中国政府、自動運転バスの車内音声「リアルタイム共有」を義務化

「全国統一型」の国家安全指針を発表



中国政府は2023年12月18日までに、自動運転車の国家安全ガイドラインを発表した。中国ではこれまで各地方当局に自動運転に関する規制が委ねられていたが、今回発表したガイドラインは全国統一型のガイドラインとなる。


ガイドラインの対象となるのは、自動運転バス自動運転タクシーなどの公共交通、物流用途の自動運転車などだ。

詳しくは後述するが、中国にしては走行に関する規制が強めな印象である上、自動運転バスなどの走行中は360度の車外映像や車内音声などをリアルタイムで当局に送信することを義務化する内容となっている。

■意外と規制が強め

中国に関してはこれまで、自動運転車の実証実験をしやすくすることで、他国よりも実用化や技術レベルの向上をスピードアップさせようとしている印象があった。しかし、意外にも企業が自由奔放に自動運転車を走行させられるようなガイドラインにはなっていない。

例えば、自動運転のバスなどに関しては、物理的に閉鎖もしくは比較的閉鎖された空間か、または走行環境が複雑ではない道路における固定路線のみで許可される、といった趣旨の内容となっている。


物流用途の自動運転車に関しては、安全管理がしやすい都市道路における「ポイント・トゥ・ポイント」、つまりはあらかじめ決められた2拠点間での走行しか認められないようだ。また、危険物の輸送は自動運転車ではできないことが明記された。

■運行状況データのリアルタイム送信義務

ガイドラインでは、自動運転車の運行状況データをリアルタイムで運行事業者と管理当局に送信しなければならない、と明記されている。報道によれば、送信する必要がある運行状況データは「360度の車外映像」「車内音声」「遠隔操作指示」などとされている。

また、衝突事故が発生した場合は、直前90秒間の情報を記録・保存する必要もあるようだ。


■中国における実用化の状況を注視

日本と同様、中国でも特区制度などを活用し、自動運転車に関する規制を緩和して運行できるエリアが存在する。そういう観点では、今回のガイドラインで縛られずに実用化を試せるケースも出てくると思われる。

引き続き、中国における自動運転の実用化の状況に注目したい。

【参考】関連記事としては「中国の自動運転タクシー事情(2023年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




関連記事