
空の移動革命に向け、東京都が本腰を入れている。2030年の市街地での展開を視野に、実装プロジェクト1期の採択事業者を発表した。3カ年に及ぶ1期ではプレ実証まで推進し、5年後の2030年に一般市街地での実装を目指す計画だ。
世界有数の大都市・東京でいよいよ空飛ぶクルマが実用化されるのか、大きな注目が集まるところだ。東京都の取り組みを中心に、空飛ぶクルマ実用化に向けた最新動向に迫る。
記事の目次
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■空飛ぶクルマ実装プロジェクトの概要
日本航空と野村不動産の2陣営を採択
東京都がこのほど発表したのは、「空飛ぶクルマ実装プロジェクト」1期に採択された実施事業者だ。2025年から2027年を期間とし、東京都と連携を図りながら机上検討や実証飛行、プレ社会実装の推進を官民共同で進めていく。
具体的には、離着陸場や拠点の確保・整備、管制・通信システムの調整といった運航環境の整備や、運航支援、及び評価・検証を実施し、事業完了後に速やかに事業展開可能な状態を構築することを目指す。
▼「空飛ぶクルマ実装プロジェクト」1期の実施事業者の決定|東京都
https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2025/10/2025102328
採択事業者は、①日本航空株式会社を代表事業者とするコンソーシアム②野村不動産株式会社を代表事業者とするコンソーシアム――の2事業者だ。
①は日本航空、Soracle、住友商事、日本電気、日本空港ビルディング、大成建設、日本空港コンサルタンツ、オリックス、京王電鉄で構成される。使用する機体はArcher Aviationの「Midnight」を予定している。
「準備・調整・計画・検討」「実証飛行」「プレ社会実装の推進」期間と位置づけ、東京都との連携のもと臨海部エリア・河川上エリア(空港へのアクセスを想定)での飛行を目指すとしている。
Soracleは日本航空と住友商事がeVTOL実用化を目的に設立した合弁で、同社とArcher Aviationは日本におけるエアタクシー事業開始に向け2024年11月にパートナーシップを交わしている。
Midnightは大阪・関西万博で展示されたArcher Aviationの主力モデルだ。Soracleとともに大阪府でのエアタクシー事業も計画している。

②は、野村不動産、ANAホールディングス、SkyDrive、東日本旅客鉄道、エアロトヨタ(旧朝日航洋)、西武ホールディングス、日建設計で構成される。使用機体は、Joby Aviationの「Joby S4」とSkyDriveの「SKYDRIVE(SkyDrive式 SD-05型)」を予定している。
Joby AviationとSkyDriveそれぞれの機体特性を生かした複数のユースケースでの実装を目指し、離着陸場候補地の設置可能性の検討、それを踏まえた整備、モックアップ展示・ポートの公開イベントなどを通じた社会受容性の向上を図り、2028年度以降の離着陸場候補地の選定などを進めていく計画としている。SkyDriveは、2026年に実証飛行、2027年にプレ社会実装を実現し、早ければ2028年にも市街地での実装を目指す方針のようだ。


両モデルとも、大阪・関西万博でデモフライトを実施している。Joby AviationはANAと提携しており、日本におけるエアタクシーサービス提供に向け合弁設立の検討も開始している。将来的100機以上を導入し、首都圏をはじめとした日本各地での展開を目指すという。
SusHi Techでは丸紅×LIFT AIRCRAFTがデモフライト
東京都ではこのほか、2024年開催の「SusHi Tech Tokyo 2024」で、丸紅がパートナーシップを結ぶ米LIFT AIRCRAFTの一人乗り電動垂直離着陸機「HEXA」がデモフライトを実施している。同社によると、都内で空飛ぶクルマが飛行するのはこれが初めてという。
丸紅陣営が今回の公募に応募したかどうかは不明だが、都内における商用化を見据えていることは間違いない。Archer Aviation、Joby Aviation、SkyDrive、そしてLIFT AIRCRAFTが今のところ東京における空飛ぶクルマ実用化の有力候補と言えるだろう。
■東京都の空飛ぶクルマ関連の取り組み
空の移動革命実現に向けた東京都官民協議会を設置
東京都は、2024年策定の「未来の東京」戦略 version up 2024において、東京のプレゼンス向上のため次世代モビリティの社会実装を加速することとし、自動運転の導入や空飛ぶクルマの社会実装を推進していく方針を掲げた。
この中で、空飛ぶクルマについては2030年代の市街地での実装に向け、機体認証や空域・運航基準といった国の動向を踏まえ、社会受容性向上や技術実装支援などを推進するとともに、運航事業者らと官民ラウンドテーブルを設置し、離着陸場整備に向けた検討を加速していくことなどを盛り込んだ。
東京ベイeSGプロジェクトや社会実装プロジェクトなどの成果を踏まえ、2025年度以降に拠点飛行による活用事例創出プロジェクトを展開し、複数ルートでの都内飛行を実現するとした。
これを受け、都は同年「空の移動革命実現に向けた東京都官民協議会」を設置した。さまざまなステークホルダーと連携し、都内の離着陸場整備や空飛ぶクルマの活用事例創出に向け、具体的かつ実践的な協議・活動の核となる場だ。
構成員には、ANAホールディングスや日本交通、朝日航洋、Joby Aviation、丸紅、SkyDrive、兼松、三菱地所、野村不動産、日本電気、NTTコミュニケーションズが名を連ねている。
協議会では、東京都における空飛ぶクルマのユースケースや社会実装に向けた課題、課題解決に向けた取り組みなどについて議論を進め、将来的なビジョンを示したうえで具体的な実装ステップを設定し、飛行可能な経路から戦略的な事業展開を図る必要性や、空飛ぶクルマの利活用に向け、既存プロジェクトの成果も踏まえつつ官民が連携して社会受容性の向上や拠点飛行などの利活用、環境整備を同時かつ総合的に検証する必要性があるとした。


2030年に市街地上空での運航目指す
これを踏まえ、ロードマップの精緻化と商用運航に向けた実装プロジェクトの構築を進め、2025年3月に「東京都 空飛ぶクルマ実装プロジェクト Version1」を発表した。
空飛ぶクルマの利活用の実現には、導入フェーズごとに社会受容性と環境整備の課題が存在し、課題の多くはフェーズ1導入初期までに対応する必要があり、国や自治体の他、運航・離着陸場・通信事業者などの多様なプレイヤーの連携のもと、早期に対策を開始することが重要としている。

なお、フェーズ0は機体の開発や型式証明、2025年度以降のフェーズ1は商業運航開始・低密度運航を実現する段階で、既存空港・場外離着陸場活用や都市計画との整合、航空運送事業許可、バーティーポート設計・許可、空域管理などへの対応が挙げられている。
フェーズ2は中・高密度運航を実現する段階で、ビル屋上や大規模バーティーポート、航空運送事業許可、高度な空域管理などに対応していく。フェーズ3は高密度運航を実現する段階で、自律飛行の実現を目指す。
2020年代後半は立上期とし、限られた頻度での商用運航の実現を目指す。デモフライトから開始して社会受容性の高まりを踏まえて低頻度の商用運航へ移行する段階に位置付けている。バーティーポートを臨海部や河川付近などを中心としたエリアに設置し、主にデモフライトや周遊、二地点間飛行を行う。ターゲットはビジネス客や観光客を中心に据える。
2030年代以降は成長期と成熟期に分け、成長期は社会受容性が高まり、市街地上空での運航が開始されて徐々に運航頻度を高まっていく段階に位置付けている。商用運航を拡大していくフェーズだ。
バーティーポートは空港や既存ヘリポートにも拡大し、区部においてはビル屋上の緊急離着陸場の改装、開発に合わせた新築、駅舎の上部利用、多摩地域ではショッピングセンターの駐車場や平地の活用、島嶼部では既存の空港やヘリポートを活用する。また、近隣県にもネットワークを形成していく。
二地点間飛行や周遊は、徐々に市街地上空への拡大を図っていく。利用者はビジネス客や観光客から徐々に一般にも浸透し、医療・緊急搬送や災害時などでの活用も検討する。
その後の成熟期は、民間主体での運航やバーティーポート整備が進み、空飛ぶクルマが交通手段として普及するフェーズを指す。

都内全域にバーティーポートが多数存在し、近隣県にも多数のネットワークが築かれる。二地点間飛行や周遊においては、明確な運航ルートが形成される。
ロードマップの緻密化は、立上期から成長期に向けて行う。2025年度から2029年度まで空飛ぶクルマ実装プロジェクトを実施し、前半のⅠ期は官民共同事業として、飛行可能ルートの選定やその他ルートの環境整備に向けた準備、災害時などにおける利活用の検証、運航管理(管制・気象・通信等)・運航認可に関する検討・調整、場外離着陸場・既存施設の活用やバーティーポートなどの支援スキーム検討、バーティーポート・拠点(格納庫、充電設備含む)の調査・設計・整備の検討、機体の安全性や静粛性、魅力への訴求地域の理解獲得、認知度向上、飛行見学などを実施する。
後半のⅡ期は都の支援のもと、低頻度の拠点間運航や運航拡大に向けた運航管理の高度化、バーティーポートにおける支援スキームの構築・運用、拠点間運航における飛行体験などを行っていく。
そして2030年度以降に、高頻度の拠点間運航や災害時などにおける利活用、ネットワークの形成・拡充などを図っていく。
【参考】東京都のこれまでの取り組みについては「東京都、「埋立地」で空飛ぶクルマ実装へ 夏ごろに事業者募集」も参照。
■東京都以外の動向
万博を足掛かりに大阪府が先行するも……
空飛ぶクルマは大阪府も力を入れており、東京都より一足早く2020年に「空の移動革命社会実装大阪ラウンドテーブル」を設置している。大阪・関西万博という明快なマイルストーンがあったため、勢いをつけやすかったものと思われる。
2022年に策定した「空の移動革命社会実装に向けた大阪版ロードマップ/アクションプラン」で発表されたロードマップでは、2025 年頃を立ち上げ期とし、万博を当面の共通目標に据えパイロット搭乗による定期路線の商業運航を実現し、多くの人が空飛ぶクルマを身近に体験し、世界へ発信することを目指すとしている。
2030 年頃は拡大期と位置づけ、自動・自律による無人飛行やオンデマンド運航へ都心部も含めて移行し、日常における利用拡大とともにサービスを支える関連ビジネスやイノベーションが進展することを目指すとしている。
2035 年頃は成熟期で、機体の大型化・多様化・量産化、そしてサービスの広域化により、日常的な移動での利用が浸透し、府民生活の質の向上、大阪の産業経済の発展につなげていくことを目指す。
東京都の計画より一歩進んでいる印象だ。大阪府は2025年ごろから商用運航を開始し、2030年頃には無人飛行への移行も視野に収めた計画となっている。
ただ、大阪・関西万博では商用運航を実現できず、一部事業者によるデモフライトが関の山だった。現時点で当初予定から遅れが発生しているのは事実であり、ロードマップの修正が求められるところだ。
【参考】関連記事「万博の空飛ぶクルマ、全陣営が「デモ飛行」すら断念か」も参照。
大分や香川なども構想
東京都に追い付かれる可能性も考えられるが、暫定含め大阪港や尼崎フェニックスなどにバーティーポートが設置されたほか、アフター万博に向け、SkyDriveとOsaka Metroが「新大阪・梅田」「森之宮」「天王寺・阿倍野」「ベイエリア」の4つのエリアを結んだ「大阪ダイヤモンドルート構想」を発表するなど、ルート選定も進んでいる。
今後、本格商用化をめぐり、東京都 VS. 大阪府の競争が激化していくことも考えられそうだ。このほか、大分県とSkyDriveが空飛ぶクルマの活用に向け2025年2月に包括連携協定を締結したほか、香川県も高松空港などを起点とした遊覧や観光地アクセスルートなどを2020年代後半に実現する構想を描いている。
愛媛県も空の移動革命実現に向け、2027年以降のサービス開始を目指す方針だ。石川県加賀市は2025年6月、米Wisk AeroとJALエンジニアリングと日本における無操縦者航空機の社会実装と関連法制度確立に向けた実証飛行に関する基本合意書を締結した。
自動運転同様、当初計画より遅れは生じがちだが、着実に社会実装に向けた芽は育っているようだ。
【参考】関連記事「空飛ぶクルマとは?英語で何という?実現はいつになる?」も参照。
■【まとめ】サポート体制や社会受容性が競争を左右する?
空飛ぶクルマの商用化に向け、東京都と大阪府の競争が激化することはほぼ間違いない。ただ、開発・運航プレイヤーは限られているため重複する部分も多い。そう考えると、競争を左右するのは自治体をはじめとしたサポート体制や社会受容性となる。
どちらが先に機運を高め、環境を整備できるか。他県、他市の取り組み含め要注目だ。
【参考】関連記事としては「万博の空飛ぶクルマ、「ヘリじゃんww」と炎上」も参照。












