関西電力、空飛ぶクルマ向け充電事業に参入か SkyDriveの試験場に設備導入

大阪・関西万博での使用に向け実証



関西電力株式会社(本社:大阪府大阪市/取締役代表執行役社長:森望)が、空飛ぶクルマの充電事業への参入を視野に入れていることが、このほど明らかになった。


空飛ぶクルマの充電インフラ事業への参入を見据え、関西電力が開発を進める充電設備を空飛ぶクルマ開発企業SkyDriveの飛行試験場へ納入し、大阪・関西万博での使用に向け実証を進めていくことをこのほど発表した。

空飛ぶクルマについては、機体開発はもちろん、離発着場「バーティポート」などインフラ事業に取り組む企業も増えてきており、新たなビジネスチャンスと認識されつつある。

■充電設備をSkyDriveと共同開発

関西電力とSkyDriveは、2022年9月に資本業務提携を締結し、空飛ぶクルマ向けの最適な充電システムの開発やエネルギーマネジメントについて共同で研究開発を行ってきた。

共同開発した充電設備は高電圧・大電流で超急速充電が可能なため、待機時間が短縮でき、効率的で収益性の高い運航が可能になる。さらに将来的にグローバル市場での運航を見据えた汎用性も兼ね備えたものだという。


この充電設備は、2023年度中にSkyDriveの飛行試験場に設置する予定だ。その後、大阪・関西万博での運航に向け、夢洲の離着陸ポートに設置して運用していく予定となっている。

出典:SkyDriveプレスリリース
■充電設備の主な4つの特徴

関西電力の充電設備には、主に4つの特徴がある。

1つ目は、SkyDriveが開発する「SKYDRIVE」をはじめ、空飛ぶクルマに必要な高電圧・大電流での超急速充電を実現する安全性仕様・設計になっていることだ。2つ目は、バッテリー冷却装置を使用することで、空飛ぶクルマの地上での待機時間を短縮し、ポート運営や運航を高収益化させることができるという点だ。

3つ目はSkyDrive以外の空飛ぶクルマメーカーにも適応できるような汎用的な仕様・設計になっていること、4つ目はエネルギーマネジメントシステムと接続し、再生可能エネルギーを電源として充電することで、カーボンニュートラルな空飛ぶクルマの運航を実現可能なことだ。


なおカーボンニュートラルな空飛ぶクルマの運航には、充電設備のほかに発電設備や蓄電池などの追加設備が必要となる場合があるという。

■盛んになる空飛ぶクルマの周辺ビジネス

空飛ぶクルマには、離発着場となるバーティポートの設置も不可欠だ。英インフラ企業のUrban Air Portは、世界初のバーティポート「Air-One」を2022年5月に開設した。

日本では2022年5月に、駐車場最大手のパーク24、あいおいニッセイ同和損害保険、総合商社の兼松、離着陸インフラの整備・運用を手がける英Skyportsが、空飛ぶクルマのインフラ設備の開発に向け業務提携した。バーティポートはパーク24が管理している駐車場の中から適した場所を特定するため、関西エリアを中心に事業性評価を含む行動調査を実施する予定としていた。

また同年6月には、ドローン関連技術を開発する日本企業のブルーイノベーションがバーティポートの早期実用化に向け、Urban Air Portと業務提携したことを発表している。バーティポートに関しては英国が先行しており、英企業と日本企業がタッグを組む例が目立ち始めている。

■充電設備についての先行受付もスタート

関西電力は、ポート事業者や運航事業者、リース事業者、個人のユーザーなどを対象に、今回の充電設備の導入についての先行受付を2023年11月7日から開始したことも発表している。今後は、先行で受注した分の空飛ぶクルマの充電設備の納入および実利用開始を目指すという。

日本の空飛ぶクルマ開発を代表する企業とも言えるSkyDriveとのタッグで、エアモビリティ充電分野での関西電力の存在感は増していきそうだ。

【参考】関連記事としては「大手参入相次ぐ!空飛ぶクルマ市場本格化、関電もSOMPOも」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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