愛知県春日井市石尾台地区において、日本で初めての自動運転での「自家用有償旅客運送」サービスが2023年2月1日から始まった。このサービスを提供するのは、特定非営利活動法人石尾台おでかけサービス協議会、愛知県春日井市、名古屋大学、エクセイド、KDDIだ。
いわゆる「白ナンバー」での自動運転送迎サービス、日本で広がる素地はあるのか。
■「自家用有償旅客運送」って?
自家用有償旅客運送とは、バスやタクシーで十分に移動サービスが提供できない過疎地域などにおいて、住民が日常生活で移動手段を確保できるよう、国土交通大臣の登録を受けた市町村やNPOなどが自家用車を使い有償運送する仕組みを指す。
本来、自家用車を使った有償の旅客運送は認められていないが、この仕組みを活用することで、白ナンバーの自家用車でも有償の旅客運送が可能になる。
■会員は1回100円、非会員300円
春日井市では2021年6〜8月に、自宅付近から目的地まで移動可能なオンデマンド型自動運転送迎サービスの実証実験を実施済みだ。2022年9月には、石尾台地区の住民による石尾台おでかけサービス協議会が設立された。
今回始まったサービスは、会員は1回100円、非会員は300円で利用できる。あらかじめ決まっている128カ所の停留所だけでなく、運行ルートの範囲内であれば乗客が指定する場所での乗降も可能だという。なお自動運転ができない区間は、手動運転での対応となるようだ。使用車両は、ヤマハ発動機製の電動ランドカーをベースに名古屋大学が開発した「ゆっくりカート」だ。
石尾台おでかけサービス協議会がドライバー・電話受付係の提供などの送迎サービスの運行を、春日井市が関係者間の調整や車両・車庫の提供、名古屋大学が車両の自動運転化の開発や関係者間の調整、エクセイドが車両・自動運転システムの提供、KDDIが運行管理システムの開発や提供と運行管理システムの運用方法を提供する。
■日本では普及の素地が大いに
このサービスは運行負担も少なく地域住民でも利用できるため、地区内に坂が多かったり、高齢化率が4割以上と高い春日井市石尾台地区のように、免許返納後の日常生活における移動で困る人が増えたりするであろう自治体での横展開が期待できる。
そう考えれば、高齢化が進む日本においては、高齢者の足となる白ナンバーの自家用車での自動運転送迎サービスが広がる素地が大いにありそうだ。
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