ダイハツの全車種出荷停止により、同社は自動運転開発どころじゃなくなる可能性が出てきた。世界規模で自動運転開発競争が進む現在、開発の出遅れはこの世界レースからの脱落を意味することになりかねない。
ダイハツに関しては車両の認証試験において、現在生産・開発を行っている全28車種と、すでに生産が終了している18車種で不正が確認された。これを受け、国交省は同年12月21日に大阪府池田市にあるダイハツ本社への立ち入り検査を行った。
ダイハツは、国内外で生産中の全ての車種の出荷を一旦停止することを決定しており、自動車メーカーとして前代未聞の事態となっている。
■ダイハツの自動運転開発方針
全車種出荷停止という事態に陥ったダイハツ。これまで自動運転開発にも取り組んできた。同社の公式サイトでは、「自動運転の取り組みについて」とし、動画が公開されている。
それによると、同社は安全で安心な移動を提供し、地域や社会を豊かにするという目標を掲げ、自動運転の実証走行を行っているという。少子高齢化が社会問題と言われる中、特に坂道の多い丘陵地などの郊外ニュータウンでは住民の高齢化が進み、日々の買い物や通院のための移動が難しいほか、地域交通を担う人材不足といった課題がある。そのため地域を支えるモビリティサービスへの期待が年々高まっている。
ダイハツは、こういった社会問題の解決を目指し、「いつまでも住み続けられるまちづくり」の実現に貢献する「持続可能なモビリティサービス」が必要と考え、自動運転の実証走行などを2018年度から兵庫県神戸市で行っている。この実証では、各種LiDARやカメラ、GPSアンテナを搭載した軽乗用車の「タント」を使用している。
■神戸市の住宅地で実証走行を実施
ダイハツは2023年3月に神戸市の住宅地で、軽自動車をベースとした自動運転車両を用いて、一般道において実際にユーザーの乗車を想定した自動走行技術や安全性等の確認を実施している。
丘陵住宅地特有の坂が多く道幅が狭いという道路環境下での自動運転実証走行は前例が少なく、同社が得意とする軽自動車やコンパクトカーが適していると考えており、技術やノウハウの蓄積を図るというものだ。軽自動車で国内トップシェアを誇るダイハツならではの自動運転開発だと言える。
この実証走行は、有人の乗合送迎サービスはコスト面において実現が難しく、車両を自動運転化することで、ドライバーにかかるコストを削減できないかという発想から行われた。地域コミュニティ向けのモビリティサービスの在り方について検討してきた日本総合研究所(日本総研)の知見を生かし、地域コミュニティという小規模の利用者数でも成り立つ安価な車両予約の仕組みを活用したオンデマンド配車を試行した。
また、実証地区で活動するNPO法人スタッフが試乗することにより、地域に密着したサービス性についても検証する。技術およびサービス両面での実証走行を進めることにより、安全で自由な移動の実現に向けた社会実装を目指すとしている。
さらに、日本総研が自動走行ルート上で起こりうる事故リスクの可視化を、あいおいニッセイ同和損害保険が走行ルートのリスク評価ツールによる走行経路のリスク評価や、ダイハツの自動運転車両を用いた場合のリスク評価の妥当性検証を行うという内容であった。
■ADASの「スマートアシスト」をすでに展開
ちなみにダイハツがすでに車両に実装しているのは、予防安全機能「スマートアシスト」だ。ADAS(安全運転支援システム)に相当する。車両に搭載したステレオカメラが周囲の状況を認識し、ドライバーの運転をサポートする。この機能は、同社が現在販売中の車種の多くに搭載されているという。
具体的な機能としては、衝突警報機能や車線逸脱警報機能などの「衝突回避支援機能」や、先行車発進お知らせ機能や標識認識機能などの「認識支援機能」が備わっている。また、アダプティブクルーズコントロールやレーンキープコントロールを行う「運転負荷軽減機能」と、パノラマモニターなどによる「駐車支援機能」もある。
【参考】関連記事としては「ADASとは?(2023年最新版) 先進運転支援システムの概要」も参照。
■自動運転開発は大幅に停滞?
これまで社会問題の解決を目指し、安全性の高い自動運転技術開発に取り組んできたダイハツが、衝突試験などで不正を行っていたというのは、大変残念なことだ。これにより、自動運転開発も大幅に停滞することが予想される。
ダイハツは今後どのような対策を取り、生まれ変わっていくのだろうか。「軽自動車といえばダイハツ」という人も多く、同社に期待する声も多いだろう。早期の抜本的な改革が望まれる。
【参考】関連記事としては「自動運転、一番進んでるメーカーは?(2023年最新版)」も参照。