潜在的に衝突リスクの高い領域を予測して、あらかじめリスク回避できる速度や軌道で走行する「危険予知運転」をリアルタイムに実行する技術を開発したことを発表している。

そんな日立Astemoがこのたび開発した技術は、LiDARなどによるセンシングで得た3次元情報を統合して車両周辺の走行環境を立体的に認識し、検知したフリースペースや対向車両の挙動から進行意図を理解し、経路予測を行う。それにより対向車両と協調した、狭い道路でのスムーズなすれ違い自動運転を可能とする技術だという。


なお将来的には、2023年3月に販売開始した、汎用性を高めた高精度な新型ステレオカメラとの連携を視野に入れているようだ。この新型ステレオカメラは、遠方検知と広い画角の両立と、あらかじめ機械学習の手法で識別パターンを記憶させることで、高い精度で歩行者や自転車を検知し測距を可能とするものだ。特に交差点右左折時の衝突防止に役立つという。

また、日立AstemoのAI(人工知能)技術や認識技術により、コスト競争力のある電子制御ユニット上で、高度な画像認知や車両制御を可能とするソフトウェア処理を実現している。そのため新型ステレオカメラとの連携により、狭路での協調行動を可能とする自動運転技術のコスト競争力アップを狙う。

■日立グループの自動車部品メーカー
出典:日立Astemo公式サイト

日立Astemoは、日立オートモティブシステムズ、ケーヒン、ショーワ、日信工業が経営統合して2021年1月に誕生した。先進的なモビリティソリューションによってQuality of Lifeの向上を目指し、統合した4社それぞれの強みを生かしながら自動運転や車載ソフトウェアなどの開発を行っている。

日本のほか中国インドを含むアジア、北・南米、欧州など世界27カ国に約9万人の従業員を擁しており、グローバルな拠点体制で事業を展開している。


2023年1月には、同社とサイバーセキュリティ分野を手掛けるトレンドマイクロ、その子会社のVicOneが、コネクテッドカー向けセキュリティソリューションの2025年商用化を目指し、協業を拡大したことを発表した。

■日立Astemoの技術開発に今後も注目

今回開発した技術や新型ステレオカメラは、2023年5月23日からパシフィコ横浜で
開催される「人とくるまのテクノロジー展2023横浜」の日立Astemoブースで紹介されるという。

狭い道路での協調行動は、自動運転に必須となる技術だ。米国では自動運転タクシーが対向車とすれ違うことができなく、対向車が進路を変えて移動せざるを得ないといったトラブルも起きている。日立Astemoの技術開発に今後も注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




関連記事