トヨタ、完成車の運搬を自動運転化!ロボットがタイヤを挟んで持ち上げて…

運搬作業員の負担軽減&作業効率化に寄与



出典:トヨタ公式YouTube動画

トヨタ自動車の工場で2023年9月から、完成車を自動運転で搬送するロボットの運用がスタートした。

工場では、ドライバーが広大な敷地に並んだ車両を歩いて取りに行き、積載場に停めたキャリアカー(※車両を運搬するためのトラックのこと)に積み込むという作業を繰り返しており、大きな作業負担になっていた。


その負担を軽減するためにこのほど導入されたのが、車両搬送ロボット(VLR:Vehicle Logistics Robot)だ。

■完成車を自動で運ぶ車両搬送ロボット

同社の元町工場では、約4万平方メートル、1,600台の完成車を配置できるヤードがあり、1日160便、約800台が輸送されているという。これまで完成車ヤードでの車両搬送は人海戦術で行っており、慢性的な人手不足の状態であった。完成車を運ぶキャリアカーのドライバーは、炎天下でも雨天でもヤードだけで1日約8キロを歩いており、屋外での長い歩行を伴う作業は身体的な負担が大きいことも課題となっていた。

これを解決するために同工場に導入された車両搬送ロボットは、車両の床下に潜り込みタイヤ4輪を持ち上げ車両を搭載することを可能にしている。ロボットは高精度のGPSで自律走行し、自己位置を認識して目的地までの経路を生成するという仕組みになっている。ホイールベースの長さに合わせた荷台の伸縮や車高に合わせた昇降調整も自動で行うことができるという。

また管制システムが複数台のロボットの動きを一括管理することで、安全を監視しながら最適経路での搬送を可能にしている。さらに人による運搬と異なり、ドアの開け閉めが不要であるため、隙間なく効率的に車両を配列することが可能になり、ヤードの効率的な活用を実現するという画期的なシステムになっている。


自動で運ばれた完成車は、積載場近くの集荷場に整列する。ドライバーは、積載場と集荷場のわずかな間だけを移動するだけになり、作業負担を大幅に減少できる。

出典:トヨタプレスリリース
■完成車の床下に入り込み、持ち上げ、運ぶ!

トヨタの公式YouTubeでは、車両搬送ロボットの作業の様子が紹介されている。完成車の前方から車両搬送ロボットの完成車を搭載する部分が車体の床下に入り込み、タイヤを前後から挟み込み持ち上げる。ロボットは自動で移動し、集荷場に完成車を駐車させる。その後タイヤを挟んでいた部分が格納され、ロボットはまた次の完成車を運ぶために向かっていくという流れだ。

なお動画で紹介されているポイントは、下記の4つとなっている。

  • RTK-GNSSによる自律走行:時速10キロの走行でセンチメートル単位の高精度を実現
  • サイズの異なる車両を搭載可能:車高・ホイールベースに応じて荷台を昇降・伸縮調整
  • 管制システムによる交通制御:ロボット複数台の動きを一括管理、最適経路で運搬
  • 安全機能の多重化設計:安全センサーによる360度監視、経路逸脱判定


■車両搬送ロボが「物流2024年問題」の救世主に

完成車の自動搬送については、三菱重工グループも開発を行っている。国内初の自動バレーパーキングと完成車自動搬送サービスを実現するため、仏企業のスタンレーロボティクスと先進的自動搬送ロボット事業を共同展開することを2021年10月に発表した。

その後、国内の商業施設で初となる自動バレーパーキングの実証実験を2022年6月に行った。スタンレーロボティクスの車両搬送用ロボット「Stan」を用いたものであった。

間近に迫る物流の「2024年問題」の解決を目指し、省人化と効率化を実現する車両搬送ロボットは、今後欠かせないものになりそうだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




関連記事