福島県会津若松市で、仮想バス停でデマンドバスに乗降できる実証運行が2023年12月1日からスタートした。
「MyRideどこでもバス」と名付けられた取り組みで、システムの地図上に数多くの仮想バス停をきめ細かく設定することで、利用者はより希望場所に近い場所で乗降ができるようになる。仮想バス停……いわば「透明のバス停」とも言えそうな注目のプロジェクトだ。
実施するのは、会津Samurai MaaSプロジェクト協議会、会津乗合自動車(会津バス)、みちのりホールディングスだ。みちのりホールディングスによると、人口10万人超の自治体の市街地部において、路線バス網をデマンド交通に転換する取り組みは国内初だという。
■実証運行の概要は?
今回の実証運行は、人口減少下の都市において、高度なデマンド交通サービスを導入して利便性向上を図ることにより、利用頻度の維持と向上を目的に行われる。さらに、効率的に運行することにより、ドライバー不足問題の解決にも寄与する。
また、病院・商業施設と連携して敷地内への乗降ポイントを設置し、施設内での案内やアテンドを実施するほか、鉄道と連携した取り組みも検討する。具体的には、乗り継ぎ利用が可能となる予約システムの構築や、駅や車内での案内・利用促進、鉄道とデマンド交通のセット割引乗車券などを計画しているようだ。
さらに会津若松市が採択を受けているデジタル田園都市国家構想プロジェクト「複数分野のデータ連携による共助型スマートシティ推進事業」との連携を図り、他分野の取り組みとのデータ連携や協調のあり方を検討し、さらなる利便性の向上を目指すという。
なおこの事業は、国土交通省による「地域交通共創モデル実証プロジェクト」に採択された「定時定路線バスとデマンド交通・鉄道を統合したまちなか交通サービスの再構築(福島県会津若松)」の一環として、会津バスが実施するものだ。
■バーチャルバス停を300カ所以上設定
「MyRideどこでもバス」では、AI(人工知能)を利用して、利用者からのリクエストに合わせて乗降ポイント間のバスの運行経路とダイヤを最適化して運行する。
既存のバス停190カ所のほか、「バーチャルバス停(VBS)」と呼ばれる仮想バス停308カ所の合計498カ所の乗降ポイントを設定し、まちなかにおける日中時間帯の移動の利便性向上を図る。既存バス停よりも希望場所に近い場所で乗降ができ、現行1時間に1本程度の固定ダイヤに比べ、利用したいときにバスを呼び出せる利便性の高い交通サービスとなっている。使用するのは、ハイエースコミューター3台だ。
運行期間は2023年12月1日〜2024年2月29日で、運行するのは会津若松市のまちなかエリア、千石神明線を中心としたエリア内、エリア外のスポットの3つとなっている。利用申し込みは、専用アプリのほか「MyRideどこでもバス呼出専用番号」でも受け付けている。
料金はエリア内の場合大人400円、エリア内〜エリア外スポット間は500円。現金のほか、定期券または回数券での支払いになるが、今後デジタルチケットやキャッシュレス決済の導入を予定しているようだ。
■地方版MaaSの取り組みが活発化
今回の事業に参画している会津Samurai MaaSプロジェクト協議会は、会津地域における「生活」および「観光」の両面での交通課題や地域課題の解決に向けて、MaaSなどの新たなモビリティサービスの実証的取り組みとその本格運用を実現することを目的に、設立された団体だ。
またみちのりホールディングスは、自治体と協業した地方版MaaS導入の実績が豊富だ。これまで青森県での「八戸圏域MaaS」や茨城県での「ひたち圏域MaaSプロジェクト」、岩手県での「北いわてMaaS」などを手掛けてきた。
地方における交通手段の減少という問題は、年々深刻化している。今後もコミュニティバスなどを導入する自治体はさらに増えそうだ。今回の会津若松市での取り組みは、バーチャルバス停やデマンド交通導入により、さらにその一歩先を行くものとなると言える。
みちのりホールディングスは、今回の事業は今後の地方都市の公共交通の在り方について、1つのソリューションを提案していくものとなるとしている。今後の取り組みの進捗に注目だ。
【参考】関連記事としては「MaaSとは?次世代交通モビリティサービスの日本の現状は?(2023年最新版)」も参照。