支持率急降下の岸田首相、切り札は「自動運転メガネ」化

ゴタゴタ続く中でも、地味に施策を推進中



出典:首相官邸

「増税メガネ」という蔑称が定着してしまった岸田文雄首相。やることなすことが批判の対象となり、さらには政務三役の相次ぐ辞任など身内にも足を引っ張られ、内閣としては行き詰まった印象を受ける。

支持率低迷から解散に踏み切ることもできず、一発逆転を狙ったかのような減税政策を打ち出すも国民の支持は得られなかった。







こうなったらもう開き直るしかない。慎重な判断を要する分野にどんどん切り込み、とがった政策を打ち出して「新たなメガネ」を掛けなおすほかない。

そんな岸田首相にお勧めなのが「自動運転メガネ」だ。道路にまつわる交通関連規制はまだまだ厳しく、さらなる規制緩和や法改正などを求める声も少なくない。

首相のこれまでの政策や発言などをピックアップしながら、「自動運転メガネ」の可能性を探ってみよう。

■岸田首相のこれまでの発言
出典:首相官邸

まず、岸田首相がこれまでに公的場面で発言した自動運転関連の言葉を拾っていく。

内閣総理大臣記者会見(2021年11月)

「成長戦略の中で特に力を入れているのがデジタル田園都市国家構想。デジタルの力を取り込み、地方から新しい時代の成長を生み出す。(中略)デジタルを活用する際に障害となる規制改革にも果敢に取り組み、次期通常国会に自動運転による自動配送サービスを可能とするための法案を提出する」

この発言通り、2022年の通常国会で改正道路交通法が審議・可決され、2023年4月に施行されることとなった。

デジタル臨時行政調査会(2021年11月)

「できるところから速やかに制度改革に着手し、インフラなどの保安規制や定期検査の見直し、学修者の習熟度に応じた教育の実現、自動運転実装による配送や高齢者の送迎に向けた制度見直しなど、規制する側、規制される側、国民の皆さんから歓迎される三方良しの制度見直しを実現していく」

第208回国会における施政方針演説(2022年1月)

デジタル田園都市国家構想に関連し、「5G基地局を信号機に併設するなど多様な手法で民間投資を促し、自動運転やダイナミックな交通管制、ドローンなど、未来のサービスを支えるインフラを整備する。デジタルサービスの実装に向け、規制・制度の見直しを進めていく」と発言した。

その上で、単なる規制緩和ではなく、新しいルールを作ることで地域社会に新たなサービスを生み出し、暮らしを豊かにすることを目指す。例えば、運転者なしの自動運転車、低速・小型の自動配送ロボットが公道を走る場合のルールや、ドローン、AIなどの活用を前提とした産業保安のルールを新たに定めることで、安全を確保しながら新サービス展開の道を拓く」としている。

SEMICON Japan 2022(2022年12月)

都内で開催されたSEMICON Japan 2022に出席した総理は、開会式で「AIや量子といった高度な計算システムや、自動走行、次世代ロボットなど、今後グローバルに大きく進化していくデジタル経済を支える最先端の半導体を、日本からも供給していきたい」とあいさつした。

第11回デジタル田園都市国家構想実現会議(2022年12月)

「全都道府県でデジタル実装の姿が実感できるよう、スマート農業、ドローンによる配送、ICTによる見守りなどを組み合わせた『デジ活』中山間地域を150地域で実現する。そして、無人自動運転移動サービスを100カ所以上で実現するなど、全国津々浦々で地域ビジョンのモデルの実現に向け、地方を後押ししていく」とした。

第211回国会における施政方針演説(2023年1月)

地方創生に関連し、「今年4月にはレベル4、完全自動運転を可能にする新たな制度が動き始める。2025年をめどに、全都道府県で自動運転の社会実験の実施を目指す」と意欲を示した。

2025年に50カ所で自動運転サービスの実現を目指す政府目標において、偏ることなく全国どこでも自動運転サービスが実現する社会を前提とした発言だ。

石川県及び福井県訪問などに関する会見(2023年2月)

岸田首相は、福井県永平寺町においてレベル4運行を予定している自動運転車両に試乗し、「地域における高齢化、あるいは過疎化といった社会的な課題をデジタルの力で解決する1つの好事例として、今年レベル4運用を目指す自動運転車両に試乗させていただいた。こうした社会的な課題を乗り越え、地方から日本全体に活力を広げていくデジタル田園都市国家構想、この取り組みを進めていく上でデジタルの力を感じられる貴重な経験となった」と語った。

第12回デジタル田園都市国家構想実現会議(2023年5月)

岸田首相は「西村大臣は関係大臣と連携し、デジタルライフライン全国総合整備実現会議を設置し、ドローンや自動運転などの実装と面的整備を目指すデジタルライフライン全国総合整備計画を令和5年度中に策定してください。令和6年度にはドローン航路や自動運転支援道の設定を開始し、先行地域での実装を実現してください」と指示した。

【参考】デジタルライフライン全国総合整備計画については「自動運転支援道、茨城県日立市の一般道で「先行導入」へ」も参照。

第14回デジタル田園都市国家構想実現会議(2023年8月)

岸田首相は「中谷経済産業副大臣は、デジタルライフライン全国総合整備計画について、新たに先行実施として、河川上空でのドローン航路の設定、一般道における自動運転支援道の設定、高速道路の自動運転車用レーンの東北道への展開などについて、来月をめどに中間取りまとめを行ってください」と指示した。

この後設置されたデジタルライフライン全国総合整備実現会議において、早期着手するアーリーハーベストプロジェクトとして「自動運転支援道」整備に向けた取り組みなどが具体化していくことになる。

【参考】自動運転支援道については「座長はトヨタから!国の「自動運転支援道WG」、構成員を分析」も参照。

中小トラック事業者との車座対話等についての会見(2023年9月)

岸田首相は「2024年問題については本年6月に政策パッケージを取りまとめたところ。これをスピード感を持って実行していかなければならない。荷役作業の自動化・機械化、倉庫の脱炭素化、EVトラックの導入推進、また再配達率の半減に向けたインセンティブの付与、トラックの大型化などによるモーダルシフト、あるいは自動運転の促進、こういったことを緊急的に取り組むべき対策として具体化し、物流革新緊急パッケージ、これを取りまとめたい」と話した。

第212回国会における所信表明演説(2023年10月)

近々の所信表明では、岸田首相は供給力強化の観点から「AI、自動運転、宇宙、中小企業の海外展開などの新しいフロンティアやイノベーションへの取り組み、スタートアップへの支援を強化する」と述べている。

第1回デジタル行財政改革会議(2023年10月)

岸田首相は「斉藤(国土交通)大臣においては、地域交通の担い手不足や移動の足の不足といった社会問題に対応するため、タクシー・バスなどのドライバー確保や、不便の解消に向けた地域の自家用車・ドライバーの活用などの検討を進めるとともに、西村(経済産業)大臣と協力して自動運転やドローンの事業化を加速してください」と発言した。

内閣総理大臣記者会見(2023年11月)

物流・交通のデジタル化に関連し、「デジタル情報配信道等を整備し、自動運転トラックを活用した物流の実証を行う。2024年問題に直面する物流投資も後押ししていく」と発言した。

後述するが、デジタルライフライン全国総合整備実現会議において、アーリーハーベストプロジェクトとして新東名高速道路の一部区間を自動運転車用レーンにする取り組みに2024年度から着手する予定だ。

■岸田内閣における自動運転施策
出典:首相官邸

内閣総理大臣の職務上、自動運転にがっつりと踏み込んだ発言をする機会は少ないものの、物流問題や半導体、デジタル田園都市国家構想など、さまざまな場面で自動運転に言及していることがわかる。

経産省・国交省が主導する「RoAD to the L4」プロジェクトに加え、デジタル庁主導で新たなロードマップの作成やデジタルライフライン全国総合整備計画における自動運転の位置づけなども進められており、前政権から続く流れをしっかりと踏襲した上で取り組みを推進している。

現在、新たに設置したデジタルライフライン全国総合整備実現会議をはじめ、2023年10月に始まったデジタル行財政改革会議の中でも自動運転に焦点が向けられ、無人運行時における責任の所在などに関するルール作りなどが検討課題に挙げられている。

デジタル大臣・デジタル行財政改革担当・デジタル田園都市国家構想担当などへの河野太郎氏の起用・続投人事もぴったりとはまっている印象だ。

実際にトップダウンによって事業が動いているかは不明だが、それは些末な話であり、岸田政権下で事業が推進されている事実は揺るがない。岸田首相に「自動運転メガネ」は意外と似合うのかもしれない。

■【まとめ】岸田首相の言動に要注目

ゴタゴタが続く岸田政権だが、自動運転関連においては着実に事業が進められていることが分かった。デジタルの力で地方創生を図る1つの切り札が自動運転なのだ。「岸田首相×自動運転」の注目度は今のところ低いが、改正法とともに実用化が始まった重要な時期に首相を務めている岸田氏の言動には、しっかりと注目すべきだ。

まずは、2023年度中に取りまとめられる予定の新たなロードマップの中身や、2024年度に本格着手するデジタルライフライン全国総合整備計画のアーリーハーベストプロジェクトの動向などに注目したい。

【参考】関連記事としては「自動運転推進派の政治家・議員・知事一覧(2023年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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