トヨタ自動車が自動運転技術で「製品が自ら動く生産ライン」の実現を目指していることが、2023年12月5日までに分かった。同社の求人情報などから判明した。
求人要項には「自動運転技術で製品が自ら動く生産ラインの実現を目指し、クルマと設備両方の開発を行う職場です」との記載があり、つまり、製造される車両が自動運転で自ら動くことで、生産の効率を高める狙いがあるとみられる。
■「自動運転技術で製品が自ら動く生産ライン」との記載
トヨタはモビリティの新価値創出・生産性向上のため、自動運転技術で製品が自ら動く生産ラインの実現を目指している。今回求人を出しているポジションでは、クルマと設備両方の開発を行う職場にて、自動運転技術を活用した次世代生産ラインや車両の開発を担当する。
具体的には、クルマの価値を最大化させる新規サービス・生産システム企画や、その企画の実現に必要となるAI(人工知能)・情報システム・通信・交通管制・画像処理・車両制御・ データサイエンスなどの要素技術開発を行う。また、実現に向けた要件定義や制御仕様・システム仕様の作成、実装なども担当する。
そのほか、実証試験の計画と実行、量産化・アップデートやプロジェクトマネジメント、クルマの自律検査技術開発も行うようだ。
▼自動運転技術を活用した次世代生産ラインと車両開発(スタッフ~マネージャー)
https://toyota-career.snar.jp/jobboard/detail.aspx?id=udDT3T5Y7wNHn-VxkMirWA
■未来を変える情熱などを持つ人材を募集
応募には、生産設備の開発・導入経験や情報システムの構築経験、自動運転・先進安全・運転支援システムの開発経験、車載電子システム・ECU・センサー・電源・ネットワークの開発経験、コンピュータサイエンスの基礎知識を有し実際の課題を解決するためのソフトウェア実装経験の、いずれかを有していることが必須となる。
さらに「未来を変える情熱・自律性・協調性をお持ちの方」との記載がある。この業務のミッションが、「車両の企画・開発・設計から生産準備・量産工程をスルーでみて、クルマと製造工程を一体化させ生産・品質保証・物流を変革すること」であることからも、いかに革新的なプロジェクトに取り組むかということが伝わってくる。
■元町工場ですでに導入済みの技術も
トヨタは2023年9月に「クルマづくりの未来を変えていこう」をテーマとした説明会「トヨタモノづくりワークショップ」を開催した。その中で「未来を支えるモノづくり技術」として、元町工場での次世代BEV(バッテリーEV)実証ラインを紹介している。
同工場で実用化した完成車での自走搬送は、自動運転開発で培ってきた制御技術と工場に設置されたセンサーによる人・車・環境の認識技術を組み合わせて実現したという。この技術を応用し、コンベアのような極低速で安定した走行が可能となった。これを次世代BEVラインに適用することで、ラインレイアウトの柔軟性が大幅に向上し、生産準備のリードタイムと工場投資の大幅削減が可能になる。今後、次世代BEVラインの設備開発に向けて、自走組立ライン開発を進めるとしている。
また求人情報ページによると、これまでの技術開発・導入実績の一部として、インスタグラムで元町工場での取り組みが紹介されている。無人車両が工場内を走行し、停車するまでの動画だ。左ハンドルの車両は自動でハンドルを操作し、工場内をスムーズに移動している。
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そのほか元町工場では、完成車を自動運転で搬送するロボットの運用も2023年9月からスタートしている。
車両搬送ロボット(VLR:Vehicle Logistics Robot)が車両の床下に潜り込みタイヤ4輪を持ち上げ車両を搭載し、目的地まで自律走行するという仕組みだ。これにより、人手不足の解消や業務負担の削減が可能になる。製造現場で自動運転技術を活用することで、正確な運用や事故の防止も期待できそうだ。
■トヨタの自動運転技術の実用化方針に注目
今回の求人要項では「量産化・実用化にこだっており、アイディアを具現化していきます」との記載がある。この職種では、次世代生産ラインの開発という、トヨタの製造現場を支える技術に携わることができそうだ。求人内容とともに、トヨタの自動運転技術の実用化方針にも注目だ。
【参考】関連記事としては「トヨタ、完成車の運搬を自動運転化!ロボットがタイヤを挟んで持ち上げて…」も参照。