空飛ぶクルマ最大手のSkyDrive、赤字額が40億円突破 第5期決算

大型プレオーダー契約は続々獲得



出典:官報(※クリックorタップすると拡大できます)

空飛ぶクルマ開発で国内最大手の株式会社SkyDrive(本社:愛知県豊田市/代表取締役CEO:福澤知浩)の第5期決算公告(2023年6月現在)が、このほど官報に掲載された。

第5期の当期純損失は、前期から赤字額を131%増やし40億4,004万円であった。これまでの純損益の推移は、以下の通りとなっている。赤字は膨らんでいるものの、大型プレオーダー契約を続々獲得しており、今後が大いに期待されているベンチャー企業だ。


<純損益の推移>
・第1期:▲2億3,368万6,000円
・第2期:▲5億3,597万8,000円
・第3期:▲11億9,184万5,000円
・第4期:▲17億4,323万2,000円
・第5期:▲40億4,004万2,000円
※▲はマイナス

■決算概要(2023年6月30日現在)
賃借対照表の要旨(単位:千円)

▼資産の部
流動資産 7,848,611
固定資産 367,462
資産合計 8,216,073
▼負債及び純資産の部
流動負債 632,645
固定負債 349,533
株主資本 7,233,475
資本金 100,000
資本剰余金 11,173,517
資本準備金 7,548,135
その他資本剰余金 3,625,382
利益剰余金 △4,040,042
その他利益剰余金 △4,040,042
(うち当期純損失)(4,040,042)
新株予約権 420
負債・純資産合計 8,216,073

■日本を代表する空飛ぶクルマ開発企業
出典:SkyDriveプレスリリース

SkyDriveは、「100年に一度のモビリティ革命を牽引する」のミッションのもと、有志団体CARTIVATOR(現Dream-On Management)から派生する形で2018年7月に設立された。2019年には、日本で初めて空飛ぶクルマの有人飛行を成功させた。

同社は空飛ぶクルマ「SKYDRIVE」のほか、物流ドローン「SkyLift」の開発を行っている。またSkyLiftを用いて、運用に関わる各種業務をSkyDriveがワンストップで実施し、顧客の現場での荷物運搬作業などを完工するサービスである「SkyLift Plus」の提供も行っている。


愛知県豊田市に開発センターとテストフィールドを持つ。また2023年11には、設計部門を中心とした開発拠点を愛知県西春日井郡の県営名古屋空港内に移転した。その理由として、開発に携わるメンバーが400人を超え、オフィス拡張が必要になったことと、愛知県が募集した同空港旅客ターミナルビルの利活用事業に応募し、採択されたことが挙げられている。

■米国市場への参入も

SkyDriveは、2025年に開催される大阪・関西万博時に大阪ベイエリアでのエアタクシーサービスの実現を目指している。2023年2月に、同万博の「未来社会ショーケース事業出展」の「スマートモビリティ万博」における空飛ぶクルマの運航事業者に選定されたことを発表した。

同年6月には、空飛ぶクルマの商用機「SkyDrive式SD-05型」を現名称の「SKYDRIVE」に変更し、仕様変更なども行った。最大搭乗人数は2名から3名へ、航続距離も5〜10キロから約15キロへとバージョンアップしている。

また海外進出にも積極的で、米国市場への参入計画と、サウスカロライナ州に本拠点を置いたことを2023年1月に発表している。その後、同州における空飛ぶクルマ導入の実現に向け、州政府や州内の主要空港、運航会社などと協力していくことを発表した。


さらに2023年3月には、カナダのVPorts and Air Traffic Managementと業務提携し、UAE(アラブ首長国連邦)のドバイでのエアモビリティ市場に参入することを発表している。

【参考】関連記事としては「空飛ぶクルマ企業SkyDrive、米国参入!2026年運航開始へ」も参照。

■ベトナムや韓国の企業と大型契約続々

SKYDRIVEのプレオーダー契約も順調だ。これまでベトナムのディベロッパーであるパシフィックグループと最大100機、ベトナムのCTグループの子会社と最大100機のプレオーダーに合意した。また韓国の航空機リース会社Solyuとも最大50機のプレオーダーに合意するなど、続々と大型契約を結んでいる。

国内では、トータルエンジニアリング企業である大豊産業や一般社団法人MASCとプレオーダー契約を締結。個人向けにも予約販売を開始しており、個人向け第一号機として、実業家の千葉功太郎氏が予約購入している。

■年間100機の製造を目指す

SkyDriveは、空飛ぶクルマの製造のための子会社を2023年9月に設立した。この製造子会社では、スズキの協力により、スズキグループの工場を活用して最大年間100機の空飛ぶクルマの製造が可能になるという。2024年春頃の製造開始を目指すとしている。

大阪・関西万博の開催まで残り約1年半となった2023年11月には、関西電力と空飛ぶクルマの充電設備の共同開発をすることを発表した。この充電設備は、2023年度中に飛行試験場に設置する予定で、その後、同万博での運航に向け夢洲の離着陸ポートに設置する計画のようだ。

国内外の多くの企業と提携し、着々と空飛ぶクルマ開発を進めているSkyDrive。同社の空飛ぶクルマがお披露目される大阪・関西万博まで、事業動向から目が離せない。

【参考】関連記事としては「17億円損失は挑戦の証?空飛ぶクルマ企業SkyDriveの最新決算」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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