【2023年2月の自動運転ラボ10大ニュース】新体制に向けトヨタが組織変革

レベル4見据えた取り組みが活発に



新年度への切り替えが目前に迫ってきた2023年2月。国内では、新体制への移行や道路交通法改正によるレベル4解禁を見据えた動きが目立ち始めている。MaaS分野においても、アプリの刷新やMaaS間連携の取り組みなどの話題が出ているようだ。


道交法改正で新たな節目を迎える2023年度に向け、どのような動きがあったのか。2023年2月の10大ニュースを振り返っていこう。

■アイスバーン問題なし!冬の北海道で自動運転バスがデビュー(2023年2月3日付)

自動運転車にとって雪道走行は大きな課題の1つとなっているが、北海道上士幌町で仏Navyaの自動運転シャトル「ARMA」を活用した定常運行が行われている。積雪が続く冬期間における国内では非常に貴重な運行と言える。

運行はBOLDLYなどが協力しており、実証を経て2022年12月に定常運行を開始した。雪の影響で急ブレーキがかかることもあるようだが、前年の実証時における手動介入は10%で、残りの90%を自動運転で走行できたという。

現在は車内オペレーターがコントローラーを手に常時監視する実質レベル2で運行しているが、道路交通法改正に伴い、2023年度中にレベル4を目指す構えだ。


夏場の運行はもとより、冬場の自動運転運行をどのように確立していくか、今後の取り組みに引き続き注目だ。

■超重要!自動運転技術を生かす都市構造、ガイドライン作成へ(2023年2月3日付)

都市交通における自動運転技術の活用方策に関する検討会が2023年度以降、自動運転車両の導入や関係する都市施設の整備・デザインに関するガイドラインの作成に着手するようだ。

MaaSをはじめ本格的な自動運転時代が到来した際、交通結節点となる駅前広場の在り方など都市整備の重要性も増す。移動に利便性をもたらすには、モビリティのみならず周辺インフラや道路、設備などにも変革が必要となるのだ。

検討会では、都市施設のあり方として、歩道幅員や車両との交錯や走行場所のルールなどの走行空間のあり方、駐停車空間(モビリティハブ)のあり方、データ連携のあり方などを検討課題に挙げている。

今後、どのように議論が進んでいくのか要注目だ。

■国内初!白ナンバー(自家用車)で自動運転100円送迎(2023年2月6日付)

愛知県春日井市で、自家用有償旅客運送によるオンデマンド型自動運転送迎サービスが始まったようだ。NPO法人が白ナンバーの自動運転車を活用する国内初の事例だ。

新サービスは、NPO法人石尾台おでかけサービス協議会と春日井市、名古屋大学、KDDI、名古屋大学発ベンチャーで自動運転システムの開発・提供などを手掛けるエクセイドが取り組んでいる。

ランドカーをベースに名古屋大学が開発した「ゆっくりカート」を活用し、オンデマンド型送迎サービスを提供する。実質的には自動運転レベル2での運行となるが、将来のレベル4を見越した取り組みと言える。

現状、自動運転サービスの導入は敷居が高いが、乗客数が少ない地域への導入などにおいては、可能な限りその敷居を下げ導入しやすい環境づくりを進めていくことも重要となる。その意味で、こうした持続性ある取り組みは試金石となる。

将来、無人のレベル4が可能となった際、運行管理体制をどのように変更していくのかなど引き続き注目していきたいところだ。

■ソフトバンクG「最も注力するべきはArm」 自動運転向けで注目(2023年2月7日付)

ソフトバンクグループは、2023年3月期第3四半期の決算説明会で改めてアーム事業に注力していく姿勢を見せた。アームの上場に関しては、2023年中の上場を視野に準備を進めているようだ。

半導体の市場規模は長期的な成長が続くと予想し、新しい技術分野への投資を含め長期的な視野で持続可能なビジネスを構築していく方針を掲げている。

半導体チップに必要不可欠なプロセッサーにおいて、アームはIPプロバイダーとしての地位を確立している。アームべースのチップ累計出荷数は2,500億個を超え、この四半期においても過去最高の80億個を出荷したという。

マーケットシェアはモバイルで95%、IoT63%と高く、自動車分野においても2021年に24%、クラウド分野で5%と数字を伸ばしている。

高機能化が著しい自動車では1台あたり約1万個の半導体が使用されるという。自動運転化に伴いその数はさらに伸びる見込みで、今後、自動運転分野における活躍にも大きな期待が寄せられるところだ。

■ついに統一化の流れか!MaaSアプリ同士が西日本で連携(2023年2月9日付)

JR西日本のMaaSアプリ「WESTER(ウェスター)」と、名古屋鉄道のMaaSアプリ「CentX(セントエックス)」が連携を開始したようだ。全国版MaaSとエリア版MaaSの連携という観点からも注目が集まるところだ。

各地で誕生しているMaaSは、当然ながら対象エリアの交通サービスに特化する形で縄張りを設定し、独自サービスを提供する。比較的狭域エリアに特化したサービスとして位置付けられることが多いのだ。

しかし、鉄道のように広域にまたがる移動手段をはじめ、長距離移動への対応に課題が残っているのも事実だ。JR西日本やJR東日本など営業エリアが広域に及ぶ事業者などは、こうした問題に対応可能なプラットフォームづくりにも力を入れているように感じられる。

近い将来、マイクロ版MaaS、エリア版MaaS、全国版MaaS…のように位置付けが明確化され、広域連携する事例が増加する可能性も考えられる。移動のさらなる利便性向上に向けた今後の動向に要注目だ。

■自動運転、「第2次上場ブーム」待機組に超有力ベンチャーずらり(2023年2月10日付)

2022年は、インフレの高まりや金利上昇などを背景に世界的に株式市場が低迷した。一方、2023年は後半までに景況感の改善やインフレ緩和、金利上昇の終了といった条件が整うとの見方が強く、IPO活動が勢いを取り戻す可能性が高まっているようだ。

数多くのスタートアップが活躍する自動運転分野においても近年IPOが盛んになっていたが、コロナ禍までに上場した企業の多くは思うように資金が集まらず、苦戦していた感が強い。こうした状況もあって、2022年にIPOを目指す動きは明らかに鈍化していた。

株式市場が再び上昇気流に乗るかもしれない2023年。自動運転技術の本格実用化の波とともに第2次上場ブームと言えるほどのムーブメントが起きるのか、要注目だ。

■自動運転向け「人間に見えない塗料」、日の丸技術に世界驚く(2023年2月11日付)

日本ペイント・インダストリアルコーティングスが、LiDARで検出可能な塗料「ターゲットラインペイント」で自動運転分野に参入した。自動運転向けの新たなインフラとして期待が寄せられるとともに、自動運転分野への異業種参入の好例としても注目される。

人間には見えづらく、LiDARで認識可能な特殊な塗料を活用することで、道路上などに自動運転車向けの車線リンクやマーカーを設えることができる。人間のドライバーに影響を及ぼすことや景観を損ねることもない。アイデア次第でさまざまな活用方法が生み出されるポテンシャルを秘めていそうだ。

こうした新たな発想が業界を大きく変えていくこともある。まだまだ多くのビジネスチャンスが眠っている自動運転分野。アプローチの仕方次第で世界シェアトップのソリューションを手にすることも決して夢ではないのだ。

■Microsoft、自動車市場に本格参入!提携網拡大、「空」も視野(2023年2月15日付)

クラウドサービス「Azure」を武器に自動車メーカー各社と提携するマイクロソフトだが、自動運転開発企業との結び付きもどんどん強めているようだ。

例えば英Wayveは、自動運転車向けのAIベースのモデル開発を世界規模でサポートするため、スーパーコンピューティングインフラストラクチャ活用に向けマイクロソフトと協力している。

Cruiseも2021年にマイクロソフトと長期的な戦略的提携を結び、Azureを活用している。また、自動運転トラックの開発を進める米Gatikのように、マイクロソフトから出資を受ける例も少なくない。

Waymoを要するグーグルは別格として、AWSによるサービスやZoox買収などで自動運転分野における攻勢を強めるアマゾンなど、大手テック企業と自動運転の結びつきはどんどん進展している。

次世代に向けた変革が求められることが多くなってきたビッグテックだが、自動運転のような次世代産業分野においては、すでに攻防が始まっているようだ。

■使い勝手、一から見直し!トヨタMaaS「my route」が刷新(2023年2月20日付)

トヨタが全国展開を進めるMaaSアプリ「my route」がUIを刷新し、「フルモデルチェンジ」を図ったようだ。利用者の声を反映しながら利便性や機能の向上を図り、より快適な移動や生活を実現していく構えだ。

my routeは現在、九州や神奈川県など11県でサービスを展開している。鉄道会社などが主体となっているMaaSと異なり、自社の営業エリアに縛られることなく各地の協力事業者とMaaSを構築できるのがウリだ。

国内MaaSの中ではおそらく利用者数はトップクラスで、それ故さまざまな意見が寄せられる。厳しい声も決して少なくないが、こうした意見をもとに改善を繰り返してこそサービスの質が向上する。

基本的な仕組みやシステムはほぼ整った感を受けるMaaSだが、進化の余地はまだまだ残されているはずだ。既成概念に捉われることなくさらなる改良に期待したい。

■自動運転部門のWoven、ついに社名を「トヨタ」へ!(2023年2月20日付)

社長交代に伴う組織体制の変革の一環として、トヨタは「ウーブン・プラネット・ホールディングス」の社名を「ウーブン・バイ・トヨタ」に変更し、取り組みを強化していくことを発表した。

自動運転をはじめとした次世代モビリティに向け、最先端技術の開発や実証都市Woven Cityに関する事業を担っているウーブンに改めて「トヨタ」の名を冠するのは、トヨタ色を前面に出して事業展開を進めていく意志の表れではないだろうか――といった主旨だ。

MaaSアプリ「my route」やサブスクサービス「KINTO」など、多角的にモビリティサービス分野の開拓を続けるトヨタ。継承と進化を掲げる新体制は、どのように新領域の事業展開を推し進めていくのか、要注目だ。

■【まとめ】新年度に向けた動きが活発化

新体制に移行するトヨタをはじめ、BOLDLYや春日井市における取り組みなど、レベル4移動サービスを見据えた動きも活発化しているようだ。

世界全体でも自動運転の波はいっそう大きくなり、株式市場の回復とともにスタートアップらの動きが加速する可能性が高い。国内でもTURINGやT2、エクセイドといった新興勢が続々と台頭し始めており、さらなる躍進に期待が寄せられるところだ。

新年度に向けた最後の月となる2023年3月はどのような動きが出てくるのか、引き続き注目していきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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